14話。ジャンゴと私とパトト爺ちゃんと。
「うーん……。(ウロウロ……)ウーン……。(ウロウロ……)ハァ……──」
耳の尖った緑色の顔をしたジルおじさんが、額に汗を流し顔をしかめながらヒィコラ言って、裸のジャンゴを二階にある私のお部屋のベッドまでなんとか運んだんだけど──
ジャンゴは丸裸で、ジルおじさんの服で包まれてるだけ。
私は、どうしたら良いのか分からなくて、お部屋の中をウロウロ……。
ハァ……。溜め息が出る。
「リリルちゃん、後は、よろしく頼む! 俺も、作業場の方に戻るわ!」
「ちょっ! ジルおじさんっ!?」
「んじゃ……!」
(──バタン……)
そう言い残して、ジルおじさんは、お家の玄関の扉を閉めて村の作業場の方へと戻って行った。
「あぁ……。もぅっ! どうしたら良いのよー……」
私は、栗色のウェーブした自分の髪の毛を、クルクルと指先で巻きながら、ベッドで寝てる裸に近い格好のジャンゴを見つめた。
「と、とりあえず、お布団かけとこうかな? アハハ……」
寝息を立てて眠るジャンゴ。
よほど、疲れたのか、ピクリとも動かない。
(──それにしても、綺麗な肌……)
ジャンゴの褐色の肌が、キラキラと輝く。
頭の灰色の髪の毛を残して、ジャンゴの毛むくじゃらの毛が、全部抜け落ちている。
まるで、私と同じような姿。ジャンゴは男の子だけど──
(──へぇ……。男前になっちゃって……。ハッ! い、イケない……。お、お布団、お布団──……と)
サッパリとしたジャンゴだけど、私のお布団の中に入れるのは、やっぱり抵抗がある。
ズクズクに汚れているわけでもないけど、前みたいに変な匂いもしないんだけど──
まぁ、仕方がない。ジャンゴは、とっても疲れているみたいだから……。
「リリル……」
「えっ!?」
目を閉じたまま、スースーと寝息を立てて眠るジャンゴが、一瞬、私の名前を呼んだような気がした。
そして、しばらくすると──
「好き……」
「えーっ!?」
今度は、ハッキリと聴こえた。
「えっ!? えーっ!!?」
私は、びっくりして、お部屋の床に尻もちをついた。
前まで、床に敷いてあった『世界の地図』は、何かあったらイケないし、怖いからパトト爺ちゃんに丸めて渡してある。
けど──
「じゃ、ジャ、ジャン……ゴ?」
ある意味、ジャンゴが、キングベヒモスになった時よりも、びっくりした。
(……え──? 嘘?)
私は目を丸くして、とっても驚いていた。
びっくりしたまま、床に尻もちをついて、立ち上がれない。
私は、栗色のウェーブした自分の髪の毛をクルクルと指先で巻きながら、ボーッとベッドの上で眠るジャンゴを見つめていた。
すると、突然──
(──……リリル、嬉しい……)
風のお星様の声──
私の小さな胸の上で服の中から、パァァ……と青色の光が、輝いていた。
「い、いや、今は何も言わなくても良いよ……。お星様……。アハハ……」
私は床に尻もちをついたまま、独り言のように呟いた。
なんだか、恥ずかしかった。
眠っているジャンゴに、さっきのお星様の声が聴かれてないかなー……なんて、心配しちゃうけど、お星様の声は私にしか聴こえないはず。
そう想ってたら、お星様の青い光がスー……と、私の小さな胸の上から消えて行った。
「ふわぁぁ……。あー……。ん? ここ、どこ?」
ジャンゴが、目を覚ました。
ベッドに寝たままの状態で、私のお部屋の天井を見つめるジャンゴだけど、寝ぼけているのか、まだ私に気づかない。
「ん? リリルの、部屋? ん? んー……? えっ!? 毛、毛が、な、無いっ!? え? 顔の毛だけじゃなくって?」
ジャンゴがベッドからガバッ!と、上半身を起こして、毛の無いツルツルとした自分の身体を見つめながらサワサワと触っている。
ジャンゴが急に私の方へとグルン!と首を向けた瞬間、ジャンゴの大きな瞳と私の目が、突然バチッ!と合ってしまった。
「リ、リリルっ!?」
「は、はいっ!!」
急に、ジャンゴに名前を呼ばれて、私は身動きが取れなくなった。
「み、見てくれよっ!!」
そう言って急に、ベッドの上で立ち上がった裸のジャンゴ。
もちろん、ジルおじさんがジャンゴに掛けてくれた上着は、ジャンゴが立った瞬間にハラハラ……と、床に落ちてしまった。
「キャァァァーッ!!」
「う、うわっ!? お、俺、裸じゃんっ!?」
「──っ!!」
見えてしまった。
指の隙間から。
裸そのままのジャンゴの姿を。
咄嗟に手で顔を覆った私だったけど、ちゃんと隠しきれなかった。
流石に風のお星様も、この時ばかりは何も言わずに光らなかった。
「リ、リリル……? み、見た──?」
「み、見て、ないっ!!」
私の顔が、耳まで熱くなる──
毛の無い裸のジャンゴの姿が、瞼に焼き付いてて離れない……。
「ふ、服! 服っ!! ジャンゴ! 服、着てっ!!」
私は、ジャンゴから恥ずかしさで目を逸らしたまま、床の方を見つめる。
「え!? ふ、服っ!? って、服が、無ーっ!!」
そう叫んだジャンゴが、ゴソゴソとベッドの上でお布団に包まる音がした。
チラリと、ジャンゴの方を上目遣いで見ると、お布団から顔を出したジャンゴの姿が見えた。
バサバサの灰色の長髪がジャンゴの顔を覆っている。
「ちょっ! ジャンゴ! 待ってて!!」
そう言った私は、ドンドンドン!と、木の階段を駆け下りてパトト爺ちゃんの服をガサゴソ──。
でも、パトト爺ちゃんとジャンゴじゃ、服のサイズが合わないって言うか何て言うか……。
私とジャンゴは同じくらいの背の高さだけど、パトト爺ちゃんは、私やジャンゴよりも小さい。
けど、私の服をジャンゴに着させるのは、すんごく抵抗あるし……。
「──うーん……」
腕組みしながら、片方の手で、栗色のウェーブした髪の毛をクルクルと指先で回す私。
(ん? そうだ──!)
私が、顔を上げると──
暖炉のあるこのお部屋の壁に飾ってある、パトト爺ちゃん特製の鎧兜が視界に入った。
「これだっ……!!」
私は、突然、閃いたように二階にいる裸のジャンゴに大声で叫んだ。
「ジャンゴぉーっ!! 降りてきてーっ!!」
「──……え? な、何!? お、俺は、は、裸なのに……──?」
二階にいるジャンゴの小さな声が、聴こえた。
「もちろん、お布団に包まっててよぉーっ!?」
「……お、おぅ……」
もう一度、私がジャンゴに大きな声で叫ぶと、ジャンゴは何だか恥ずかしそうに返事した。
(トン……トン……トン……。ズルズルズル……──)
ゆっくりと、お布団に包まり引きずりながら、ジャンゴが木の階段を降りる音が聴こえる。
裸のジャンゴが、雪ダルマみたいにお布団から顔を出して、私の前に現れた。今は、まだ時期的にイシュタールの大平原に雪は降ってないけど。
「ジャーン……!!」
「え? こ、これ、鎧じゃねぇかよっ!?」
私は、暖炉の壁に飾ってあるパトト爺ちゃん特製の鎧兜を、両手でヒラヒラさせながら、ジャンゴに見せてみた。
「いつも、見てるヤツだけど、コレってパトトジジィのサイズじゃ無ぇ……。普通サイズだよな? リリル?」
私のお布団に包まりながら、不思議そうな顔で私を見つめるジャンゴ。
「うん。そだよ? ジャンゴには、ちょい大きめかもだけど?」
「じ、直に着るのかよ……」
そう言ったジャンゴが、ズルズル……と、私のお布団を引きずりながら、壁に飾ってある鎧兜へと近づき、マジマジと見つめる。
「お? これ、鎧の裏側に布とか何かの魔物の毛皮とかが、貼り付けてあるぜ? コレなら着れるかも?」
そう言ってジャンゴが、私のお布団に包まりながら、片方の手で鎧兜の感触を確かめている。
「気に入ったぜっ!! パトトのジジィにゃ悪ぃが、今は臨時だ! 仕方ねぇ!! なぁ、リリル? なんか、俺の身体を巻く布とか無い? やっぱ、なんだかんだ言って直接鎧着るのは、アレだから……」
「んー……。ちょっと、待ってて!」
私は、お家の奥からウミルの村の人たちが織った長い織物を出して来る。
ウミルの村では、魔物とかじゃない普通の植物の繊維から創る織物技術がある。
綺麗な模様の織物。
けど、今はジャンゴに着せるものが、この鎧兜以外ないから、仕方なくジャンゴにその織物を手渡した。たぶん、下着代わりに身体に巻きつけるんだと思うけど……。
「あっち向いててー」と言うジャンゴの言葉どおり、私はジャンゴと反対方向に向いて、しばらく立って待っていた。
ジャンゴが、何かゴソゴソとしている……。
「えーと。えーっと……。こうやって、巻きつけてだな……。出来た!!」
ジャンゴの言葉を聴いて、私が振り向くと──
器用に織物をグルグルと身体に巻きつけたジャンゴが、そこに立っていた。
「ジャーン!!」
「変なの……」
やっぱり、早く普通の服をジャンゴに着てほしい。私は、そう思った。
織物は、柔らかいけど下着じゃないし……。
織物をグルグル身体に巻きつけたジャンゴの姿が、しっくり来なさ過ぎて──鎧も、服じゃないけど、とりあえず、鎧でも何でも良いから早く着てほしかった。
「あー、とりあえず、もうその鎧で良いから早く着てくれない? ジャンゴ?」
「あー、もう、分かったって。確かに、このままじゃ、しっくり来ねーもんな。よっと! じゃ、この鎧を着てみますか……」
壁に飾ってあった鎧。
身体の動く関節部分は鎖状に出来てて、肩や胸、背中……お腹の部分にある金属状のプレートと繋ぎ合わされてて、とっても強そうな感じがした。
鎧の内側は魔物の毛皮なのか、何か柔らかそうな素材で覆われていた。
ついでに言うと、お股(恥ずかしい……)部分も、そんな感じに出来てて、鎧にしては動きやすさを重視した創りになってる感じだ。
「ヘヘーン!! リリルー? 似合う?」
そんな感じで、私に鎧姿を見せびらかして来るジャンゴ。
「わ、分かった、分かったってば! 似合う! 似合うよ? ジャンゴ……? アハハ……」
13才になったけれど、私の目の前で小さな子みたいに、はしゃぐジャンゴ。
浮かれてるジャンゴを見て苦笑いする私だけど、馬子にも衣装みたいなウミルの村の言葉どおり、ちょっとだけ勇者みたいに見えた。
勇者──?
そう言えば、そんな言葉が、大予言者ホーリーホックのお話の中にもあった気がする……。
星の巫女──守護者と勇者……? んー……。なんだっけ?
「『光刃錬成』!! 『竜人剣』……!! 『竜爪牙』!!」
「あー。はいはい……。パトト爺ちゃんの技ね? うんうん、格好いいと思うよ? ジャンゴ……?」
ジャンゴが、ガシャン!ガシャン!と、身につけた鎧の音を鳴らしてパトト爺ちゃんの真似をする。
本当に、パトト爺ちゃんみたいに出来たら格好良いと想うけど──何だか私には、ジャンゴが小さな子どもみたいに見えて仕方がない。
「行くぞ……? 『大錬成』!! 『光の鋼鉄球』!!」
ジャンゴがキングベヒモスになった時のパトト爺ちゃんの言葉を、ジャンゴが、そのまま真似して言った。
ジャンゴが、目の色をキラーン!と光らせながら灰色の髪をかき上げて構えを取る。
(あぁ……。聴こえてたんだ。キングベヒモスになったジャンゴにも……)
目の前で構えを取るジャンゴを見て、そう想ったけど──
なんか、ジャンゴが、それだけで収まりそうにない気配。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
ジャンゴが、ジャンプした瞬間。
ジャンゴは、暖炉のお部屋の天井に、ガツン!と頭をぶつけて──
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
着ている鎧の重みのせいか、ビッターン!と、お部屋の床にへばりついて落下した。
「ジャ……、ジャンゴ?」
恐る恐るジャンゴに近づく私。
栗色のウェーブした髪の毛をかき上げて、私がジャンゴの顔を覗き込むと──
ジャンゴが、ニヘッ!と笑って、亀みたいに鎧から出した顔を持ち上げた。
「ウヘッ! やっぱ、まだ、無理みたいだぜ?」
そう言って、ニヤニヤ笑うジャンゴの顔が、おかしくて──
私は、想わず吹き出してしまった。
「プッ! ご、ごめっ! ジャンゴっ!! い、いや、カッコ良かったよ?」
「……笑いこらえてるじゃん? リリル?」
「アハハハハハ!! ご、ごめん!! ジャンゴ!! 信じてるよっ!?」
「ガハハハハハハ!! だよなっ!! 任せろよっ!!」
ジャンゴと笑いあって、そうこうしてたら、お日様がいつの間にか山の向こうに沈んでて──
夕方から夜のお星様の見える時間になっていた。
──────……☆……───────
(──ガチャ……。バタン──!)
ジャンゴと笑いあった後、晩ご飯でも食べようかと想ってたら──
お家の玄関の扉が急に開く音がして──
懐かしいような久しぶりのしわがれた低い声が、お家の中まで響いて来た。
「フン!! おーいっ! リリルっ!! 帰って来たぞっ!!」
「はいはーいっ!! 今、いくーっ!!」
パトト爺ちゃんだ。
パトト爺ちゃんの低くて太いしわがれた声に、お家の中全体が揺れるようだ。
久しぶりのパトト爺ちゃんの帰宅。
「あ、ジャンゴは、ここで待ってて?」
「お、おぅ!?」
(トン……トン……トン……!)
ジャンゴを私のお部屋に待たせて──とりあえず、私はパトト爺ちゃんのいる玄関へと、木の階段を急いで降りた。
「パトト爺ちゃん!! お帰りーっ!!」
昼間と同じ格好だけど、久しぶりにお家に帰ったパトト爺ちゃんの姿を見て私は、想わずパトト爺ちゃんに抱きついてしまった。
「お、おぅ……。リリルちゃん? い、いや、リリル!」
酔ってる様子も無いのに、想わず私のこと──リリルちゃん?なんて呼んだパトト爺ちゃん。
ちょっと、可愛げがある。
けど、着ていた作業着も、昼間のジャンゴとの爆発のせいでボロボロ。
もちろん、自慢の白いお髭も焦げて短くなったままだ。
パトト爺ちゃんの匂いと感触に癒される……。
けど、お家の玄関にいるパトト爺ちゃんへと、直ぐさま駆け寄ったのは、私だけじゃなかった。
ジャンゴもだった──。
(──ガチャン!ガチャン! ガシャン!! ズシャアァァ──……)
鎧を着たままのジャンゴが、ガチャガチャと音を立てて、パトト爺ちゃんの目の前で、あり得ないことに──、いきなり土下座をした……。
「パトトのジ……じゃないっ!! パトト師匠っ!! お、俺を弟子にしてくださいっ!! よろしくお願いしまっす!!」
鎧姿のまま、パトト爺ちゃんに土下座をしているジャンゴ。
パトト爺ちゃんが、お腹の上で揺れる焼け焦げて短くなった白いお髭の上から、ギョロリ……!とジャンゴを睨みつけて見下ろしている。
「フン!! リリルっ!! 飯と酒!! あるかっ!!」
「え、え? ジャンゴ? え? ば、晩ご飯? お酒? ジャンゴの創ったキングベヒモスのお肉なら、あるよっ?」
「出せっ!!」
「は、はいはーい! って、え? ジャ、ジャンゴは?」
私は戸惑いながら、帰って来たばかりのパトト爺ちゃんとジャンゴの目の前で、どうしたら良いのか分からなくなって、バタバタとした。
「話は、後でする……。リリル! 酒と飯っ!! ジャンゴ! 顔を上げろ……」
パトト爺ちゃんが、そう言ったもんだから、私はいそいそとお家のお台所に行こうとした。
「フン!! キングベヒモスの魔力に耐えたか……? ジャンゴ……。リリル! 酒飲んで飯食ったら寝るっ!! 明日以降に、ウミルの村を出発じゃっ!! 旅に出るっ!!」
そう言ったパトト爺ちゃんが、ドカドカ!とお家の中に入ったかと思うと、ファイアーブレスドラゴンの血で出来た強いお酒を、床から樽ごと片手で拾い上げて、グビグビ!と一気に飲み干した。
それにしても、旅──? 旅って?
「プハ──!! まぁ座れ、ジャンゴくん? ウィ、ひっくー! おぉぅっ!? その鎧っ!! 気に入ったか? 似合ってるじゃねぇか? ガハハハハハハ!!」
「は、はい……。どうも、師匠……。(い、いつも酔うと、こうなのかっ!? パトトのジジィ!! いや、師匠……。なぁ、リリルっ!?)」
バンバン!!と、鎧の上からパトト爺ちゃんに叩かれているジャンゴ。
ジャンゴを叩くパトト爺ちゃんの姿に、ジャンゴが困った目で何かを私に訴えかけている……。
パトト爺ちゃんは、軽く優しく叩いてるだけかも知れないけれど、たぶん物凄い力だと想う。
なんせ、パトト爺ちゃんは、バカ力だから……。
けど、でも、ジャンゴが耐えてるのは、それだけパトト爺ちゃんの創った鎧が凄いってこと?
それとも、ジャンゴの身体能力が凄いってこと?
「師匠……? ガハハハハハハ!! お前が、ワシの弟子になるのは百万年早いっ!! だが、貴様のその意気込み! 買った!! まあ、ワシの空になった酒を注げっ!! お前も飲むか? 話は、それからだ!! ガハハハハハハ!!」
「は、はぁ……。(リリル! パトトのジジィ、ヤバくねぇかっ!?)」
またしても、パトト爺ちゃんに、バンバン!鎧の上から背中を叩かれているジャンゴ。
ジャンゴが私の方を、やっぱりチラチラ見て来るから、私は晩ご晩を樹のテーブルに並べながらウインクしておいた。
よく分からないけれど……。
けど、旅?
パトト爺ちゃんの言ってた言葉が気になる。
そう言えば、風のお星様も他の仲間たちを救ってほしいとも言ってた気がする。
風の洞窟で──
樹のテーブルにキングベヒモスのお肉と、木で出来た飲み物のコップを置いたけれど、早くもファイアーブレスドラゴンの血で出来た強いお酒を飲まされそうになっているジャンゴ。
「今夜は、祝杯じゃわいっ!! キングベヒモスの肉とファイアーブレスドラゴンの血で出来た酒を飲むと──ジャンゴ!! 貴様は、どうなるのかのっ!? ガハハハハハハ!!」
「や、やめろよ! ジ……じゃないっ! 師匠っ!!」
「ガハハハハハハ!! そん時は、ワシが貴様を征伐してくれるっ!! リリルちゃんに、手出し出来んようになっ!!? ガハハハハハハ!!」
いや、そっち──?
チラリとジャンゴの方を見ると、ジャンゴも困った目で私を見て来る。
このウミルの村じゃ、13才は、子ども以上の大人未満な微妙な年齢だ。
ちょっとだけ、昼間のことを想い出して──私は、なんか顔が火照っている気もした。
ジャンゴも俯いて──なんか、恥ずかしそうにもしていた……。




