18 被災地③
手に持ったその杖を、僕はじっと眺めていた。
指す夕陽を吸い込んで、僕に届けている。
陽に重ねてみれば、後光の指したようだった。
一つ息を吸って、呪文を唱える。
『武器ステータス』
目前に、諸々文字の書いてある石板が現れる。内容は主に、今のこの杖の状態、魔法のリストさらにバフ・デバフリスト。
例えば状態だと、名称ウッドワンド、耐久3500、使用日数0日、魔力量40000と4つの項目が出る。
実にシンプルでわかりやすい。おそらく、耐久が0になると壊れるのだろう。修繕やメンテナンスは、またザハーグさんに聞くことにしようか。
次に魔法のリスト。これには、どうやら今の僕の魔力総量で発動できる魔法が全て載っているらしい。魔力総量が40120と表示されているから、魔力総量=武器防具の魔力+装備者の魔力みたいだ。
僕はその中から一つ、魔法を見つけて発動する。
『創造』
これは、無から物を創造できる魔法。ただし、材質は木に限られ、また複雑な物もできない。せいぜい棒や板、大きくない箱程度だ。作るものにもよるが、使用魔力は大体一回3000程らしい。
そして僕は、創造した木の棒を土に突き刺す。その根本の方に穴を掘り、水筒の中身をそれに入れる。
そしてまた埋めて、手を合わせる。
陽はもう、遥か西の山で眠ろうとしていた。
どうやら夜になると捜索作業は終了になるようで、鐘を持った人が里の跡地を歩き回り、その旨を伝えていた。
ズボンの右ポケットに入れていた黒パンをかじる。
硬く、味がしない。ゴムのよう。
されど食べねば生きていけぬと、もう一口で食べきる。
そして帰路についた。
救護所へと戻ると、人が集まっていた。
その中央には、一人の男が壇上に。
気になって近寄ってみると、どうやら演説中のようだった。
「大天災の発生からはや3日も終わろうとしている!物資は王都から続々と送られており、また明後日には王都からの救護団もくるであろう!苦境ではあるが、皆で協力して乗り越えようぞ!」
そして各所から歓声が湧き上がる。
幼い子供から体格の良い青年、杖をつく老人までが、揃って手を挙げ歓声を上げている。
ここだけ、熱気が充満している。
僕は昔、大地震の被災地に行ったことがある。
あの被災地はかなりの過疎地で、訪れた時は発災から半年以上経過していたが、復興は進んでいなかった。
さらに、高齢化率が高かった影響か、活気もあまり感じられなかった。
しかし、ここは違う。活気がある。
おそらく彼らならば、また新たな村を築きあげるだろう。
ザハーグさんの弟子として、また一人の人間として、僕も、協力したい。
気付けば、僕も歓声に加わっていた。
しかしながら、今の僕には問題がある。それは、寝床が無いことだ。
義手義足をつけたあのテントはあくまで病床で、生活用のテントではない。
「野宿か……。」
あまり虫は好きじゃないのだが、背に腹は代えられない。病人用ではない小さなテントを背にして、横たわることにした。
ああ、硬い。決して寝心地は良くない。
中々寝付けぬ夜を、僕は過ごした。は過ごした。




