魔女と風の魔女4
「シルヴァってその子の名前」
しつこいシルフィードをあしらったクフェアは先程シルフィードが自分の子に対し顕した言葉を訪ねる。
「そうシルヴァ!ボクの可愛いく大切な子さ!」
シルヴァ。
どちらかと言うと男よりな名前。
「シルヴァは男の子」
魔獣は全てではないが交配をし繁殖するものもいる。
つまり性別が存在するということだ。
クフェアとシルフィードの子は命の魔女ティアードが魔法によって産み出した生命。
しかしいくら魔法によって産み出されたとはいえ生命である以上クフェアの子切り株の生命は分からないが人の容姿をしているシルフィードの子シルヴァは性別が有っても可笑しくはない。
「確かにシルヴァって男みたいな名前だけど性別でつけた訳じゃないよ。
ボクの名前に似た感じでこれだ!っていう直感、本能、天啓そんな感じでつけたんだ」
それはどうなんだろうと若干思うクフェアだがシルヴァも嫌そうにはしてなく受け入れているので問題なしと切り替えた。
言葉のニュアンスが分かっていないだけとは決して思わないこととした。
「そもそもシルヴァはサイズ以外寸分違わずボクそつなんだけど産まれた時は風の塊、小さな台風みたいだったんだ。
それがボクの周りをグルグル回ったら姿をボクと同じに変えたんだ。
風の屈折変換、コピーとは違うけど似たようなもので風による光、気質、温度、周りにあるものを全て使い容姿を別のものに見せるんだ。
ボクも出来るけどシルヴァはもっとスゴいんだ!
さっき試してみたんだけどどうやら一度姿を変えたら周りのものなんて関係なく自分の風が記憶して容姿をそのまま固持できるみたい流石はボクの子だけはあるよ、シルヴァスッゴい子!」
シルフィードは自分の肩に座るシルヴァを誇らしげに誉めちぎる。
シルヴァの能力迄聞くことになったが結局シルヴァも切り株の生命と同じく性別不明、有るかどうかも不明ってこと。
膝と肩から降り木のテーブルの上でお互いに接している切り株の生命とシルヴァ。
「で、どんなのにするの?」
「何が」
「名前だよ、名前、いつまでも名前なしなんて不便じゃん。
クフェアはその子の名前は何にするの」
「そうね…」
シルフィードの言葉は的を得ている。
クフェアも流石にいつまでも名前無しでは可哀想だと思い思案する。
「ボクならね……そうだ!クフェアの子だからクーコなんてどう!」
「却下」
「ガー―ン!……いいと思うんだけどなぁ~」
自信満々で出した名前を一瞬で拒否されテーブルに伏せ落ち込むシルフィード。
切り株の生命とシルヴァはそんなシルフィードに掛けより元気を出せとばかりに手を添える。
「なんて良い子、ボク大感激!」
自分を慰める切り株の生命とシルヴァに感動し抱き締める。
その様子をクフェアは見つめる。
「産まれたばかりなのに他を思いや得る優しい子………アルメリア。
決めた」
「アルメリア」
シルフィードに抱き締められた切り株の生命は自分を呼んでいるかのようなクフェアの声に反応しシルフィードから抜け出すとテーブルの上をトコトコと走りクフェアに駆け寄る。
「アルメリア」
クフェアは駆け寄った切り株の生命を両手で支えながら優しく自分の高さに上げ切り株の生命にそう告げる。
「アルメリア、あなたの名前」
切り株の生命、アルメリアにそれが自分の名前だと認識できているのかは分からない。
だけどそんなの関係ないとクフェアは想いを込め呼ぶ。
「アルメリア」
アルメリアには自分に対し親が発する言葉の意味が何なのかそもそも言葉自体がなんなのか分からない。
産まれたばかりの生命、心が存在していようが感情を理解するのはあまりにも難しく知識も足りない。
喜怒哀楽。
喜び
怒り
哀しみ
楽しい
身体で表現できていようともそれは自身の中では無意識であり自然に成ったもの。
その感情が何で表れたのかすら分かってはいない。
でもそれは悪いことではない。
確かにあるものをただ知らないだけなのだから。
だから切り株の生命は親から、自分より大きく強く優しく暖かい人から発する言葉の意味が理解できなくても哀しみや怒りの感情はない。
哀しみの意味は知らなくても
それが哀しみでないことは感じている。
怒りの意味を知らなくても
それが怒りでないことは感じている。
喜びの意味を知らなくても
それが喜びを越えていることは感じている。
楽しいの意味を知らなくても
それが楽しいを越えていることは感じている。
アルメリア。
その言葉は知らなくても
これがとても大切な、大切なものだと感じていた。