14 救護所①
「おい坊主、ぐうたら寝てる場合じゃねぇぞ! 早く起きろ!」
頭に一発、痛みを感じて目を覚ます。
そこは、テントの中だった。
うるさい雨音の中に、ザハーグさんの顔が、乏しい灯りの中にうっすら見えた。詳しい表情は殆ど分からなかった。だが、笑っていないことだけは分かった。
「やっと起きたか……坊主。まずお前に説明しておかないといけないことがある。それは……」
ザハーグさんの話を聞こうと身体を起こした時、僕は初めて一つの事に気付いた。
右手と左足の感覚がおかしいのだ。
見ても右手と左足は、ある。だが、思うように動いてくれないのだ。
「気付いたか。良いか、落ち着いて聞けよ。深呼吸をしろ。」
吸う、吐く。吸う、吐く。
雨はなおもテントを穿っていた。
「お前の右腕と左足は、瓦礫に潰された。今お前についているのは、魔導式の義手と義足だ。」
遠くで轟音が響き、目を刺すような光が広がった。
電燈が一瞬、消えた。
「その義手と義足は魔力が無いとまともに使えない。今はとにかく人手が足りない。とりあえずそれらを使えるようにしてやるから、外を手伝え。いいな?」
……。
「返事は!」
怒号にハッとする。
「ッ、はい!」
「じゃあまず、魔力を掴む。この石を全力で握れ。」
そう言って、ザハーグさんは赤い半透明の石を差し出した。石には、魔法陣のようなものが刻まれていた。
僕は左手で、それを握った。
「握ったな? じゃあ、掴ませるぞ。」
『洗礼』
左手が輝く。だが、その輝きは暖かかった。
その光は僕を包み、それからザハーグさんを包み、テントをも包んだ。
輝きが止む頃には、右腕と左足は自由に動くようになっていた。
「良いか坊主、今お前は魔力を持った。つまりは魔術と魔法を使えるようになったわけだ。そこでとりあえず基本的な事だけ教えておく。」
こくり、と僕は頷く。
それと同時に、次々と入り込んでいる情報に冷静に対応できている自分を不思議に思った。
「まず、魔力はお前の血液の中にある。使い過ぎると貧血症状が現れるから気をつけろ。魔力量と上限は、魔力という基礎魔術で見ることができる。試しに開いてみろ。」
『魔力』
頭に数が思い浮かぶ。120分の120という。
前世で某表計算ソフトを使用する時に良く見たなぁと思いながら、この120分の120という数について考える。
分母が保有可能な魔力総量、分子が現有魔力総量だろうか。
「頭に数が思い浮かんだだろう、それを今言ってみろ。」
「120分の120です。」
するとザハーグさんは顎に手を当て、
「ふむ、120か。」
と言った。これが少ないのか多いのかは言わなかった。
「じゃあ次は魔術と魔法について話して、2つ魔術を覚えてもらう。いいな?」
「はい。」
「魔術と魔法については、かなり詳しい定義がされているんだが、今そんなこと話してる余裕はない。いつか話してやるから、今は簡単にいくぞ。魔術と魔法はどちらも魔力を使って行う技を表す言葉で、水、火、風、土、光、心身の六属性がある。これだけ聞けば同じようなものに見えるかもしれないが、明確な違いが一つある。魔術はあくまで一つの技であり、魔法は魔術の合せ技であるということだ。だから、魔術は比較的修得が簡単で、魔力さえ掴めていれば呪文を唱えれば使えるが、魔法は大量の魔力と修行を必要とする。それは、魔術は一般人でも五つは修得できても、魔法であれば何も修得できないほどだ。ここまでで質問はあるか?」
首を横に振ると、ザハーグさんは頷いて話を続けた。
「じゃあ、坊主には二つ魔術を修得してもらう。一つ目が初級心身魔術の小強化だ。魔力を100は使うが、これを使えば1日の間は全ての身体能力を1.2倍に、魔力回復効率を1.5倍に引き上げることができる。身体全体に力を入れながら唱えるのがコツだな。やってみろ。」
『小強化』
刹那に身体が軽くなった。今なら何でも持ち上げられそうだ。
「そして二つ目は初級水魔術の小水球だ。消費魔力は5、小さな水の球を出せる魔術だ。魔力が少なくて練習ができないが、今は雨のおかげで火が収まってるが、これから先また再燃する可能性がある。そのときにはこれを使って逃げろ。」
僕はこくりと頷く。また、あのうめき声が頭をよぎった。
「じゃあ、これで説明は全部終わりにする。これから救護所本部に向かって仕事を割り振るから、それに従って行動しろ。いいな?」
「はい。」
テントを出て見た光景は、地獄そのものだった。
はいこんにちは、窓際の箪笥です。近頃の目標だったりする毎月投稿を今月も達成できて一安心、かと思いきや世は夏休みシーズン。
夏休みシーズンとなると学生さんが休みになるということでアクセス数が増え、かなりの繁忙期となるのです。一昨年は良く分からない短編(削除済み)、去年は亡兵ちゃんの投稿をしてたりしたわけですので、毎月投稿から毎週投稿位まで頻度を引き上げたいなと思ってます(出来るとは言ってない)。と、いうことで、夏休みも拙作「転生したらチートではなく箪笥をもらいました」をよろしくお願いします。




