偽者 8
ラストが、あの事件の生き残り。
その事実を聞いて、セルティアは驚いたのと同時に、これまでのラストの実力に納得した。
しかし、その男がいまは膝を抱えて、子供のようになっている。
あの事件は色々な理由で王国内で話題になっていた。
魔族が現れ、村に住んでいたほとんどの人間を玩具のように殺して回ったこと。
その魔族を勇者の卵とその弟の二人で撃退したこと。
そして、その弟が勇者殺しの称号を得て生き残ったこと。
しかし、位の高い一部の人間のみが知っていた情報に勇者の力がその弟に引き継がれていたことがあった。
もちろんセルティアも知っていた。
(当時、事件に対しての王族としての危機感や生き残った子に対しての同情があるなかで、なんて美しい兄弟愛何だろうとも思った。先に死んでしまった兄がこれから一人で生きていく事になる弟に、最後に贈った贈り物。・・・・思い出すと無性に腹が立ってきたわね。)
セルティアはふさぎ込んでいるラストに平手打ちをする。
パシンッ
「え?」
「ラストさん、しっかりしなさい。そんな姿でお兄さんに顔向けできるの?」
「・・・僕は兄さんを殺したんだよ?そもそも、僕があの日ファルシさんについて行かなければ、無理して森の奥に進むことはなかったんだ。そしたら、皆が死ぬことなんてなかったはずだ。そうだよ、僕のせいなんだ。皆は、兄さんは僕をきっと恨んでる。」
「おらっ。せっかくの手に入れた力だ。好きに暴れさせてもらうぜ!」
無気力なラストを横に記憶の整理が終わったライは、その力を試すように好き勝手暴れる。
「もう!」
セルティアはラストを守るために魔法障壁を張った。
「そんな人間が!自分を犠牲にしてあなたを助けると思ってるの?!」
「・・・・」
ライの放つ魔力弾がセルティアの障壁を破壊する。
「くっ!」
数発攻撃を食らいつつも続けて魔法障壁を張るセルティア。
「セルティア!あれだけ魔力を吸われてもまだそれだけ残っているのか!」
「黙りなさい!気安く名前で呼ばないでくれるかしら。あと、あなた、性格変わってるわよ。」
「うるせぇ!」
セルティアは魔法障壁を張りながらも魔法を打つが、どれも簡単に弾かれる。
「ラストさん、あなたも抗いなさい。」
「この力は呪いだよ・・・俺のことを、あの日のことを忘れるなって言っている。」
「・・・・・」
セルティアはライに魔法を打つのをやめ、ラストを正面から見る。
「その力は呪いなんかじゃない!弟に、あなたに残した『贈り物』よ!」
「・・・・・」
「お兄さんは、あなたに生きてほしかっただけ。それに、その力を贈ったのはきっと、『これからも見守ってる』って気持ちよ!」
「え?」
ラストはその言葉で顔を上げる。そしてセルティアの顔を見て驚いた。
「お願いだから・・・・私を助けてよ。」
「ッ!?」
セルティアは泣きそうな顔で肩を恐怖で震わせていた。
その姿が当時の自分に重なる。
(そうだよな。今まで安全なお城で過ごし、危険なことから遠い所に居た王女さまが一番怖いはずだ。それもライあんなことになってショックを受けないはずがない。・・・・ああ、あの時、兄さんもこんな気持ちだったのか。なら、立ち上がらないわけには行かないな。)
「ああ、段々めんどくさくなってきた!もういいや。」
ライはでたらめな攻撃を止め、魔力を収束して放つ。
その攻撃はセルティアが張っていた障壁を軽々と破壊した。
「これで、おしまいだ。『黒糸星雲』!」
今までとは比にならない魔力の奔流が一気にラスト達に押し寄せる。
「ッ!」
どす黒い魔力が二人を飲みこむ。
「聖剣召喚。こい!儀典:エクスカリバーッ!」
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