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ナイト・ラスト  作者: 伊藤 おさむ
第一章
27/32

偽者 7

 

「なッ!」


 古代兵器と呼ばれる武器が使われていた時代は、そもそも魔法やスキルといったものが存在しなかった時代と言われている。


 つまり、魔法やスキルが使えない相手を想定して作られた兵器ということだ。


 人類が魔法やスキルを使えるようになってからは、それらの武器を作る必要がなくなった。


 実は古代兵器は現代の技術で作れないわけではない。


 確かに古代兵器と全く同じ物を作るのは難しいが、むしろ魔法を使って同等以上のものが再現可能だ。


 現代は魔法が込められた道具が流通しているが、それらも古代の技術が魔法の誕生によって発展したものだ。


 利点があるものは衰えず、むしろ発展していく。


 当たり前のことだ。


 魔力を使わない兵器は利点が少なく忘れ去られ、古代兵器と言われるようになっただけだ。


 ちなみに古代兵器も弱い訳ではない。


 現代においても大した実力のない者では勝てないだろう。


 加えて、古代兵器の中には魔法により強化された物もある。


 現代でも稼働するもののほとんどはこれだ。


 ここのマシンガンにも強度を上げ、簡単な魔法では壊せないような強化がされていた。


 どちらにしても一定以上の力を持つ者達の前では相手にならないのだが。


 ライが衝撃を受けて膝をつく。


「今だ!」


「シャーッ!」


「あっ」


 部屋に入った時から潜ませていた召喚獣に、ライが弄っていた操作端末を奪わせる。


「よくやった。」


 端末を取ってきた蛇をねぎらってやる。


 俺はさっそく端末を見て操作する。同じモノクロームのメンバーに古代兵器に詳しい人物がいることで操作は大体わかった。


 迷いなくボタンを押し、セルティア王女が囚われていたカプセルを開く。


「大丈夫か!」


「ええ、大丈夫よ。魔力を吸われていただけだから。疲労は凄いけれど。」


 王女様に駆け寄り、その体調を確認する。


「あの・・・あまりジロジロ見ないでくれるかしら。」


 言われて見ると、王女様は汗をビッショリ掻いており、制服のブラウスが透けていた。


「あ、ああ。悪い。」


 そう言って、俺が着ていたブレザーを王女様にかけてやる。


「あ、ありがとう。」


「気にするな」


 取り合えず、王女の無事は確保出来た。あとは、ライをどうするかだな。出来れば拘束して話を聞きたいんだが。


 そう考えてライを見ると台座のようなものを操作し、中からひし形の紫色をした石を取り出していた。


「おい。まだ何かする気か?」


「っ?!ラストさん。止めてください!」


 王女さまはライの行動を見ると酷く焦りだした。


「もう遅いよ。完璧な状態に出来ればしたかったけど、こうなったら仕方ないよね。半分の魔力でも十分な力が手に入るはずだ。」


 ライは手に持つ石を掲げて、何か呪文のようなものを言っている。


 あれ・・・あの石は、似た石をどこかで見たことある。あれはたしか、ファルシさんのネックレス・・・・


 嫌な予感がした。


「なあ、王女さま・・・あの石は何だ?」


「あれは、魔族の意思が宿った魔石、コアのようなものだと言ってたわ。あれを止めないと大変な事に・・・ラストさん?」


「・・・・」


 ライの持つ魔石からは俺も知っている禍々しい魔力を感じる。


 あの日の光景がよみがえる。


 湿った雨の匂い、吐きそうなほどに充満した血の匂い、燃える家や死体、弄ばれ磔にされた両親、首を飛ばされるメアリ、それを見て楽しむ魔族。


 そして、


 ――――兄の腹を貫ぬく手のぬくもり


「あぁぁ・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」


「ラストさん!大丈夫?」


 俺を心配する王女さまの声がかすかに聞こえる。


 けれど俺はもうそれどころではない。


 今までも戦うたびにチラつき、そのたびに目をそらしていたあの感覚をはっきり思い出してしまった。


 三年経っても俺はずっと、あの日に囚われていたんだ。


「どうしたのよ!一体。」


「ああ、すごい!これが魔族の力!魔石の半分でこれだけの力が手に入るのか。なら、満タンならどんな事が出来るんだろう!」


 ライは魔石だけではなく、周囲に漂っていた禍々しい魔力も取り込んで行く。


「すごい!すごいぞ!」


 ライの体も変容し始めた。


 結膜は黒く染まり、体の所々には亀裂が入る。


 伸びた爪に発達した筋肉。見た目は明らかにあの日の魔族に近づいてきている。


 魔力の関係か角までは生えないようだ。


「おおっ、記憶が流れてくるっ!力の使い方が分かる。ああ、この景色もその景色も素晴らしい!・・・ん?」


 魔族もどきとなったライの記憶には不思議な光景が映る。


「ラスト、お前まさかっ!三年前に魔族に襲撃された村の生き残りの一人か!」


「っ!?」


 それを聞いて驚くセルティア王女。


「こんな事も起こるんだな!ヒヒッ、お前最高だな。」


 俺の体がぴくんと反応する。


『ヒヒッ、お前最高だな。』


 過去の会話がフラッシュバックする。


 まさか、もう一度聞くことになるとは思わなかった。


「助けてよ・・・誰か・・・。」


 俺はぽつりとつぶやく。


 俺は深い暗闇に落ちていく。



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