9話 遅刻
やばいやばいやばいやばい。
遅刻だ遅刻だ。
里騎太は焦りつつ最低限の力で走っていた。
里騎太は大学に入館するためのパスキーを家に忘れてしまい、そしてあと20分で電車が出発してしまう。
普段徒歩なら片道15分の距離。林太郎が本気で走ると片道7分といったところ。
もちろん里騎太なら2分を切ってもおかしくない。
しかしそれは周りを気にしない事とする。
「遅刻はやだもんなぁ。」
里騎太は遅刻をしてでも周りに気を使って大学に行くか、ちょっと本気を出して遅刻せずに行くか…
「きゅ、究極過ぎる…。」
人生で1度も遅刻をしたことの無い里騎太にとって遅刻は大問題。
里騎太は長々と迷った結果…
ググッ…ドガン
足に力を込めつつも完全に溜め込まずに一気に解放した。
勢いよく放り出された身体の体勢をコントロールし、着地した瞬間反対足を思いっきり蹴る。
その際地面が柔らかかった気が来たが振り返る暇などなかった。
三段跳の要領で走…跳び、家に着いた。
里騎太は急いで部屋にパスキーを取り、母に送っていくか?と聞かれたが着替えて居なかったので諦めてすぐに家を出た。
「な、なんとか間に合った。」
電車出発まで残り5分。
里騎太はささっと改札を通り、ホームで待っていた。
ブッブーブッブーブッブー
里騎太はズボンに振動を覚え、手を突っ込むと林太郎から電話がかかってきていた。
「もしもし?どしたのさ。」
「ん?あぁ、今日講義無くなったよ。俺後ちょっとで電車乗るから合流しようぜ。」
里騎太は返事をしようとしたタイミングで電話が切られてしまった。
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「おまたせ。」
俺が電車を降り、ホームで待っていた里騎太と合流した。
里騎太はなんか疲れていたので事情を聞きながら改札へ向かった。
「え、お前本気で言ってる?」
「え?」
里騎太が忘れ物するのはよくある。だからそこに関して驚くことはもう無い。
がしかし、本気を出したは話が違う。
俺は帰り道がいつもの光景と変わっているのではないかととても心配だった。
「なぁ、どーすんのこれ。」
俺の心配したことは予想通りだった。
道の真ん中に大きな穴が5発空いていた。
一定の間隔が開けてある。
恐らくこの間隔は…
「なんか地面が柔らかいって思ったんだよね。」
俺は勢いよく頭を叩いた。
やってくれたよ、コイツ。
三段跳で地面に穴開けちゃったよ。
「お前もうさ、三段跳で地球が滅ぶくらいなんだから勇者諦めて破壊神になろうな…。」
里騎太は俺の話は聞こえておらず明日のネットニュースのおもちゃになる心配をしていた。