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ナイト・ラスト  作者: 伊藤 おさむ
・・・・
13/32

悪夢 4

※残虐的描写が有ります。

 やめろ!やめてくれ・・・。 


「ほら!ちゃんと逃げろよ。間違って殺しちまうじゃねーか。」


 目の前では魔族がラスト目掛けて魔力弾を放ち、ラストはボロボロの体で逃げ回っている。


 いつラストは殺されてもおかしくないが、魔族は明らかに手加減をして遊んでいた。


 ブラッドグリズリーとの戦闘で既に消耗していたラストは時々つまずいて魔力弾に当たってしまい、体のあちこちには傷がある。


 体力の限界が近いのか、また転んでしまう。


「あっ!」


「お、今のは危なかったな。」


「兄・・さん・・・。」


「ラストッ!」


 どれだけ抜け出そうと藻掻いても、体を縫い付ける糸からは出られない。


「ヒヒッ。無様だなぁ~。面白いこと教えてやろうか?お前の両親を殺したのはお前の妹だ。」


「っ?!」

「俺が手伝ってやってな!最高だったぞ。謝りながらも、その相手をいたぶるように殺す姿は。出来るだけ時間を掛けて殺させたからか、すぐ壊れたのはいただけなかったが、十分楽しめた!」


「黙れ!クソッ・・・・クソっ・・・」


 どうして俺がこんな目に俺が合わなくちゃいけない。


 一度目の人生は理不尽で殺され、二度目の人生はこれからだって時にこれかよ。


「どうしてこうなるんだ。転生者はチートで最強でこんな奴簡単に倒せるはずだろ!俺の何がいけないんだよ。何が違うんだ。俺が前世で何かしたか?!こんな目に合わせるために俺は転生させられたのか?誰か教えてくれよ。」


「なんだこいつ。もう壊れたのか?まあいいか。そろそろ飽きてきたし、この遊びも終わらせるとするかね。」


 ラストへの攻撃を止め、その手をこちらに向けてくる。


 魔族の手に魔力が収束しはじめる。


「じゃあな。」


 その魔力が身動きの出来ない俺に向かって放たれた。


 ほんとに、どうして・・・。


 俺は抗う事を諦め、瞳を閉じた。


 しかし、一向にそのときはやって来ず、不思議に思って目を開ける。目の前には、ボロボロで今にも倒れそうな背中があった。


「え?どうして・・・。」


「・・・僕にも守らせてよ。」


「まさか、魔力吸収持ちだったのか?・・・ヒヒッ。」


 再び魔力弾を放つもラストがそれを吸収する。


「ラスト!」

 限界を超えて吸収したことで、体のいたるところから血を流し、倒れるラスト。


 こちらに倒れてくるラストを不自由な体で出来る限り支えようと触れると、急に拘束が消えて動けるようになった。


「お前・・・。」


「・・・兄さん。僕も兄さんの役に立てたかな?」


「ああ、もちろんだ!」


「なら・・よかった。」


 そう言うとラストは静かに目を閉じる。


「・・・ラスト?・・・ラストッ!」 


「さて。邪魔が入ったが、ようやくお前の番だな。楽しませてくれた礼に、一瞬で消し飛ばしてやるよ。」


 魔族の魔力の高まりを感じる。


 正直、ラストが庇った時に、どうしてまだ抗うのか理解できなかった自分がいた。


 状況は絶望的。


 ここで庇っても殺される順番が変わるだけだ。それでも、ラストは諦めずに自分が出来ることをした。


 理由はただ、俺のことを信じていたから。


 なんだよ。俺よりよっぽど『勇敢な者』じゃないか。


 横たわっているラストを見る。


 確かに、俺は勇者の力を持っている。


 けど、ただ持っているだけだ。


 俺自身は力から目をそらし、前世に捕らわれたままの人間。


 俺はいつの間にか、この世界を自分の都合のいい世界だと思っていたんだ。


 この力があればどうにでもなると。


「そりゃ、こうなるよ。何もしなかったんだから。」


 結局、中身はあの頃と変わらない俺のまま。前世と何も変わっていない。


 いや、もしかしたら現実を見て絶望していた前世より、現実から目をそらし、願望だけを掲げて生きている今世の方がたちが悪いかもしれない。


「こんな状況にならないと気づけなかったなんて情けないなぁ・・・。」


 俺は立ち上がり、聖剣を構える。


「今からでもまだ間に合うかな。いや、ここで諦めたらこれまでと何も変わらないか。」


 俺も、ラストを見習うよ。


 そう思うと体から不思議と力が湧いてきた。


 体が仄かに輝きだす。


「何しようと無駄だ。死ね。『黒糸星雲ダークネビュラ』」


 魔族が攻撃を放ち、圧倒的な魔力の塊が飛んでくる。


 明らかに死は免れないだろう攻撃。


 だけど、今なら何とか出来る気がする。


 体がまぶしい程輝き始める。


「目覚めろ、聖剣エクスカリバー。」


 白銀の刀身が黄金色に染まりだす。柄の装飾も少し豪華になったように感じる。


 黄金の刀身に光が集まり、それを向かってくる黒い魔力に放った。


 そして一瞬の拮抗の後、黒い魔力は黄金に飲まれていく。


「なんだと!?」


 そのままの勢いで聖剣を構えて魔族に突っ込む。


 瞬時に魔族は片手に魔力の糸を纏い、防御する。


「クソが!」 


 こちらの攻撃を片手では防げそうもなく、もう一方の手にも魔力の糸を纏わせ両手で対抗してくる。


 振り下ろした聖剣にさらに力を込める。


「ハアァァ!」


「ッ!」


 聖剣はその魔力糸を腕ごと切り落とした。


 そのまま切り上げるように一撃を放つ。


「これで終わりだ。『魔滅光刃エクスカリバー』ッ!」


 ゼロ距離からの攻撃は魔族を切り裂き、その体を消滅させた。


 上がっている息を整える。


 雨が水たまりを弾く音に、パチパチと木が燃える音が耳に入ってくる。


 そこでようやく、俺は戦いが終わったことを実感した。




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