一年A組 第四班 3
演習で使われている山は首都のポルックスから少し南に下った所にあるカペル山脈の内の一つ。
この山には遺跡があり、その調査の為に何度も調査隊が送られていた。よって、この山一帯のことは一通り調べられており、植物の分布や魔獣の生態系も把握されていることで、毎年この山は学園の演習に使われている。
この山にいる魔獣は最大ランクでもC-のハイオークだ。ほとんどはEランクの魔獣でたまにDランクの魔獣を見かけるくらい。
つまり俺たち第四班にとっては、道すがらで出会うここの魔獣はたいして障害にならなかった。
「ラストは左の奴を頼む!」
「分かった。」
俺とノアは目の前にいる二体のブラックウルフ目掛けて駆け出す。
名前通り、黒い毛並みをした狼の魔獣だ。もちろん二人とも身体強化はかけている。
「グァウ!」
ブラックウルフが噛みついてきたが難なく躱し、その首を一撃で落とす。
ノアの方を見るがほとんど同じようにブラックウルフを倒していた。
後ろを見ると他のメンバーが展開していた残りのブラックウルフを相手取っている。
「お願い!ベルちゃん。」
「ガウ!」
ルイスは召喚魔法でサーベルタイガーを呼び出し二体のブラックウルフに応戦している。
サーベルタイガーはブラックウルフにとって明らかに格上だ。
そんな相手に睨まれては成す術もない。
怯んで動けないでいる所にライが魔法、ルーカスが剣で攻撃し二体を倒す。
そして、セルティア王女は少し遠くに居た三体のブラックウルフに魔法を飛ばす。
「アイスランス!」
空中に十本の氷の槍が生まれ、一斉にブラックウルフに飛んでいく。
「キャン!」
ブラックウルフは避けようとするが、その避けた先にも氷の槍は飛んできており三体を一瞬で倒してしまう。
「流石に上手いな。」
地面や木に当たり、氷付けになった場所を見て言う。
「そうだね。どこに避けても当たるように考えて魔法を打ってる。ああいう人が居ると安心して後ろを任せられるね。」
「そうだな。」
俺たちはブラックウルフから討伐の証明になる部位を剝ぎ取って他のメンバーと合流する。
「うん。みんな問題はないようだね。」
「そうね。あなたも思ったより動けるようで安心したわ。これなら仮にハイオークが出てきても普通に倒せそうね。まあ、会わないでしょうけど。少しは見直してあげてもいいわよ。」
「・・・どうも。」
褒めたつもりだろうが、そんな鼻にかかる態度で褒められても素直に喜べない。
「ラスト君が想定より動けたのは僥倖だ。」
「ほんとビックリだよ。剣術のレベルもそうだけど、戦闘慣れしてる事とか特に。一体なに者なの?本当にただの平民?」
くっ!こいつ勘がいいな。
「じ、実は住んでた村には良く冒険者がやって来たことがあって、その人に剣術は教えてもらっただけだ。戦闘慣れしてるのも村によく出る獣の相手をしてたからだよ・・・。」
別に言ってることもあながち嘘ではない。実際に冒険者に教えてもらうこともあった。
「・・・そうなんだ。ならその冒険者の教え方がうまかったんだね。良かったら今度手合わせしてよ!」
「ああ、今度な。」
村を思い出したことで少し心に影が差す。
あれから三年が経過したが、未だにあの日の光景が頭にこびりついている。
しかし、俺はただ一つ、何故か兄さんの最後のだけ靄がかかったように思い出せないでいた。
まるで心が事実を拒絶しているように。
何か言っていた気がするが、やはり思い出せない。
何か複雑な事情があることを察したのか、ノアがそれ以上詮索してくることは無かった。
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