魔女と収集家4
男はシルフィードとの会話を一旦中断するとクフェア達を屋敷の中に招待した。
「先程はsorry。シルフィードとの幸あるconversationに夢中に成りすぎるあまりlady達を持て成しもせず炎天下の中に立たせるとは紳士にあるまじき行い、我輩猛省の至り、恥とはまさにこの事です」
男は恥じていた。
よほどクフェア達を炎天下の中立たせていた事が許せないようだ。
恥じるのは男の性格、プライド、資質から来るものでありクフェア達がその感情にケチをつけるものでもない。
それに会ったばかりの人間。
友人でもなければ親人でもない、人格否定を言う資格もない。
それでも思ういちいち言動、行動共に大袈裟な男だと。
それと目茶苦茶な言葉遣いも統一してくれないかとも思う。
「別にかまわないよおじさん。こうしてお茶迄ご馳走になってるんだし気にしなくていいさ。まぁクフェアが暑さでぶっ倒れていたならボクとしてもただではすまさなかったけどね」
「………」
さも自分も被害者ぜんで有り関係ないと言うシルフィードだがクフェアに関しては話が無駄に長引いたのはシルフィードのせいでも有るのでどの口がと言いたげな半目でシルフィードを見る。
もし今居る場所がクフェアの植物の家なら放り投げ出されているだろう。
「それにしてもこのお菓子本当うまいな~」
半目を向けられている当の本人は呑気に紅茶を飲み出された高級なビスケットをバクバクと次から次に口にはこみ満足そうな顔をしている。
「我輩恥じ至る身では有るもののシルフィードの救済の言葉に甘えさせていただく」
「うん。それでいいさ」
招かれた側なのに屋敷の主人に対し何故か上の態度で接するシルフィード。
クフェアはまた割れ関せずを貫こうかと想いを馳せる。
「クフェアも申し訳なかった」
「……別に」
話の流れにそってクフェアにも謝罪を述べるのは間違ってはいない。
しかし割れ関せずに想いを馳せ意識をそらしていたクフェアにしたら意識外からの唐突な呼び掛け、クフェアは直ぐに返答できず数秒の間をおいて返事をした。
そんな返事の仕方は男にしてみれば何か含みが有るように感じられたのか
「やはり我輩……!!」
グッと後悔全快の表情と共にいいつのろうとしだした。
「いい」
「ですが!」
「いい」
「それでも!」
「いい」
「BUT !」
「いい」
自分は気にしてもないことなのでこれ以上繋がる話もなく終わりであり無駄でしかないのだが尚も食い下がり続ける男。
「いいじゃんおじさん。
クフェアはいいって言ってるんだからこの話しはこれで終わりだよ。
これ以上の謝りはおじさんがクフェアに赦しを求めるものじゃなくておじさんの自己欲を満たす為の傲慢でしかないよ」
二人の有り様を見かねたシルフィードは男に制止の声を掛ける。
「……OK。確かにシルフィードの言う通りです。
我輩もクフェアを困らせたいわけじゃあ有りません」
「うん。それよりさ今思い付いたと言うか思い出したんだけど」
「何ですか?」
「ボクら…………」
シルフィードは今から重大発表をするかのように目を瞑り間を開け緊迫感を醸し出す。
「ゴク……」
男も緊迫感にのまれのどをならす。
クフェアは平然と紅茶を啜る。
「お互いの名前知らなくない」
シルフィードの言葉にクフェアもそういえばと思うなか男の方は
「!!!!」
まるで雷に打たれたかのように白目を向き全身を硬直させる。
ゴホン。
男は咳払いする。
「では僭越ながら我輩からいかせてもらいます。
我輩の名はコレクタル・オール・コレクション。
尊敬・尊厳・尊命たるオール・コレクション家血統の一男児であり現在singleでありす!」
「「?」」
名前はいい、家名もいい、ただ最後に何か余計と言うなの宣言をした男、コレクタル・オール・コレクションに揃って首を傾げる。
二人の子、アルメリアとシルヴァも二人の親の真似をし首を傾げる。
「我輩等は最早身も知らぬ仲ではないでしょう。
お互いにwordsをemotionをteaを交わした仲、なら他人行儀などNOGood。
どうか我輩の事はコレクタルと気軽に御呼びください」
「分かったよ、おじさんの事はコレクタルって呼ぶよ
クフェアもそれでいい?」
「いい」
クフェアには人の呼び名なんて特別な意味を持つもので無い限り個体識別な呼称と何ら変わりはない。
「よし!じゃあ次はボクらだね。
ボクは風を愛し風に愛された魔女シルフィード!
でこのスゴークか~わいい子の名前はシルヴァだよ!
呼び方なんてボクは別に拘りなんて無いからコレクタルが好きなように呼んだらいいよ。
ただ土や火や水みたいに風の名称に関係ない呼称で呼ぶようならただでは済まさないから!」
シルフィードは自分の名前と共にシルヴァの紹介それに自分に関する忠告を交える。
「OKだともシルフィード!君がそれを禁忌にするならば紳士たる我輩が領域を侵す理由は何一つ無いとも!!
どうぞよしなに。
シルフィードと|シルヴァ」
コレクタルは不平不満など一ミリも無い肯定の意志を告げる。
男性相手には分からないが少なくとも女性に対してへの真摯な誓い、決意が伺える。
シルフィードが自己紹介を終えた今次はクフェアの番だ。
「クフェア…」
コレクタルの言葉を借りるなら最早初対面ではないのだが自己を積極的に語りたがらないと言うか必要性を感じないクフェアに自分が変わりに言おうかとシルフィードが伺う。
「いい、自分で言う。
私はクフェア、見ての通りの魔女。
この子はアルメリア、私の子」
クフェアは淡々と必要最低限?になっているのかも怪しいレベルの短言だ。
しかしクフェアにしてみればよくやった方だ。
ただ視界の端でまるで我が子の成長を喜ぶように目尻に涙をのせうんうんと頷くシルフィードにはほんの僅か………少しイラッとくる。
コレクタルの方はと言うと額に汗をし引き攣った顔で身体中を小刻みに振るわせていた。
……何故?
「…いやいやあり得ない…ですが……いやいやないでしょう…しかし……でもそれはそれで」
ぶつぶつと言いながら今度は感情のオンパレードをしだすコレクタルにクフェアとシルフィードは訝しげに見る。
ここで二人とも心配そうではなく訝しげなのはコレクタルが悪人ではないがまともでも無いと言う認識からだろうか。
「コレクタル、どうかした?もともとおかしいのがもっとおかしくなってるよ」
シルフィードは常人が聞かなくても怒られそうな失礼極まりない言い方をする。
やがてコレクタルは何か覚悟を決めたと言うより無理矢理腹に決めたみたいな真剣な顔をした。
「失礼ですが二人のlady。
一つ確認したいのですがよろしいでしょうか」
「うん?別にいいけど………あっ、スリーサイズやクフェアとの愛の証なんてのは駄目だから」
スリーサイズはともかく愛の証なんて存在しないと思うクフェア。
「いやいや我輩ジェントルマンですよ。そんな無作法決まりない質問などNOGOODです」
(ちゃんとしている)
ジェントルマンとコレクタルの一致はともかくとして紳士的では有ると評価するクフェア
「……スリーサイズ……愛の証…」
(最低)
だったがコレクタルの完全に興味ありまくりな呟きが聞こえ評価を最低にし直す。
「で、聞きたいことって何なの?」
「クフェアは|アルメリアを我が子、私の子と表しました。
ではもしかしてシルフィードのシルヴァのかわいい子と言う表現はシルフィードのchildと言った意味だったのでしょうか」
どうやらコレクタルの中ではアルメリアの呼び方は喜愛childに成ったらしい。
「へ?う~ん、コレクタルの言いたいことはよく分かんないけどシルヴァがボクの子と言いたいならそっだよ」
「なるほど!!つまり、つまりですぞ、lady達は………」
今度はコレクタルが先程のシルフィードのように緊迫感の有る間の空けかたをする。
クフェアはこの緊迫感の中思う。
どうでもいいことが来そうと。
「lady達は既婚者だったんですか―――!!」
「「違う」」
コレクタルの絶叫は刹那の速攻で否定された。