魔女と収集家2
この世界には七体の魔獣を超えた魔獣が存在する。
七体は巨大な力、暴虐の死、終焉の忌みを侮蔑し厄災の獣と恐れられている。
元の素体は通常の生物だったそれは魔理により魔獣と堕ちた。
ただそこまでだったら通常の魔獣と何ら変わりはない。
違うとすればそれら七体に個体差は有れど力だけではなく知恵も発達したことだろう。
とはいえ知恵が発達と言えど天才の才覚を得たなどIQが高まった訳ではなく本能の有方が発達したと言う方が正しい。
それら七体の厄災の獣は飢え、乾き、つまり飢餓の本能のままただ獲物を喰らうのではない。
とはいえ補食を行う以上、飢え、乾き、飢餓は存在する。
それら七体はそれを踏まえ自己の血肉、力をより上質にする為に獲物を喰らい続けるのだ。
これは人間がただ有るがままに食事をするのではなく栄養、健康、身体を作ることを考えて食事をするのとよく似ている。
人間が求めるように
より強く
より早く
より頑丈に
それらを追い求め喰らい続ける。
だからこそより強いものを求め喰らいたがる。
厄災の獣は補食する度に進化し続ける。
それが牛や鳥や魚、他の魔獣だけではなく人間や魔女まで際限亡く見境亡く喰らい続けるなら最早それは厄災であるのと変わりない。
一体だけでも災厄なのが全部で七体。
世界が崩壊して200年後の時を経て現れた七体の厄災の獣に生存せし人間や魔女は恐怖の日々を過ごしていた。
そう魔法という奇跡すら行う魔女ですら厄災の獣のあまりの強大さに恐れたのだ。
ただでさえ世界が崩壊し生存数も減ったにも関わらずここでもまた生存数を減らしていく事となった。
勿論挑むものがいなかった訳ではない。
人間、魔女が何人も、個人、集団で挑んだ。
しかし結果としてそれより遥かに時が経った今でも七体全てが現存をしている事を踏まえると哀しき運命を辿ったことは明らかだ。
ただでさえ文明は崩壊し人間と魔女との軋轢が有るなかでの死を与える事が出来ない厄災の獣。
全てが諦めるしかなかった。
そんな時ある一人の魔女の手により伝説と呼ぶに相応しい奇跡が行われた。
その魔女により七体の厄災の獣は各場所に捉えられ決して出ることの出来ない檻に閉じ込められた。
その一つが砂漠の大地にある雷獄の檻である。
雷獄の檻の他は
炎獄の檻
霧獄の檻
氷獄の檻
嵐獄の檻
光獄の檻
影獄の檻
が有り各檻に一体ずついる。
檻は全て厄災の獣を捉えること、外側には出さないことのみを組み込まれている。
つまり厄災の獣以外のものが檻を出入りすることに対しては何も制限はされていない。
とはいえ入ったが最後雷獄の檻のような檻の中の環境により生きて出ることはまず不可能に近い。
そんな生と死を別つ檻だが魔女に増悪を抱くもの等の例外を除き多くのものが檻を造り限定的だが世界を救いし魔女の偉大さを賛美し讃えた。
その魔女だが既にこの世を去っている。
今この世に有る魔女の遺産は死して尚現存し続ける魔法のみ。
檻の魔法の使い手その名は監獄の魔女クローディア。
女としての幸せ、母親としての幸せ、幸福という幸福全てを切り捨てただ己が生きた生涯を全て厄災の獣を捉えることのみを追い求め続け悲願を果たした魔女。