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竜星魔神王~星の巫女。リリルを求めて~  作者: すみ いちろ


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17/31

17話。旅の始まり。②

「ねぇ、パトト爺ちゃん。これから、どうなるの?」


 満天の星空に、時折、流れ星が(かけ)るイシュタールの大平原。その端に位置するこの場所。

 夜のタモタモの森が、まるで大きな口を開けて待っているかのように、深い深い暗闇が森の奥へと続いていた。

 魔物の毛皮とウミルの縫製技術で創られた簡易式の白いテントが、パトト爺ちゃんの炎の魔法(マギア)(いぶ)される魔物の干し肉とともに照らされている。

 私とパトト爺ちゃんとジャンゴの三人で焚き火の炎を囲むようにして、草木が低く覆い茂る地面に腰掛けていた。

 焚き火の炎のおかげで、冷たい地面が温まっている。


「おそらく、リリルの中に眠る風の(ステラ)が、他の五大陸に存在するそれぞれの『(ステラ)』──『星の巫女』や『星守り』たちへと伝達しておるはずじゃ。星は星を呼び新たな世界を創生する。前にも言ったが奴らが手に入れようとしておるのは──、」


「──私たち? (ステラ)の力?」


 パトト爺ちゃんの目と白いお髭が炎に赤く照らされている。

 ジャンゴの青い瞳にも炎が映り、お腹も減ってヘトヘトのジャンゴは、まだ(いぶ)してる途中の分厚いお肉を真っ先に手に取って口に頬張った。


「(ハモハモ……) 魔人(デモニオ)の奴らを全員ぶちのめさねぇと、終わらねぇのか? 師匠」


「グワハハハ!! よくぞ言った!! そう言うことよ、ジャンゴ!!」


 パトト爺ちゃんも、まだ燻してる途中なのに、酔ってるのか勢いよく分厚いお肉を手に取り、ムシャムシャ!と、食べ始めた。

 二人と違って、お腹の弱い私はちゃんとお肉が燻されるまでは待とうと想う。とっても、お腹が空いてたけど。

 お腹の音が鳴るのは仕方なくても、ジャンゴにだけは聞かれたくない。

 私は、クルクルと指先で自分の髪の毛を触りながら、ぎゅっと膝を抱えた。


「世界は、滅びるの──? パトト爺ちゃん?」


 私は、顔に両膝を(うず)めたままパトト爺ちゃんに尋ねた。

 炎の魔法(マギア)で燃える焚き火が、パチリパチリ──!と音を立てている。


「ふーむ。そうじゃの。魔人どもの棲む『中央魔大陸デモンズバレー』とワシらの住む『(ステラ)五大陸(ペンタクル)』との均衡が崩れつつある。もしも、このまま放っておけば魔人どもに制圧されるの?」


 パトト爺ちゃんが、酒瓶を手に取って、グイッ!と口飲みしたような音が聞こえた。

 顔を上げた私の目に、お酒と焚き火の炎で赤く火照った顔のパトト爺ちゃんが、分厚い大きな手で、口もとと風に揺れる白いお髭とを一緒に拭っていた。


「だから、俺が強くなってリリルを守ってやんなきゃだよな! 師匠っ! 酒っ!!」

「おー! ジャンゴよ、一杯いっとくか?」

「ダメだって! パトト爺ちゃん! ジャンゴも!!」


 別に何才になってないからって、飲んじゃいけないワケでも無いけど、酔っぱらいが二人も増えたら困る。

 それに夜だし。

 タモタモの森の入り口手前だけど、いつ魔物とか魔人(デモニオ)とかが襲って来るか分からないから。


 (そう言えば、洞窟で戦ったあの時の魔人(デモニオ)って、何処に行ったのかな──?)

 

 ジャンゴが握って飲もうとしてたパトト爺ちゃんの酒瓶を、私はグイッ!とジャンゴから奪い取った。

 私の姿を見て、グワハハハ!!──と、大笑いしているパトト爺ちゃんの声が満天の夜空に響く。

 

 魔人(デモニオ)中央魔大陸(デモンズバレー)に封印してた(ステラ)の力が弱まっている今、世界中の何処に居ても危険だ。

 もしかしたら、ジャンゴやパトト爺ちゃんが一緒に居てくれるこの場所こそが、私にとって世界で最も安全な場所なのかも知れない。


「洞窟で戦った魔人(デモニオ)って、まだ近くに居るのかな?」


「ん? 奴か? おそらく、奴は中央魔大陸(デモンズバレー)に帰ったところでお尋ね者。かと言って、他の大陸に渡ろうにも風以外の(ステラ)は健在で奴を弾く。つまり、この風の大陸の何処かにおる」


 お酒に酔ったパトト爺ちゃんが地面に酒瓶を置いて、ゴロンと寝転がった。


「次、アイツと会う時は負けねぇ。いや、負けないまでも、リリルを守りきる」


 燻されたお肉をもう一枚、片手に取ったジャンゴが、金色の髪の毛を月明かりに光らせて、星空を見上げるようにしてバクリ!と口に頬張った。


「わ、私も、風の魔法(マギア)とか、覚えなきゃだね……」


 ジャンゴに守りきるとか言われた私は、なんだか恥ずかしくって。

 赤く燃え上がる炎を見つめながら、火照った顔を隠すようにして、充分に燻されたお肉を手に取り、パクッ!とかじり付いた。

 お腹の中に染み渡る旨み──。

 ──私は、ウミルの村で汲んでおいた井戸水を沸騰させてから、冷めた頃合いを見計らってゴクン!と飲んだ。渇いた喉にも染み渡る。お水は貴重だから、また確保しとかなきゃって想う。


「魔人どもは人の魂を奪う。ゆえに、永き時間を生き長らえる。しかし、魔人どもを信仰する輩たちもおる。その名も『黒魔導衆』──」


 満天の星空を見上げるパトト爺ちゃんが、また気になることを言った。


「んだよ、それっ!? 『黒魔導衆』?」

「え──っ!? そ、そんなの居るの!?」


 驚いたジャンゴと私は、口々にそう言った。


「厄介なのは魔人どもと違い、(ステラ)に弾かれることなく、それぞれの大陸に紛れて生活しておる。火、水、土、風──、それ以外の禁忌とされた黒の魔法(マギア)、『(ヴィオ)』を使う」


「「『(ヴィオ)』──!?」」


 私とジャンゴの目が焚き火の炎に揺れている。時間が止まったかのように、私とジャンゴは顔を見合わせた。


「魔人ども及び黒魔導衆の討伐と殲滅──。そのために生み出されたのが、ワシら『光』の技を使う『光錬成師(ルースマスター)』じゃ」


 そう言ったパトト爺ちゃんの言葉の後に──、

 夜のタモタモの森から、ガサリ!──と、音を立てて何かが倒れるような音がした。


「え、な、何!?」

「リリル!?」


 月明かりの下で蠢く影──。暗闇から何かが這い出ようとしている。

 慌てて立ち上がった私とジャンゴを他所に、パトト爺ちゃんが、むくりと、ゆっくり起き上がった。


「来たか──」

 



 


 




 



 

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