偽者 1
真夜中の山は周りを見ると颯爽と茂った木々に取り囲まれ得体のしれない恐怖を覚えるが、ふと上を見上げるとどこまでも広がる空に燦燦と星が輝いており、恐怖を忘れてしまうほどの感動がある。
そんなことを想いながら俺は夜の番をしていた。
パチパチと燃える火が消えないように、集めていた枯れ木を継ぎ足していく。
既にここはハイオークの血生臭いにおいは消え、わずかに夕飯で食べた魚の美味しそうな残り香がしている。
結局、ハイオークとの闘いは想定以上にすぐに決着がついた。
まず、ルイスの召喚獣でハイオークを誘い出し、セルティア王女とライの魔法で動きを止める。
その間に俺、ノア、ルーカス、そしてルイスの召喚獣であるサーベルタイガーのベルの三人と一匹で四方から攻撃を加え、その間に手が空いた他の三人も遠距離から魔法で剣が届かない位置への攻撃をする。
この繰り返しだ。
倒したハイオークの死体は、証明部位だけ剥ぎ取ると、他の魔獣や普通の動物が血の匂いでやってこないように火魔法を使って燃やした。
今は影も形も残っていない。
その後は皆で魚を取ってそれを焼いて食べ、見張りの順番を決めて普通に就寝だ。
やはり、相当疲れていたのか皆ぐっすり眠っている。
ちなみに見張りの順番は、ルイス、ルーカス、ノア、俺、ライとセルティア王女だ。さすがに王女様を一人にするのはまずいと考え、ライとセルティア王女は二人でする事になった。
まあ、他のメンバーが王女さまと二人だと話出来なくて気まずそうだし。
俺も今日は相当疲れたのか睡魔がひどい。
こういった演習みたいなのは仕事の方でも良く経験していたけど、こんな大人数は経験ないからな。
俺も気づかないうちにどこか緊張していたのかもしれない。
「んッーー!」
「おつかれ。相当眠たいみたいだね。」
大きく背伸びをしていると、テントからライがやってきた。
「どうした?まだ時間じゃないぞ。」
「うん。ちょっと君と話してみたくてね。」
「そうか。そういえば俺も聞きたいことがあったわ。」
「なら丁度良かったよ。平民同士、仲良く話そうか。」
そういうと、ライは俺の隣にあった大きな石に座った。
深夜の森で二人の男が焚火を囲む。
川のせせらぎと木が燃えてパチパチと鳴る音が耳に入ってくる。
「・・・・」
「・・・・」
(パチパチッ!)
「・・・・」
「・・・・」
(パチッ!パチパチッ!)
「・・・・」
「・・・・」
あれ?
「あの、何か聞きたいことがあったんじゃ?」
「君からでいいよ」
今の間に動じないこの余裕は何だ?すごいな・・・。
「じゃあ遠慮なく。」
俺は脇に置いていた枯れ木を焚火の中に入れながら言う。
「ライは確か小さい頃に王女様と仲良くなったって言ってたよな?」
「そうだよ。」
「キッカケは何だったんだ?普通、平民が王族に会ってしかも仲良くなる機会なんてないだろ。」
これはクラスメイトの事を調べ、資料にまとめていた頃から気になっていたことだ。
「やっぱりそのことか。出会ったのは九年前、お忍びで旅行に行っていたセルティアたちの馬車が、その帰り道で盗賊に襲われたみたいでね。もちろんセルティアたちは無事だったけど、馬車は壊れて動かなくなってしまった。馬車を直すにも時間がかかるし道具も足りなかったから、たまたま近くにあった俺たちの村に来たんだ。もちろん、身分は隠してね。」
ライはポツリポツリと語る。
「俺はそこの村長の息子だった。うちの親はセルティアたちの事情を聴いて、野宿するぐらいなら泊っていかないかと提案して馬車が直るまでの数日間一緒に生活することになったんだ。」
国王の性格を知っている身からすると、実にあり得そうな展開だ。
「同い年だったこともあって、俺とセルティアが仲良くなるのに時間はかからなかった。セルティアはお城での生活しかしたこと無かったからか、俺のする遊びがすべて珍しくて面白かったんだろうな。その数日間はずっと一緒に過ごしてた。」
「たしかに・・・それなら、王女の記憶にも・・残るだろうな。」
ヤバい、超眠たくなってきた。
「次は俺の質問って言いたいところだけど、その様子だとまた今度だね。」
うつらうつらしている俺を見て微笑みながらいうライ。
「もう休んでいいよ。そろそろ交代の時間になるし。」
「悪いな。」
俺は大きなあくびをして立ち上がり、テントの方へ歩いて行く。
「おやすみ、ラスト。」
「ああ、おやすみ。」
俺は一応王女の護衛のためにこっそり召喚獣を出し寝袋に入る。
よし。これで、もし王女を狙う侵入者がやってきても対応できるだろう。
そのまま目を閉じるとすぐに眠れた。
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