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4 行き当たりばったりの始まり

「な、なんじゃ、そんな哀れな物を見る目で儂を見て。

べ、別におかしな事等言っていないじゃろう?

それともなんじゃ、抽斗の取っ手やら表面やらに何かついているのか?」


ヤバい、あまりのおかしさに今にも吹き出してしまいそうだ。

この箪笥、自分が相当おかしなことを言っていることに気付いていないな。


「え、何故にそんなにも笑っているのじゃ?」


あまりの困惑具合、流石にこのまま失笑しているだけだと全く先に進まないから、そろそろツッコもうか。


「いや、ちょっと言ってることが阿呆だなと思ってね。」


「阿呆?阿呆とはなんじゃ阿呆とは!

これでも儂は四二〇〇年生きておるんじゃぞ、それを阿呆とはなんという冒涜じゃ!

貴様には創造神様からの鉄槌が必ずや下ることに……。」


ああ、もう、まったくうざったいなぁ。

本当に何なんだこの箪笥、態度が不快な程にくるくる変わるし、変なところで妙なスイッチが入る。

これが俗に言う、『老害』なのだろうか。

いや、流石に老害呼ばわりは酷いからしないけれども。


「ごめんごめん、今のは忘れて。ちょっとした気の迷いだから。

確かに、今は地図も何も無いんだから、どうしても行き当たりばったりになるよね、否定してごめん。」


なんとかアーチェスの言葉を遮り、そのまま言葉を発させる間を与えずにできるだけ優しい口調と声で謝罪を述べる。


僕の予想通り、アーチェスはフン、と鼻を鳴らしたあと、まぁ、分かればよいのだ、分かれば、と言いつつ引き下がってくれた。


「じゃあ、とりあえず、あっちにある森の向こうの方に行ってみようか。

もしかしたら、林業か何かを営んでいる村でもあるかもしれないし。」


さっきは散々阿呆と罵ったが、実際問題、確かにアーチェスの言う通り適当に進むしか僕等に道は無い。


「ふむ、陽から見るに、西の方か。

地図が無い故なんとも言えぬが、まぁ、幾ら未熟な世界といえども森の中やその向こうに小屋位はあるじゃろうて。

じゃあ、早速行く事とするかの。」


そう言っているのにも関わらず、話とは逆に地に腰を据えたアーチェス。

そしてそのまま何か身体に力を入れている。


「どうしたんだよ、アーチェス。

西の方に行くんじゃないのか?」


そう、僕が怪訝に思い問うても、


「……ちょっと黙っておれ」


そう、急に低く、また分厚くなった声で曖昧な返事を返すアーチェス。

その声にあるあまりの気合と木の節々から湧き出るオーラに、思わず黙りこくってしまう。


「うぅぅ……。」


そしてまた、力むような声を捻り出した刹那、アーチェスの黒っぽく、また赤茶の身体が煌々と光りはじめる。

声に出さない、というか声が出せないながらも、急速に変わる目の前のそれに、なんだなんだと疑問を覚えつつも僕は唾を一口ゴクリと飲んでそれを見守る。


「ふんぬっ!!」


アーチェスが一気に溜まっていた気合を吐き出した様な大きな一息をつくと、光は徐々に薄れていき……、


「どうじゃ!これが我の第二形態、その名も『自走箪笥 アーチェス』じゃ!」


そう自慢気に叫ぶと同時に、箪笥に棒のような足が生えた謎の生物が顕になった。


なんだろう、凄く微妙な心情だ。

いや、これからどんな事になるのか興味関心を示していたら、ただ足が生えただけという軽微な変化だったら普通がっかりはするだろう。


そんな僕の気持ちを横目に、アーチェスはまた長話を始める。


「ふっふっふ、すごいじゃろう、そうじゃろう。

この形態になれば儂はいままでの普通の姿のときより も幾段も早く移動できるように……って、さ、先に行こうとするでない!こらぁーー、老神具のありがたい話位聞かんかぁ!」


チッ、バレたか。

気づかれる前に一人で逃げ切ろうと思ったのに。


少し頭のネジのイカれた爺箪笥の言う意味不明な戯言なんていちいち聞いていられる訳が無いだろう、そりゃ逃げるさ。


だからまだまだ……


「逃げるんだよぉ!」


そこら中を全力疾走で駆ける。

幾ら足が生えて、また神の作った箪笥とは言え箪笥は箪笥、木の塊が流石に健康な生身の人間に追いつける筈は無いだろう。


そう思っていたのも束の間、アーチェスが不格好な足を少し曲げたかと思うと、目にも追えぬうちに僕の真横にやってきて、僕を向いたかと思えば肩に一番上の抽斗を乗せる。


「高木殿?言う事は?」


いかん、これはかなり怒っている。

顔こそ箪笥には無いから分からないけれど、もし顔があったとしたら、これは恐らく笑っているけど笑っていないタイプの顔をしているだろう。


「あああ、アーチェス?は、話があるならとりあえずあ、歩きながらで、は、話そうよ。」


「何、話なんぞという物ではない、儂は一言高木殿から言葉を聞きたいだけじゃよ。

で、言う事は?」


一つ、肩に乗る抽斗が重くなる。


「申し訳御座いませんでしたぁぁぁぁぁ。」


流石に命の危険を感じたのもあってか、思わず土下座して必死に詫びた。

読んでくださり、有難う御座います。

感想、ブックマーク頂けると有難いです。

かなり投稿に間ができて申し訳御座いませんでした。

これからもちょくちょく頑張って行きたいのですが、やはりどうしてもこれからも投稿に間が空いてしまうかも……。

どうか、それでも読んで頂ければありがたいです。

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