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ナイト・ラスト  作者: 伊藤 おさむ
・・・・
14/32

0章

※残虐的描写が有ります。




ついに物語が...

(そうか、ようやく終わったのか。)


 ナイトは、ボロボロの体を動かして張り付けにされていた父と母の死体を下ろし、メアリと一緒に進化した勇者の力で治して寝かしてあげる。


(やっぱり、勇者の力も死者をよみがえらせるなんて都合のいい力じゃないよな。)


「ごめん。父さん、母さん。メアリも、つらい思いさせてごめんね。」


 次にラストが横になっている場所へ向かった。


「ラスト。ラストのおかげであの魔族を倒せたよ。ありがとな。」


 ラストの頭をなでて、体を治してあげる。


 すると、ラストの指がかすかに動く。


「ッ!ラスト!」


 ナイトは必死にラストに呼びかける。


「・・・兄さん?」


 何度か呼びかけると目を開けた。


 ナイトは涙をこらえてラストを抱きしめる。


「良かった。俺は、あの時死んでしまったのかと・・・。」


「・・・ヒヒッ」


「ラスト?どうしたんだ?」


(なんだ?ラストの様子が・・・)


「え?」

 急にお腹に衝撃がきて熱くなる。


 下を向くと、ラストの右腕がナイトの腹を貫いていた。


 その手は黒い魔力を纏っている。


「ハハハッ。学べよ勇者!」


「・・・どういうことだ。お前は倒したはずじゃ?ラストはどうなってる?」


「単純だ。こいつの体を乗っ取った。」


(いつの間に・・・。仕組んだとしたら、最後にラストが吸収した攻撃か。)


「言っただろ?糸づくりが俺の力の本質じゃないって。俺の力は『傀儡』。こいつは俺が乗っ取らせてもらったわけだ。」


「最初からこれを狙っていたのか?」


「まさか。お前ごときが俺を傷つけられるなんて考えるわけないだろ。こいつはあくまで駒にしようとしてただけ。魔力吸収は便利だからな。」


 結果オーライだったなとラストの顔で魔族が笑う。


「お前は、どれだけ人を弄ぶんだ!死んだ人まで使って。」


「あ?!俺をクソネクロマンサーと一緒にすんな!誰が死体なんて汚ねぇもんに移りたがるかよ。」


 気に障ったのか、急に怒りだしナイトの腹に刺さした腕を動かしはじめた。


「ウッ!」


 体を激痛が走る。


 しかし、それよりナイトには気になった事があった。


「つまり、ラストは生きているんだな?」


「はッ!それがどうした?俺を吹き飛ばすぐらい出来るだろうが、こいつの体も持たないぞ。」


(確かに、勇者の魔力には魔族特攻のようなものがあるが、憑りついている魔物だけを祓うような器用なまねは俺には出来ない。・・・ハハッ。ここでもツケが回ってきたな。)


「それに、お前はもう死ぬ。」


 そう。腹を貫いた攻撃は致命傷だ。絶対に助からない。


(けれど、出来る事が何もなくなったわけじゃない。)


「ラストだけは絶対に助ける!『贈与ギフト』」


 腹を貫く魔族の腕を両手で握りしめ、スキルを発動する。


 俺の体が輝きだし、その光はラストに流れその体を包み込む。


「何しても無駄ッ・・・なんだと!」


 余裕を見せていた魔族は急に焦りだす。


 このスキルは本来魔力を渡したり、スキルを人に貸すスキルだが今回は違う。


「俺の勇者の力をすべて受け取れ。ラスト!」


(勇者の魔力には魔族を滅する力が宿る。それならこの方法でうまくいくはずだ。)


「このッ!」


「誰が逃がすか!」


 引き抜こうとする腕を必死に押さえつける。


「テメェ!」


 もう一方の手で殴りつけてくるが、握りしめる力は緩めない。


「ハアァァッ!」


「グッ、グアァッー!」


 体から発する光量が増し、辺り一帯も光に包まれていく。


 力が徐々に抜けていく。


 それと同時にラストが仄かに光を帯び、魔族の魔力も消えていく。


 パタリと光が止む。


「・・・ラスト?」


「・・・兄・・さん?兄さんッ!」


(どうやら正気に戻ったみたいだな。)


 ナイトは朦朧とする頭でどうにかラストの無事を確認し静かに抱きしめた。





「僕は、僕はッ!」


「いいんだ。・・・・大丈夫、気にするな。」


「兄さん・・・」


 俺はクシャクシャになっているラストの顔をみて笑い、優しくその頭を撫でた。


 そして、お腹に刺さるラストの腕を抜く。


「グッ」


「あッ!」


 ヤバい、急に力が抜けてきた。


 腕が抜けたことで、腹からドバドバと血が流れだす。


「兄さん!兄さん!」


 ラストの声が聞こえる。


 ああ、俺は死ぬのか。


 話したくても、もう声が出ない。


 最後の力を振り絞り、口を動かす。


「ラスト。―――――。」


 霞む視界で雨粒を弾く水たまりを捉える。


 そういえば、一度目の人生で死んだのもこんな雨の日だったな。


 まさか、一度目の人生より短い命になるなんて思ってなかった。


 せっかくの二度目の人生。


 やりたいことも沢山あったし、結局家族と向きあえなかった。


 望みはほとんど叶わなかったけど、どうしてだろう。


 不思議と後悔はない。


 二回死を味わっても、生きる意味なんて分からなかったけど、



 ―――生まれて良かった。


 そう思えるだけで心は満たされた。  


 瞼が重くなり、世界から光が消える。


 今度の闇は少し暖かかった。




ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

サブタイトル通り、ここからがこの物語の主人公「ラスト」の物語がはじまります。

急ぎでここまで辿り着かせたいがために、一話ごとの分量が多くなる事もありました。申し訳ございませんでした。

読むのも大変だったかと思いますが、ここからひとまず落ち着きます。落ち着かせます...



これからも、「ナイト・ラスト」をよろしくお願いします。


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