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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの子はスマホにむちゅう?でも、本当は……

作者: 桜餅ケーキ

他のサイトにも投稿しているヤツ


 平日のファミレス。




 お昼が過ぎ、人がまばらになった店内。




 端っこのテーブル席に座る、二人の高校生――私とナズナ。




 私達は学校から抜け出し、ドリンクバーとフライドポテトだけでかれこれ一時間は粘っていた。




 時折、店員が私達の事を見てくるのだが……恐らく制服のせいだ。私とナズナは私服に着替えもせずにガッツリ校章入りのブレザーを着ている。




 少しお節介な人が現れたら注意されてしまう。




 学生は学校で勉強していなさい、って感じに。




「はぁ~~勉強したくないな~~面倒だな~~」




 私はため息と共にテーブルに突っ伏した。




 心も体もドロドロのグニャグニャで、一歩も動きたくない。




 疲れた心に、つまらない授業は毒でしかない。




「……うん、私も勉強は嫌いだよ……でも、勉強しなきゃ大人になれないよ?」




 スマホから視線をずらそうとすらしないまま、ナズナはそう言った。




 人差し指で画面をタップしてはシュバッ、とスクロールさせている。




「……髪色金髪ちゃんには言われたくないんだけど」




 頭のてっぺんから下まで明るい金髪の髪が広がっている。




 そんな頭で学校に登校しているような人物に言われたくない。




 だが、不思議なことに先生達にとっては私が不良学生でナズナは違うらしい。まぁ、こうやってさぼりに誘ったりしているのが、私だとバレているせいかもしれないけど。




 ナズナの視線は相変わらずスマホの画面に釘付け。




 私のことなんて見ていない。




「……」


 


 そういえば――ナズナは何で髪を染めたんだろう?






 ナズナと出会ったのは小学生の時。




 結構な付き合いになるが……私はまだ、ナズナの事をよく知らない。




 知っていることがあるとすれば、とても美人な事と成績が物凄く良いくらい。




「ナズナって……変わってるよね」




「そう、かな?」




 疑問を浮かべつつ、視線はやはりスマホを見ている。




 スマホが気になって手放せないのはわかるけど、人と話しているときはやめてほしい。




 なんだか、こう、適当にあしらわれているみたいで嫌な気持ちになる。




 私は相づちマシンとおしゃべりしたい訳ではないのだ。




「はあ~~」




 ズズズッ




 残り少なくなったメロンソーダをストローで飲み干す。




 氷が溶けきって、ほとんど水の味しかしない。




 いや、水に味はないから、無味?




 そんな、どうでもいい事を考える。




 ふと……ある事を思い出した。




 それはナズナに相談しようとして忘れていた大事かもしれない事。




 いや……そうでもないかも?




 まぁ、せっかくなので話してみよう。




「あのさーナズナって……告白とかされた事ある?」




「……あるけど……全部断ってる」




 おや、意外。




 無視されると思ったので、少しだけびっくり。




「ふ~ん、何で?」




 根掘り葉掘り聞こうという訳じゃないけど、ナズナが話してくれる限りは聞いてみたい。




 お年頃ゆえに、その手の話はワクワクしてしまう。




「……全員……私の見た目しか……見てなかった、から……だから、断った」




 心底嫌そうにナズナは言った。




「ほえ~~そっか」




 同性の私から見てもナズナはとっても可愛い。うん、とても可愛い




 お世辞とかではなく、真面目にアイドルやモデルなんかよりも可愛い見た目をしていると思う。




 あの金髪は似合ってないけど……




 素直に羨ましいし、その容姿に惹かれるのも仕方がないと思う。




「好きじゃなくても、お試しで付き合ってあげたら良かったのに。付き合ってみたら意外と相性いいかもよ?」




 人の内面なんて付き合いが無ければ分からない。




 ある程度の事が分かりあっている仲ならともかく、知らない同士が付き合ってすぐに深い仲になる事はほぼない、と思う。




 容姿に惹かれようが、内面に惹かれようが、一対一の人間として付き合ってみて初めて分かることもあったりなかったり。




 つまりは最初の印象があまり良くなかったとしても。過ごす内に良くなっていくかもしれない。




 ……逆もありえるけど。




「……やだ……絶対、やだ……」




「そ、そっか、ごめん、ごめん」




 思った以上に嫌悪感をあらわにされたので、空気を変えるべく本題に入る。




「あ~それで、なんだけどさ」




「うん、何?」




 あまり深く考えたことは無かったけど、いざ話すとなると緊張する。




 ドキドキ、バクバクだ。




「その……なんていうか……うん……告白、されたんだよね。隣のクラスの山内に……」




 顔が熱くなるのを感じる。




 私に告白してきたのは、比較的仲のいい男子。




 ただ、仲がいいだけで異性として見た事は一度もない。




 遊んだ事はあるが、他の友達も含めたグループでくらいなもので。




 告白された瞬間に沸いた感情は、えっ、こいつ私の事そんな目で見てたの?だったし……




 ……といっても、家に帰ってから冷静に考えると……妙に落ち着かなかった訳で。




 だから、とりあえず一番仲のいいナズナに相談をと思ったわけだ。




 付き合う付き合わないはまだ分からない。




 さっき言ったみたいに、意外と付き合ってみたら悪くない可能性も……ないとは言い切れない訳だし。




「だからさ、その……ナズナの意見も聞いてみたいな~って……あれ?まさかの興味なし?」




 もっと、驚いてくれるものだと思っていたので、無反応なナズナにちょっとショック。




 えっ、そんなつまんない?




 あと、スマホは置いて欲しいかな。本気で。




「…………うん、どうでも、いい。付き合いたいなら……付き合ってみるといいよ」




 想像以上の塩対応に、私の心は結構なダメージをもらう。




 いや、確かに長続きするか分からないし、何よりコレが一生のパートナーになるような事に繋がるとは思えない。けれど、もう少しだけリアクションが欲しかった。




「あ~はい。分かりました。後は、自分で考えます……」




「うん……そうして」




 相談するつもりが、何故かメンタルにダメージを貰っただけで、何も得られなかった。




「……私も……スマホ見よ……」




 ボロボロの心でスマホの電源を入れ、SNSをチェックする。




 結構な頻度で更新されるタイムライン。おさぼり学生の私が言えた物では無いが、この人達はちゃんと仕事や勉強をしているのだろうか?




 そんな余計な事を考えながら、画面をスクロールさせると。




「うわ……この人、めっちゃつぶやいてる」




 それは知らないアカウントのつぶやき。




 画面を動かしても永遠とその人のツイートが流れてくる。




 どうやらひっきりなしに投稿している様子。




 ちなみに私のアカウントはナズナには教えていない。やってないと言っていたので。




 アカウント名は『美少女です』。




 うん、ネタだとしてもやばいな。今度変えよう。




 ちらりとナズナの様子を確認すると、やっぱりスマホに夢中の様子。




 特に話かけてきそうな感じもしないので、ペンペン草という少し変わった名前のアカウントのつぶやきをさかのぼって見てみる。




『好きな子が金髪好きらしいから美容院予約した~」




『今日も知らない人に告白された。コレがあの子だったらオッケーなんだけどなぁ」




『背中からいきなり抱きつかれて、心臓どっか行った……探さなきゃ」




『私の部屋で寝ちゃってる……かわいい!』                            




 画面をスクロール。




 連続で投稿されているつぶやきを表示する。




『好きな子とファミレス……うふふふ』




『かわいい』




『勉強なんかしなくても、私が頑張るよ!』




『告白?はぁ!?』




『無理無理無理無理。えっ?告白?えっ???』


 


『やだよ~~やだやだやだやだーーー!』




『もう駄目だ』




『今日――勝負に出るしかない』


                                     」




 怒涛の勢いで投稿されていたつぶやきはそこで途切れていて……




 投稿された時間から、何故か嫌な予感がして――私は慌ててペンペン草と検索をした。







 ファミレスを出ると、珍しくナズナから家に遊びに来ないかと誘われた。




 私はその誘いに乗り、彼女の家へとテクテク歩く。




 いつもとは違い、ナズナは私の前をスタスタと早足で歩いている。




 私はその様子を見ながら、スマホの電源を入れる。




 最後につぶやかれた『友達なんかじゃ嫌だ』というつぶやきを見た後、すぐに電源を落とす。




 高鳴る鼓動を押さえるように、胸に手を当てる。




 心臓の音はうるさくて、とても早い。




 ナズナに相談した告白の事なんかすっかり忘れ、――彼女の家で伝えられる言葉の返事を考える。




 あまり似合っていない明るい髪色がとても愛おしく見えて、とてもくすぐったい。




 ナズナは家に着くと、私の方を見た。




「先に……入って、いいよ……お茶準備する、から」




「うん、分かった……――待ってる」




 私を見るナズナの顔はいつもより――もっと可愛く見えた。

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