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ナイト・ラスト  作者: 伊藤 おさむ
第一章
23/32

偽者 3

 翌朝、まだ完全に日が昇る前に俺は目が覚めた。


 というのも、用心の為に召喚していた召喚獣に顔を叩かれまくったからだ。ずっと叩いていたようだが全く起きなかったらしい。


 最初に目に入ったのはこちらを見下ろしてくる蛇の顔。


 一気に目は覚めた。


 想像以上に熟睡していたようだ。おかげで顔はパンパンに張れている。

「気が緩んでいたのか?気を付けてはいたはずだけど。」


 昨日のことを思い出そうとする。


 寝る前に薄っすらと召喚獣を出したことは覚えているが、それ以外が曖昧になってるな。


 かすかにライと話していた事を思い出せるぐらいだ。

「そうだ!王女様は?!」


 召喚獣に起こされたという事は王女さまの身に何かが起こったという事だ。


 テントを飛び出し、気を使いながら王女さまのテントの中を見るがそこにセルティア王女の姿はない。


 このことを相談しようとライのテントを見るがライの姿もない。


「どういうことだ?」


 王女さまが連れて行かれるのはまだ分かるが、どうしてライの姿がない?


 俺は召喚獣の蛇に何か怪しいものがないが調べさせる。


 焚火をしていた近くに落ちていた割れたティーカップで何か匂いを感じ取ったのか、昨夜、魚をさばいたときにまな板代わりに使っていた岩場の近くで止まった。


 そこをよく見ると白い粉のような物が見つかる。


「これはなんだ。昨日の状況から考えるに催眠薬か?」


 蛇を見ると首を大きく縦に振った。


 蛇は嗅覚が鋭く、鼻だけでなく舌も使って空気中の匂いを感じ取っている。


 召喚獣ともなれば野生の蛇以上の感覚を持っている。


 知能もしっかり持っている為、匂いを覚えさせればこういった事も出来るようになる。


「催眠薬、それも魔法で調合されたものみたいだな。なら昨日の異常な睡魔にも納得だ。」


 この様子だと他のメンバーが起きてくるのにも、そうとう時間が掛かるだろう。


「王女様の魔力もしっかり覚えているよな?追えるか?」


 蛇は自信満々に首を縦に振る。


 それが確認できると、さっそく俺はルイスを起こしに向かう。


 ちなみに、人選は消去方だ。残りの二人は俺が王女さまを探しに行くというと一緒について行くとか言い出しかねない。


 それに、昨日一番最初に見張りを終えて寝ったのは彼女だ。それなら早く起きる可能性も高い。


「おい!ルイス!おーい。」


 緊急事態という事で容赦なくルイスのテントに入り、体を揺すりながら声を掛ける。


 何度か繰り返すが一向に目を覚ます様子はない

 。

「しょうがない。頼んだ。あ、女の子だから顔は容赦してやってくれ。」


 俺は召喚獣の蛇に頼んだ。


 実際、俺を起こしたわけだし、寝起き一番に蛇の顔があったら目も覚める。


 蛇は彼女の体に巻き付くとゆっくりとその体を絞め始めた。


「んッ!んんッ」


 あ、そうやって起こすんだ。


 そんな状況じゃないのは分かっているが、何というか・・・


「んっ!あッ!そこは・・・」


 これはエロいな。ルイスのスタイルの良さが、蛇の締め付けで良く分かる。


「いや、だからそんな状況じゃない。」


 俺は煩悩を捨て、何度もルイスに呼びかける。


「おい!緊急事態なんだ!起きてくれ、ルイス!」


「ん?いったいどうしたんですか・・・」


 ようやく目が覚め、その寝ぼけ眼を開く。


 そこに映るのは俺の顔と蛇の顔。


「きゃあああっ!」


 ルイスの驚きように満足したのか、蛇は彼女から離れて俺の腕に巻き付く。


「ルイス、緊急事態だから、こんな方法で起こさせてもらった。悪い。」


「あ、いえ、ビックリしましたけどおかげで目も覚めました。」


 ルイスは乱れていた制服を正すと俺に向き直る。


「それで、何が起こったんですか?」


「落ち着いて聞いてくれ。セルティア王女が攫われた。」


「え?!」


 ルイスは驚き、その顔からは血の気が引いていく。


「そ、そ、それ大問題じゃないですか!急いで何とかしないと。犯人は誰か分かってるんですか?」


「十中八九、ライの野郎だな。」


「え?冗談ですよね?」


 ルイスは困惑する。


 まあ、ライはクラスの全員といい関係を築いていて、いかにも人畜無害って感じの男だった。


 クラスメイトからすれば、こっちの事実の方が信じられないよな。


「証拠はあるんですか?勘違いじゃないんですか?」


「昨日の魚に睡眠薬が仕込まれていたのが分かった。昨日、異様に眠気を感じなかったか?」


「たしかにそうでした。けど!」


「こいつに調べさせたが間違いないようだ。ルイスなら特に、この意味分かるよな?」


 ルイスは俺の腕にいる蛇を一瞥すると、悲しそうに答えた。


「そうですね。召喚獣は契約の関係で嘘を吐けません。そういうことは、本当なんですね?」


「ああ。」


「・・・分かりました。」


 ひとまず俺とルイスはテントから出て、外で話し合う。


「これからどうしますか?とりあえず先生たちに報告ですかね。」


「それなんだが、俺はこのまま王女さまのところへ向かう。ルイスは皆を連れて先生に報告してほしい。頼めるか?」


「王女さまがどこにいるか分かるんですか?」


「ああ、召喚獣で追える。」


「・・・・」


 ルイスは少しの間考えると諦めてため息をついた。


「分かりました。彼らと先生への報告は任せてください。」


 やはり、ルイスを選んで正解だったな。


「ただし、条件があります!」


「え?」


 ルイスは召喚魔法で昨日の鷹の召喚獣を呼び出す。


 鷹はルイスの腕ではなく、蛇の居ない方の俺の肩に止まった。


「この子も連れて行ってください。セルティア様の所で飛ばしてもらえれば、私たちも後から迎えるので。」


「分かった。ありがとう。」


 俺は王女さまの元へ向かおうと身を翻す。


「ラストさん。セルティア様の事、頼みます!」


「任せろ。」


 俺はそう言うと、腕に巻き付く蛇の案内に従って全力で駆け出した。






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