プロローグ
ローレティカ大陸の西に位置する大国、ジェミニカ王国。
一人の少年が王都にそびえ立つ城の一室に呼び出されていた。
赤い絨毯の敷かれた大理石の廊下を歩く。
壁は白く、廊下の至る所に高価な置物や花が飾り付けられており、その城の豪勢さが感じられる。
一つのドアの前に止まると少年は木製の重たい扉をノックする。
「どうぞ。」
「失礼します。」
部屋に入ると、正面に三十代前半くらいの美しい女性がデスクに座って書類仕事をしていた。
その女性は書類仕事を一度やめて、ペンを置く。
「やあ。来たか、英雄君。」
「その呼び方はやめてくださいっていつも言ってますよね。」
英雄君と呼ばれた少年は顔を少し歪ませる。
「いいじゃないか。事実なんだから。」
「・・・本当にそう思っている人なんてそんなにいないですよ。」
少年は暗い表情を浮かべて自嘲するように言う。
「少なくとも私は本当にそう思っている。」
そんな少年を、女性は真剣な目で真っすぐ見つめて主張するが少年には届かない。
その暗い表情は変わらない。
「はぁ~。まだ、受け入れるのは難しいか。」
女性は少年に聞こえないくらいの声で呟いた。
「君は、三年前から変わらないね。」
「あれからもう、三年も経ったんですね・・・。」
「うん。三年経った。私にはあっという間だったけどね。」
女性は座っている椅子を回して窓の外を見る。
女性の背の壁には大きな窓が付いており、王都の景色がよく見える。
時間はまだ昼間。
天気も良く、青い空が広がっていた。




