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農民達プロテインで餌付けしたったwww

 風のように駆け出してから30分ほどすると、袋の中に何かを大量に入れてセクシャルは戻ってきた。


 いろいろな種類の粉が入った袋と、500mlほどの水が入ったシェイカーを次々と取り出していく。


 これは、セクシャルが小さい頃から少しずつ生成してきたサプリメントたちである。


 自身のバルクアップのため、決して多くない魔力を捻出して貯めてきた栄養素たち。それを惜しみなく領民たちへあげようとしているのだから、流石の私もこれには感動である。


 セクくん、見直したわ!


「まずはプロテイン30g。マルトデキストリンも必須だ。あとはミネラル、マルチビタミン、グルタミン、クレアチン。それから……」


 それぞれの袋から粉をスプーンで掬っていき、シェイカーに入れてサプリメントを調合していく。そして、それを農民たちに配っていった。


「上質なプロテインとサプリメントを配合した。一食分の代わりにはなるだろう。遠慮せずに飲むといい。」

 

 怪しい謎の粉を飲むように言われ、農民たちは困惑している様子だ。


 不器用なセクシャルことキン・ニクオにはこのように押し付ける形が精一杯だったのだろう。


 なかなか強引なやり方だが、本当に善意100%の行動なのだから見逃してやってほしいところだ。


「ねえママ、これ飲んでもいい?」

「ダメよ! 何が入っているのかわからないし、もし何かあったら……」

「でも、いい匂いするよ? あまーい匂い!」


「確かにいい香りはするが……」

「な。金持ちの考えやがることは全く理解できねえ。毒でも入ってるんじゃねえか?」


 どこもかしこも、セクシャルを、というよりこのドリンクを怪しむ声が上がっている。


 セクシャルの善意が伝わっていないようで悲しくなるが、これは真っ当な反応であり、必要な警戒である。


 何でもかんでも甘んじて受け入れるようでは、本当に悪い金持ちに目をつけられた時にどうにかされてしまいかねない。


 しかし、そんな事になっているとはつゆ知らず、先ほどまでと同じような工程で自分のプロテインを作っていくセクシャル。


 そして、ごくごくとうまそうに飲み干していく姿に勇気が湧いたのだろうか。最初にセクシャルに話しかけられた農民がプロテインに口をつけた。


「う、うまいな……」


 毒見は済んだし、本人も同じものを飲んでいたようだ。そして何より、空きっ腹を美味しそうな甘い香りが誘惑する。


 農民たちは甘い誘惑に耐えきれず、次々とプロテインに口をつけていった。


「よし、ひとまず運動後の栄養摂取はこれで十分だ。なあ、夜もまともに肉や魚を食べられない状況なのか?」


 大体全員がプロテインを飲み干した頃を見計らい、再びセクシャルは農民に声をかけた。


「ええ、見ての通り俺たちは貧しいですし、この辺の動物は強くて自分たちで狩りなんてとても……」


 まさに農民の言う通りである。彼らは必死に農作業をしても少額の報酬しか得られず、肉や魚を買う事ができない。


 そして、まともな食事も得られないまま農作業でに励み、疲れた体で狩りなんてもってのほか。


 そしてこれらの悪循環をさらに増長させるのが、ハラスメント領の付近の動物の強さである。


 領土のほとんどが未開拓の地であるハラスメント領。その理由は、付近に生息する魔物や野生動物たちの強靭さにあった。


 普通の野生動物ですら魔物のような身体能力を持ち、魔物は他の領地と比べて数ランク上の強さを持つ。


 そのため、ハラスメント一族は公爵家でありながらも広大な土地を活用できず、領地にはそこそこな数の貧民が溢れていた。


「そうか…….。どうやら、父は無能のようだな。いや、それは今までこの問題を知ろうともしなかった俺も同じか……。」


 日々肉体を酷使しているにもかかわらずバルクがない農民たち。そして、老若男女関係なく苦労をして生きている貧民たち。


 その姿を脳裏に刻み込み、必ず食事状況を改善して見せふことを心に誓ったセクシャルであった。


「このように沈んだ気分では、筋肉は成長しない。この問題は必ず俺がすぐに解決して見せる。俺のバルクアップのためにも……!」


 精神、脳と筋肉の関係は、実際に深い。マインドマッスルコネクションという言葉は聞いたことがあるだろうか。


 すごく簡単に説明すると、筋肉と意識を繋げること。


 つまり、セクシャルが食事を整えたおかげで農民たちに筋肉が宿れば、それはセクシャルが筋肉をつけたことと同義であり、自分の筋肉も成長するはずだ。と、セクシャルは本気で思い込んでいるようだった。


 そんなことは普通あり得ないのだが、人間の思い込みは恐ろしく効果を発揮することがある。


 目隠しされた状態で、自身の血が全て流れ落ちた音を聴かせられただけで死んでしまった人の話は有名である。


 実際には出血など全くしていないのにもかかわらず、自分は血を全て失ったと思い込んだだけで死に至る。


 人を殺すことさえできてしまうのが、思い込みの力だった。


 そんな思い込みの力が脳まで筋肉でできているセクシャルに適応されれば……?


 どうなるのかはまだわからないが、この問題の解決は必ずセクシャルの筋肉に貢献することは間違い無いだろう。


「それならば、この俺に任せておけ! いつまでもサプリに頼ってはいられない。1日2食分のリアルフードはこの俺が用意してやる。腹をすかせているやつらに声をかけて待っていろ!」


 セクシャルは農民たちにそう告げて、魔境と言われている森へと駆け出して行った。



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