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ナイト・ラスト  作者: 伊藤 おさむ
・・・・
12/32

悪夢 3

※残虐的描写が有ります。

 

「・・・どうなってるんだ。」


 俺とラストは異変に気が付くと、全速力で村に向かった。


 そして村に入り、目に入ったのは血で真っ赤に染まったタイルに雨に打たれる無残な姿の死体の数々。


「ダイさんッ・・・」


 ラストはさっきまで一緒に魔獣討伐に参加していたメンバーの死体を見つけ、言葉を失っている。


 本当に何が起こったらこんな事が起こるんだ。明らかに魔獣の仕業じゃないし、常人に出来るような事でもない。


「・・・狂ってる。」

 俺たちはこの先に待っている、これより酷いだろう光景に戦慄を覚えながら、この地獄を突き進む。


 どこまで進んでも、燃える家とどこかを欠損してる死体が常に目に入ってくる。


 そしてある光景が視界に入った瞬間、俺たちは同時に足を止めた。


「ッ!」


「えっ?なんで・・・」


 視界の先には体の関節があらぬ方向に曲がり、腕や足を切り落とされた父さんと母さんの死体が家の壁に貼り付けにされていた。


 そしてその近くには、全身に返り血を浴びた異形がいた。


「お前何してる!」


「あ?まだ生き残りが居たのか?」


 思わず口に出した言葉に返事が返ってくるとは思っておらず、俺は少し驚いた。


 その人間なのか魔獣なのか分からない生き物どうやら会話は出来るようだ。


 こちらを振り向いたことで、ようやくその顔を見る。


 ん?ファルシさん?いや、ファルシさんがこんな真似するわけないし、あの角や目は何だ。


「・・・お前はいったい何なんだ?」


「ん?俺はなぁ、魔族だ。・・・お前らはパニクらねぇのかよ。つまんねえな。まあ、ちょうど玩具も壊れたし、次はお前らで遊ぶか。」


「何を言って・・・」


 こいつが勇者の物語で出るような魔族。いや、まて・・・それより、まさかあれは!?


 魔族の視線を追うと、そいつが魔族であることがどうでも良くなるほどの衝撃を受けた。


「メア・・リ?」


「え?」


 そこには白いワンピースを血やススで汚したメアリの姿があった。まだ息はあるようだが、その目は焦点が合っておらず虚空を見つめている。


「え?お前らこいつの知り合いかなんか?」


「妹だ!お前、何をした!」


「妹・・・ヒヒッ!ほんと、お前最高だな。」


 そう言うと、その魔族は乱雑にメアリの髪を握りしめ、まるで俺たちを見せつけるように顔を動かした。


「おい、ガキ。良かったなぁ。お兄様方がお前を助けに来てくれたみたいだぞ。」


「お・・・お兄・・ちゃん?」


「メアリ、大丈夫か!」


「お兄ちゃん!」


 メアリは魔族を振りほどき、よろけながらも必死に足を動かして向かってくる。


「おにいぢゃん!」


「メアリ!」


 俺も走り出し、涙を流すメアリを抱きとめる。抱きしめたメアリからは確かに体温を感じた。


 メアリはちゃんと生きてる。


「良かった。本当に良かった。」


「うん、うん。感動の再開はいいもんだなぁ。でも、こっちの方が面白いと思わねぇか?」


 ペチャッ


「あれ?」


 急に雨が酷くなったな。それに、なんだ?急に視界が真っ赤になった。


「兄さん・・・うヴッ」


 隣ではラストが俺の顔を見て、吐き気を催している。


「おいおい、兄さんの顔を見てそれは酷くないか?メアリもそう思うよな?・・・メアリ?」


 何も反応しないメアリに嫌な気配がし、恐る恐るメアリの顔を確認しようとした。


「え?」


 しかし、何故か見当たらなかった。


 首から上が無くなっていたのだ。


「ヒヒッ!どうしたお兄様?良かったじゃないか妹を救えて。ほら、こんなに幸せそうな顔してるぞ?」


 そしてその頭を何故か手に持ち、見せびらかす魔族。


「おまえぇぇぇっ!」


 怒りで頭が真っ白になった俺は叫ぶ。


「顕現せよ!聖剣カリバー」


 現れた白銀の長剣を両手で握りしめる。


「あの時の光はやはり聖剣だったか!そしてお前が今代の勇者。やっぱ最高だわ!こいつ、メアリっていったか?最後まで玩具として役立ってくれるとは。」


「黙れぇ!」


 俺は瞬時に肉体強化を使い全力で駆け出す。


 怒りのままに剣を振るうが、魔族はそれを容易く避け続ける。


 そして隙を見て放たれる魔力弾を防いでいると、気が付けばこちらが防戦一方になっていた。


「おいおい!さっきまでの威勢はどうしたんだ?ん?俺が何したか教えてやろうか?」


「くそっ!」


 なんでだ!俺は勇者だぞ。世界を救う力を持ってるはずなんだ。どうしてこんな魔族に手間取ってる。


 こいつは、父さんと母さんを弄び、メアリを目の前で殺したんだぞ。これから家族と向き合おうって決めたのに。


「お前、勇者の癖に弱いな。力を使いこなせていない。その様子だと魔族と戦ったことさえないな?」


「そんなにホイホイ魔族に会って堪るかよ。」


「あ~やっぱりか。魔族の気配を感じなかった時点で、もしかしたらと思ってはいたが、どうやらあの頃から随分変わったみてぇだな・・・。」


 魔力弾を打つのを止め、何か呟きながら考える仕草をする魔族。


 その隙を逃すはずもなく、俺は魔族に突っ込んだ。


「初心者勇者に教えてやるよ。魔族はそれぞれの魔力に特徴があってな。」


 そう言うと、魔族はさっきのように魔力をそのまま放出するのではなくその形状を細く長くする。


 そして、鉄線のようになった魔力はその右手を覆い隠すように腕に巻きついた。


 俺の振り下ろした聖剣はその鉄線を纏い、まるでドリルように回転した腕で防がれ、鍔迫り合いに持ち込まれた。


「俺の魔力はこうやって強靭で殺傷力のある糸を生み出せる。本来暗殺向きなんだが、使い方次第ではお前みたいな前衛タイプの奴とも真正面から戦えるってわけだ。まあ、そもそも糸づくり自体応用で俺の魔力の本質はそこじゃないんだがな。」


「くッ!」


「ヒヒッ。この様子だと、それを知ることは無いだろうがな。」


 どうしてこっちは両手なのに、片手で競り合ってる魔族を押し込めないんだ。それに、腕の糸も硬くて切れない!


「ガっ!?」


 空いている方の手で横腹を殴られ、家の瓦礫に叩きつけられた。


「クソッ!」


 素の拳でもこれだけの威力があるのか。肉体強化が無かったら、今ので死んでいた。


「やっぱ勇者は丈夫でいいな。壊れにくいオモチャ。嬲りがいがあるねぇ。」


 瓦礫から立ち上がると、再び魔族は魔力弾を打ってきた。さっきと同じように剣で防ごうとしたが、威力が増しており剣が弾かれてしまい何発も被弾してしまう。


 このまま防ぎ続けても先に倒れるのは俺だ。


 ならここは、一か八か近づいて大技で一気に倒す!


 そう決めると俺は多少の被弾は覚悟の上、致命傷になる魔力弾だけを弾きながら突っ込んだ。


「今だ!聖―――」


「させるかよ」


「え?」


 体が動かない。


 まるで糸で縫い留められたように急に動けなくなった。


 いや、まるでじゃない。よく見ると剣や体のいたるところから魔力の糸が伸びて地面に繋がれていた。


「さっき説明しただろ?俺の魔力は糸を作れる。さっき打ってた魔力弾はな、ただの魔力弾じゃなくマーキングだったんだよ。こうやって、糸をつなげるためのな。思い通り動いてくれてありがとな。」


「ッ・・・」 


 無理やり抜け出そうともがくも、力ずくでは抜け出せそうもない。


「さて、今からお遊びと行こうか。」


 誰がお前のお遊びに付き合うかよ。


 そう思って睨んだが魔族はこちらを見てニヤリと笑うと、コチラではない方向へ歩いていく。


「え?」


 そこには、顔を真っ青にして膝をついていたラストがいた。






作者のやる気に直結しますので、よれば高評価、ブックマーク登録、感想等よろしくお願いします。

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[気になる点] そう思って睨んでいたが魔族はこちらを見てにやけると、違う方を向いて歩いていく。 【若気る】(にやける) 男性が女性のようになよなよして色っぽい様子 鎌倉・室町時代に男色を売る若衆を…
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