2 転生
見つけてくださり有難うございます。
宙に浮いた身体の行き着いた先は、白い雲の上。
そして、眼の前には昔ネットでみたエニグマのような機械。
と、急にその機械は機械音声のような声で話を始めた。
〘高木亮様、初めまして。
私はアナ、今回の転生時の説明を行う為だけのシステムです。
以後、お見知りおきを。〙
一体全体何を言っているんだ、この機械は。
まだ機械が機械音声で喋るのは分かる、だが、何なんだ、これの言う転生というのは。
もしかして、これが死ぬ前に人が見ると言われている走馬灯と言うものなのだろうか。
〘いいえ、違います。
そもそも、走馬灯というのは臨死時に過去の出来事が次々と現れて消えるフラッシュバック現象です。
消えるどころか過去の出来事ですらないこれは、走馬灯とは言えないでしょう。〙
は、はぁ……。
なんなんだろうこの機械、妙にうざったい。
揚げ足を取るタイプの機械なんて聞いたことがなかったが、その理由が分かったような気がする。
〘そのようなことはどうでも良くて、本題の転生の方へ話を移します。〙
酷く話の変え方が急だな、と思いながら、これは機械、指摘のし過ぎも良くないかと思い、その思いを引っ込める。
〘転生という言葉自体はご存知だと思いますので、そちらの説明は割愛致します。
よって、今回は転生先と、転生にあたっての支援物資についてのお話をさせて頂きたいと思います。〙
転生、ねぇ。
俄かには信じ難いが、今現在目の前で起こっているのだからもう仕方ない。
〘物分りが良くて助かります。
転生先はそちらの世界にあるライトノベルのような世界で、魔法等があるだけでなく、かなりの実力主義になります。
また、転生と言っても、転生先での容姿や年齢、能力等は死亡する直前のあなたと同様になっていますので、最初から魔法が使えるわけではありません。〙
実力主義……。
魔法といった科学の反対の力が主の世界では、転生したばかりの人では向こうで使える力も知識以外では少ないし、何よりその知識が通用するかも危うい。
さらに、最初から魔法が使えないとなると、その点かなり難しい事だと思うのだが?
〘はい、それはごもっともです。
そのため、私達は転生者が向こうの世界でも生きていけるように、支援を用意しているのです。〙
ほう、それが一番最初に言っていた支援物資ね。
〘そうです、それで、その支援は幾らか種類がありますので、こちらのタブレット端末で選択して下さい。〙
と言い、目の前に現れた机と椅子、そしてタブレット端末。
タブレット端末の電源を入れると、表示される文字、『残り使用可能ポイント 三千』。
色々見てみたが、どうやらこのポイントを使って様々な物を得ることができるみたいだ。
それは良くわからないスキルから、魔法、食料などの生活必需品、挙げ句は家まで。
もっとも家クラスになると必要ポイントは恐ろしい程になるけども。
今パッと見てみただけでも面白そうな物がありすぎて、もはや選ぶことはできない。
そう思った刹那、
『ランダムで選択しますか?』
そう、タブレット端末の中央に文字が表示された。
どうも昔から優柔不断な僕は、その甘い誘いに乗ってしまった。
『支援物資をランダムで選択しました。
使用ポイントの内訳は以下の通りです。
物資 零
魔法 零
スキル 零
従属 三千』
結構、というか振り分けが極端なのは僕の運のせいなのか、それともランダム選択はこれがデフォルトなのだろうか。
〘ランダム選択にデフォルトはありません、常に乱数の組み合わせにより選択されています。
詳細に言うと、エントロピー源を用いた真性乱数シュミレーターによる乱数の作成と、さらにそれにシード値と乱数生成アルゴリズムを用いた疑似乱数が鍵となっているシフト暗号の合成で値を作成、それにより選択しています。
選択例で言うと、まず真性乱数ーー今回は96432215としますーーに、疑似乱数ーー今回は5としますーーの数前にシフトさせることで、96432215は41987760となり、最初の一桁が大カテゴリ分け、その下の二桁が小カテゴリ分け、その下はさらに詳細な判別用の値です。
また、この乱数による決定はポイント数という条件があるために、一秒に三千万通りの速度で算出、算出の中で条件に合うものが選択されて行き……〙
あぁ、分かった、分かったからもうやめてくれ。
頼むから難しい話はやめて欲しい、今起きている出来事でさえ未だ意味が分からないのに、それ以上意味の分からないことを言われたらさらに混乱してしまう。
〘停止の指示、了解致しました。
また、今回の非礼はお詫びいたします。
さて、支援物資選択も終わったようですので、早速転生の方に移ります。
今立っている場所に寝転がり、目を瞑っていてください。〙
そう言われ、素直にその雲の上に寝転がり、目を瞑った。
ちょっと背中の辺りにふわふわとした感じの違和感がある。
また、ちょっとばかりひんやりしていて、少し気持ち良い。
と、そう思いながら雲の上を満喫していると、眼前の機械は急に声を張り上げた。
〘憐れなるこの人に新たなる生を与えよ。転生〙
その刹那、今まで柔らかに浮ついていた雲は火のように沸き立ち、機械も、全ての物に靄がかかる。
その靄は勢いそのままに僕の全てを包み込む。
その意識さえも同様に……。
読んでくださり、有難う御座います。
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