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ナイト・ラスト  作者: 伊藤 おさむ
・・・・
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悪夢 2

※残虐的描写が有ります。

 ナイトが森へ飛び出して行った後、一部を除いて村人たちはナイトの行動に驚いて固まっていた。


 そして、一番の衝撃を受けていたのは警備隊長だった。


 隊長はその一部であるノスタルに聞いた。


「あれは、本当にナイトか?お前は知っていたのか?」


「何か隠し事があるのはなんとなく気づいてはいましたけど、こんなに強いとはさすがに思ってなかったです。ただ、俺はあいつがラストを見捨てるなんて有り得ないと思っただけですよ。」


 ノスタルはナイトが隊長と対峙した時には既に、剣を取りに向かっていた。


「ちなみにシンさんは知ってたんですか?」


「俺も何か隠し事があるのはなんとなく気づいてはいたよ。ナイトはあまり真面目に剣の練習はしないけど、興味がない訳じゃなさそうだった。むしろ人一倍興味があったみたいだったけど、何か迷いがあって積極的にはしないようにしてたって感じだったからね。でも、センスはあったがまさか隊長を倒すほどの力があるなんてな。」


「あいつ、あれで完全に隠せてると思ってますからね。」


 ノスタルは親友の向かった森の方を眺めて笑う。


「さて。あいつが行ったなら不思議と何とかなる気がしますけど、俺たちは俺たちで一応やることはあるんじゃないんですかね?」


「確かにな。」


 ノスタルに言われ、衝撃から立ち直って自分の役職を思い出した隊長。


「シン。他の奴らと連携して村人たちに避難の用意をさせろ。用意出来次第、この広場に集まるよう伝えてくれ。それと、ノスタルはスキルを使って近くの町に伝令に行ってもらう。そのつもりで準備してくれ。」


「「はい!」」


 ノスタルとシンもさっきの浮ついた様子から切り替え、警備隊の一員として話を聞く。


「ナイトのあの様子だと、ブラッドグリズリーからラストを連れて逃げることは出来ると考えていいだろう。俺たちはその前提で動くぞ。」


 隊長がそう言うとシンは他の警備隊メンバーのところへ向かい、ノスタルも身支度を整えるために行動を始めた。


 広場の野次馬たちも各々、避難の準備をするために急いで家に戻っていった。


 村人たちの間に緊迫感が漂い始める。


 村人たちは忙しなく動き、五分ほどで広場にポツポツと準備を終えて集まってくる姿が見受けられ始めた。


(それにしても、嫌な天気だな。)


「隊長。準備完了しました。」


 降り始めた雨に嫌気が指していると、隊長の前に機動力を重視した軽鎧を身につけたノスタルが来た。


「おし、お前にはプロプスに行って冒険者ギルドに依頼を出してきてくれ。プロプスまでの道は分かるな?」


「はい。問題ありません。」


 ジェミニカ王国最東端の都市、プロプス。この村から一番近く、周辺の村や町から多くの依頼が舞い込む王国有数の冒険者の町である。


 この村に魔獣と戦える力を持った人が集まりやすいのもプロプスが近くにあるからというのもあるだろう。


「詳細はこの紙にまとめておいた。あそこなら有名な冒険者も何人か滞在しているだろうからブラッドグリズリーの討伐依頼でも受ける冒険者は居るはずだ。」


 隊長はノスタルの準備中に用意させておいたメモを渡す。


 それから二人は他の確認事項について話した。


「ファルシさん!?」


 二人が話していると、ダイの驚く声が聞こえてきた。


 聞こえてきた名前にきな臭さを感じ、ノスタルはどうするのか確認するように隊長を見る。


 隊長も感じたのかノスタルと目が合うと意を決するように頷き、二人はダイの居る門の前まで駆け付けた。


「ファルシさん!無事だったんすか?」


 そこには全身に傷を負い、普段着ていた高そうなローブも雨で泥が跳ねたのか汚れ、ボロボロになっているファルシの姿があった。


 ダイは涙を流しながら嬉しそうに駆け寄る。


「良かった・・・本当に無事で良かったっす!」


「・れ・・・・るな。」


「ん?何すか?」


「俺にチか寄ルナ!」


「ちょっと、何言ってるんすか!?」


「ダイ!そいつから離れろ!」


 ファルシの尋常ではない様子に警戒心を抱き、ダイに注意を促す隊長。


「え?」

 しかし、その注意も空しく終わった。


 ダイの背中から不自然に伸びる真っ赤な手。そして、ファルシのような何かはダイを埃を払うかのように振り払う。


 地面に転がったダイを見るノスタル。


「ひぃっ!」


 ノスタルはその虚ろな目を見て思わず声を上げてしまった。


 その悲鳴と沢山の血を流して動かないダイを見て、広場に集まっていた村人たちも目の前で人が死んだ事を理解した。


 みな恐怖に顔を真っ青にしている。


「・・・ヒヒッ、アッヒャヒャヒャァ!」


 そんな中、ファルシらしき者は場違いにも楽しそうに笑う。


「お前は誰だ!」


「あん?」


 唯一、ファルシの挙動に警戒心を抱いていた隊長は顔を真っ青にしたノスタルや村人たちを庇うように前に出て、それに対峙する。


「お前は何なんだ!ブラッドグリズリーはどうなった!」


「ん~わざわざ言う必要はねーが、そっちの方が面白そうだしいいか。」


 そういうとそれは全身から禍々しい魔力を解き放つ。


 それに伴い、ファルシらしき者の体にも変化が表れた。


「そうだなぁ・・・。お前らに分かりやすく言ってやろう。俺はこいつの体を乗っ取った魔族だ。それとあの熊は、こいつのお仲間に向かわせてやったよ。」


 結膜は黒く染まり、体の所々を亀裂のようなものが走る。


 伸びた爪に不自然に発達した筋肉。そして、その頭に山羊のような角が生える。


 その変化は嫌でも目の前の存在がもうファルシではない存在だと理解させられ、動けなくなかった村人たちもパニックを起こし、我先にと逃げるように門の方へ向かう。


「おい、待て!」


「ヒヒッ、やっぱ言って正解だったわ。ただ、こっちは久しぶりのシャバだ。せっかくの玩具を見逃すなんてそんな勿体ないことするわけねーだろ。」


 止めようとする隊長の声も聞こえない村人たち。


 魔族はそんな村人たちの様子を見て面白がって笑いながら、逃げる村人たちの先頭にいた青年の頭を指先から飛ばした魔力弾で吹き飛ばす。


「きゃああぁ!」


「さぁさぁ!無様に逃げ回って、俺を楽しませてくれ。」


 先頭の男が殺されたことでパニックは更に酷くなり、村人たちはそれぞれがバラバラの方向に逃げはじめ、下敷きになってしまう人も出てきた。


 魔族はイタズラするように逃げ惑う人々に魔力弾を飛ばし、時々逃げ道に魔法で炎を放って遊んでいる。


 そして、ノスタルは未だに恐怖から動けずにいた。


「ノスタル・・・ノスタル!」


 そんなノスタルを隊長が肩を揺らし、無理やりにでも気を取り直させる。


「今から急いでプロプスに向かって魔族が出た事を伝えてくれ。」


「・・・え?」


「いいか?これはお前にしか出来ないことだ。分かるな?」


 ノスタルの理解が追い付いていないのもお構いなく、隊長は捲し立てるように言いたいことを伝える。


「え、あッ。でも、そしたら村のみんなは!?」


「・・・もうそう言ってる場合じゃないんだ。頭のいいお前なら分かるだろ?これはこの村だけの問題じゃない。」


「おいッそこ!なに逃げられる前提で話を進めてんだよ。逃がすと思ってんのか?」


「さっさと行け、ノスタル!」


 魔族はこちらの会話に気づき魔力弾を放ってくるが、隊長がスキルを使ってそれを防ぐ。


「クソッ、防御系のスキル持ちか。」


 気だるげな態度の魔族に対して、隊長は内心とても焦っていた。


(これでもスキルは上位の防御系なんだが、一発防ぐのがやっとか!)


「行け!」


「めんどくさいから、お前から消すわ。」


 魔族は眼でどうにか捉えられるスピードで隊長に近づくと、首を掴み持ち上げる。


「ぐっ!」


 隊長は足を浮かせた状態で苦しみながらも、ノスタルに目で訴えかける。


 ノスタルは必死な隊長をみて、悔しそうに頷くと何らかのスキルを発動したのかその気配が薄くなっていく。


「だから、逃がさないって言ってるだろ。」


 魔族は空いている手をノスタルに向け魔力弾を打とうとするが、そのタイミングで東の森に光の柱が現れた。


「グッ!なんだよ、あの嫌な感じがする光は。まさか・・・いや、そんな事あり得んのか?・・・なっ!」


 光の柱に気を取られていたうちに、ノスタルの姿は消えており気配を追うのも困難な状況になっていた。


「ハハッ、ざまーみろ。」


「゛あ?」


「ッ!」


 今まで余裕を見せていた魔族は隊長の発言に初めて怒りを見せ、首を掴む手に力を入れそのまま握りつぶしてしまった。


「チッ、クソが!ゆっくりと苦しめて殺そうと思ってたのに台無しじゃねーか!」


「ひッ!」


「あ?」

 八つ当たりをするように手に握っている男の死体を、近くの家に投げつけると、逃げ遅れたのか広場に残っていた『手に籠を持った白いワンピースの少女』が目に留まった。


「ヒヒッ。いい遊びを思い付いた。」


 魔族はその少女を見て、いやらしい笑みを浮かべた。





作者、胸糞性的虐待系は嫌いなので、そういった描写はしないことを明言しておきます。

一応ね。

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