偽者 2
私が見張りの為にテントから出ると、焚火の前には既にライの背中があった。
「こんばんは、セルティア。」
こちらを見て手をふるライ。
彼とは十年前、旅行帰りに見舞われたトラブルで立ち寄った村で出会った。
その頃から彼は気さくだった。
その時、せっかくの楽しかった旅行に水を差された気持ちで不機嫌になっていた私にも気にせず話しかけてくれて、人付き合いが上手くなかった私でもすぐに仲良くなったのを覚えている。
「ええ、こんばんは。ライ。」
私も焚火の元へ向かい、ライの横に腰を下ろす。
「それにしても、まさかあなたと再会できるなんて思っていなかったわ。」
「それは俺もだよ。」
焚火に枯れ木を投げ入れるライ。
「最初話しかけた時、気付かれるどころかむしろ睨まれてちょっと傷ついたよ。」
「それは仕方ないでしょう!何年たったと思ってるのよ。どこかの誰かさんみたいな、私に近づきたいだけの面倒な奴だと思っても仕方がないじゃない。」
「それって、ラストのこと?」
「そうよ。」
彼のことは正直よく分からない。
人と関わろうとせず、他の人みたいな好奇の目で私のことも見ていなかった。
はじめは目立ちたくないのかと思っていたのだけど、ここ最近になって急に話しかけるようになった。
「彼、面白いよね。」
「私からすると面倒ごとを増やす疫病神よ。」
私に近づく為に話しかけようと貴族たちがお互いを牽制しあってるなか、今まで関わろうともしてこなかった平民が私に一番に話しかけ、しかもあれだけ視線のあるなかでナンパまがいのことをしてきた。
「一体どんな神経してるのよ。」
しかもメンバー発表の前だったから、メンバーに入ったのは私が気に入ったからたみたいな噂もたったし。
「落ち着いて。ほら、あったかい紅茶もあるよ。」
「ありがとう。いただくわ。」
ライから湯気が立ち上っているカップを受け取り、それをちょっとずつ飲む。
「ん?何だか変な味がするわ。入れ方でも間違えたの?」
ほんのりだが、いつもより苦い気がする。
「大丈夫なはずだよ。たぶん、水のせいじゃない?野営中なんだから許してよ。」
「それもそうね。」
私は納得してその紅茶を飲み進める。
「それにしても、一日目はこれ以上ない程いい内容だったわね。心配してたメンバーも問題なかったし、むしろ想定以上に動けてたいわ。ハイオークも難なく倒せた。二日目もこの調子で進んで行きたいところね。」
「ハイオークを倒したから、ここ辺りでもう脅威になりえる魔物はいないんじゃない?」
「そうね。そう考えると一日目にハイオークを倒せたのは大きかったわね。作戦も綺麗にハマったし・・・そういえば思い出したわ。」
「どうしたんだい?」
ライの顔にすこし影がさす。
私はそれに気づかずに聞いた。
「あの時は耳が早くて流石ねと思って気にしなかったけれど、今考えるとおかしいわ。」
曇るライの顔を見て私は聞いた。
「・・・どうしてあなたが、最近の遺跡の状況を知っているの?私に報告が来たのも一週間前なのよ?」
それを聞いたライは急に立ち上がり、不気味に思うほど自然に言う。
「アンデット生み出したのは俺なんだから、知ってて当然だよ。」
「え?」
どういうことなの?
私の脳は幼馴染ともいえる存在のライから出た発言を、受け入れられずにいた。
そして強烈な睡魔も襲ってくる。
「君もだけど、ラストも中々睡眠薬が聞かなくて焦ったよ。君に至っては、追加しないと効かなかったみたいだし。」
「だ・・れか・・・」
私は瞼の重みに耐えきれなくなり、瞼を閉じた。
「おやすみ。」
助けを求めて脳裏に浮かんだのは、あの空気の読めない、私に面倒ごとを増やす青年だった。
最後に聞いたのが彼の名前だったからかしら?ほんとに、馬鹿みたい・・・。
よろしければ小説の感想や高評価、ブックマーク登録、レビュー等、よろしくお願いします。
励みになります。




