魔女と収集家
アルメリアはクフェアの子ではあるがその有り様はまさに正反対に近い。
知識欲と言うか好奇心旺盛なとこは似たり寄ったりだが普段本を読んだり植物の世話をする以外ほぼ全部植物任せでものぐさに近いクフェアに対しアルメリアは全てが珍しく興味をそそられるのか行動が活発だ。
クフェアもアルメリアの成長の為に暖かく見守って好きにさせている。
放任と言われればそれまでだがいきなり窓から外に出ようとするなど流石に危ない事をしようとしたら制止はしている。
アルメリアも学習力は低い訳ではなくクフェアが制止した事はちゃんと守っている。
とはいえ好奇心が無くなったわけではないが。
シルフィードの子シルヴァの方は親が自由奔放なだけに自由奔放に行動している。
シルフィードもクフェアに迷惑を掛けるような事は流石に制止するがそれ以外は好きなようにさせている。
クフェアはその様子を見ながら容姿だけじゃなく性格まで似なくて良かったのにと思ったりもする。
今までクフェアとシルフィードだけだった家も新たに二人?が増えたことにより一層賑やかに成る。
そんな中でアルメリアとシルヴァについて分かったことがある。
食事だ。
一方は切り株、もう一方は風ではあるが
生命である以上アルメリアもシルヴァも食は欲しているようだ。
ただ卵の時とは違い身体に触れて魔理を流し込めばいいという訳じゃなくアルメリアもシルヴァも経口をよしとした。
ただこれに関してはクフェアとシルフィードの食事の仕方を見て真似しているだけなのかもしれないが。
シルヴァが食事とし欲したのは風だ。
なので空気中に流れる風で十分なのだがシルフィードが自分が出す風はどうなのかとシルヴァに与えてからはシルフィードが出す風を食している。
どうやら一番のお気に入りはシルフィードの魔理が込められた風みたいだ。
シルヴァにとって食事は生命と同じく力を得るための栄養補給と変わらずシルフィードが出す風を吸い込んだ後は何時も以上に元気であり通常時に出す風の威力と比べ遥かに威力が増している。
アルメリアの方は植物の種を好んでいる。
特に普通の植物の種ではなくクフェアが生物を栄養として産み出した種が一番好きらしい。
しかもシルヴァと同じくただの食事とは違い食べたものから力を得ているみたいだ。
テーブルの上に飾っていた淡い赤い花をせがむので種に変え食べさせたら一時だが舌知らずの声で
「ク…フ…ェ…ア」
と言葉を発する事ができた。
これにはクフェアも驚いた。
そう何時もの様に常人には分かりずらい驚き顔で。
そしてアルメリアが発したたどたどしくもハッキリ聞こえた自分の名前に常人には分かりずらいが確かな喜び顔になった。
命の魔女ティアードの卵産の魔法の効力通りにアルメリアもシルヴァもクフェアとシルフィードの力を受け継いでいた。
そんな新しい発見も有る落ち着いた日常を過ごしていた時突如
ゴロゴロ!!!!ゴロゴロ!!!!
ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!
砂漠の大地を震わせるけたたましい轟が鳴り響く。
一回、二回、三回、なんてそんなものじゃなく十回、二十回いやそれ以上だ。
何度も何度も鳴り響く。
「わお~、話には聞いてたけどすごい音だね~」
「そうね」
突如として轟けたたましい音、本来ならアルメリアやシルヴァの様にビク!と身体を震わして驚きを露にする。
しかしクフェアもシルフィードも音がした瞬間窓から外へ視線は移すものの落ち着いている。
二人が視線を移す外に有るのは幾重にも迸る光の閃光。
クフェアとシルフィードは知っていた。
自分達が今まさに進んでいる砂漠の大地の先に何が有るのかをいや、存在しているのかを。
ゴロゴロ!!!!ゴロゴロ!!!!ゴロゴロ!!!!ゴロゴロ!!!!
ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!ビガ!!
その大地に近づく度に轟は大きくなり閃光は増えていく。
それが何なのか認識できるまで近付いた時常人なら目を疑う光景が広がっていた。
雷。
空を覆う果て無き漆黒の雲から漆黒の砂漠の大地を目指し雨のように絶え間なく天から地へと降りしきる雷
と
漆黒の砂漠の大地から空を覆う果て無き漆黒の雲目指し雨のように絶え間なく地から天へと登り行く雷。
そう天と地を循環するように行き来する雷光だった。
「雷が地獄の様に入るもの出ようとするものを閉じ込める監獄の檻、雷獄の檻とはよく言ったもんだね、まさに見たまんまじゃん。
こんなの入ったが最後、無事に出られるかどころかもう終わりって直ぐに諦めるレベルじゃん。
うん。ワクワクしてきた!」
「そうね、でも関係ない。
私はこの先に進む、それだけ。
地獄の様な雷の檻だろうと知ったことではないわ。
そんなものでは私の歩みは止まらない」
常人なら確実な死を見せる光景に震え上がる。
しかしクフェアとシルフィードには一切の恐怖の感情は見えない。
クフェアは割れ関せずに。
シルフィードは好奇心に。
それだけだ。
そんな二人の親の様子に最初はおっかなビックリだったアルメリアとシルヴァも落ち着いたのか平然としていた。
流石は二人の強き魔女の子。
と言いたいがアルメリアもシルヴァもそれぞれの親の膝や肩に乗っかっているとこを見るとやっぱり少し恐怖はあるのかもしれない。
家の外、進行先の雷獄の檻について知っていたクフェアとシルフィード。
だが二人が知っているのはその場所の特殊さだけではなかった。
クフェアもシルフィードも知っていた。
この雷獄の檻が何でできたのかを。
雷獄の檻。
そうこれは檻なのだ。
檻とは野に放つには危険な生物を捉え隔離し外へ出さないためのもの。
ならばこの雷獄の檻の意味することは一つ。
閉じ込めているのだ、外へ出さないために。
雷で創られた檻の中に捉えられた最恐の魔獣の一体を。
雷獄の檻の中それは蠢いていた。
己より遥かに劣る魔獣を蹂躙し補食しながら絶え間なく巡環する乾きと食欲に身を焦がしながらより上質な餌を己を満たす餌を待っていた。
「ギャ―――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!」