11 ザンツウェルクの里②
僕が後悔に苛まれながらトレーニングを繰り返すこと数日。
遂にヴァスクシェニー、地球で言うところの日曜日を迎えた。
「よう坊主、あんたが来てから三日間、遂にヴァスクシェニーがやってきた。
記念すべき日だからな、特別トレーニングを持ってきてやったぞ。」
おいおい、休日でもトレーニングをやるのか……。
たたでさえ慣れない運動で身体の節々で痛みが訴えられているというのに。
「ただ、流石に俺だって鬼じゃない。
トレーニングと言っても、普段の肉体的な物ではないぞ。
今日のトレーニングメニューは、この里を散策し、地理などを覚えることと冒険者ギルドで冒険者登録することだ。」
つまるところ……、
「実質観光のようなものだ。金やら地図やらは渡すから、思う存分楽しんでこい。」
トレーニングと言う名のただのサービス。
そのことを理解した瞬間、一気に身体が軽くなり、痛みも治まる。
ただ部屋で休むだけではなく外に金もかからず出掛けられるなんてとても嬉しい。
「それと、来週からヴァスクシェニーの過ごし方は自由とする。金は月々小遣いを八〇〇〇ルビー支給するから、それで工面するように。」
つまり所持金の合計は一九一三〇ルビー。
服を売ったときの一一三〇〇ルビーは貯金に回すとして、残りを何に使おうか。
いや、まだ一ルビーの価値がわからない限りなんとも言えない。
物価の調査も今日やろう。
「最後に、今日からアーチェスと坊主はペアになってもらう。もう少ししたらアーチェスも来るはずだから、共に行動しろ。そして互いが信頼できるようになれ。」
アーチェスとの合流……はちょっと微妙だけど、利便性を考えるとありがたい。
それから、小遣いとそれを入れる封筒がくばられた。
五〇〇〇と書かれた紙幣が二枚、一〇〇〇と書かれた紙幣が六枚あった。
「それはアーチェスと坊主の2人分の小遣いだ。上手く使えよ。」
なるほど、そこでも自分の分を盗まないという信頼が必要な訳だ。
そう感心していると、遠くから足音が聞こえてきた。
その足音が僕の隣に来た時、それがアーチェスであると分かった。
「申し訳ない、遅れてしもうた。」
そう言って土下座をするアーチェス。
「いつもだったらトレーニングを二倍にしてやる所だが、今回は許そう。思う存分楽しんでこい。」
「かたじけない。」
「さぁアーチェス、行こうか。」
「そうじゃの。」
「「言ってきます」」
そして、屋敷の門を出た。
屋敷は里の外れにあるようで、里に入るまでに少し林を歩かなければならなかった。
林は静かで、時折木々が鳴く位しか音がない。
木漏れ日が林道の石畳を穿つ。
「ねぇアーチェス、今日は先に冒険者ギルドに登録してから観光しない?やることを先に済ませておいたほうが気が楽かなと思うんだけど。」
「うむ、そうじゃな。ただ、場所が極端に遠かったりするなら後にしよう。」
冒険者ギルドとはどのようなところなのだろうか。
ライトノベルにあるようなものなのか、それとも全くの別物なのか。
そう思っていると、林が開いた。
そして見えたのは、輝く里。
稲穂のような物が風に揺られ、黄金色を振りまいている。
「うわぁ……。」
思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
ちらりとアーチェスの方を見ると、じっと稲穂のような物達を眺めていた。
「って見とれてる場合じゃない、早く里の冒険者ギルドに行かないと。」
ノルマはそれだし、何より早くしないと観光や物価調査もできない。
なにより、次のヴァスクシェニーには、本か何かを買いたいのだ。だから書店の位置も抑えておきたい。
「そ、そうじゃったな。さぁ、急いで行くぞ。」
そして僕達は黄金色の流れに流されるかのように走った。




