表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
78/257

78 呪いの呪い

 エンベルトとジェラルドが訓練?エンベルトのジェラルド実験が行われる場所へとやって来たランドとレナータ。


「ほら見てくださいよこれ!属性弓ルナヌオーヴァ!かっこ良くないですか?」


 倒れたジェラルドを覗き込んでいるエンベルトへと駆け寄ったレナータは、たった今購入してきた自慢の属性弓を見せつける。


「すごく真っ黒だね……なんだか平面に見えるし物体じゃないような感じがする」


 ルナヌオーヴァを覗き込んだエンベルトもこの不思議な見た目の弓に興味津々だ。

 ジェラルドは長時間の雷撃による拷問を受けて身動きとれないようだが。

 レナータはいつものように踏み付けながら回復スキルを発動する。


「属性弓というか呪いの武器だけどな。ブレイブはなかなか面白い奴しかいないようだ」


 ランドの言葉にエンベルトも固まり、レナータの顔を見つめるが「いいだろ」と言わんばかりの嬉しそうな表情を向けている。

 呪いの武器や呪いの装備は時々店先で売られている事もあるのだが、基本的には呪いと呼ばれるだけあって装備した際のデメリットが大きい為、エンベルトも苦笑いで返すしかない。


「でも呪いって言っても反動で体力が奪われるだけだから大丈夫ですよ」


「それはダメージを受けるって事だけどね。すごく大きなデメリットだと思うよ。まあ君はクレリックだし自分が平気なら別にいいかな」


 エンベルトにも別にいいと言われて「むふふ〜」と満足そうなレナータ。

 呪いの属性弓とはいえ出力は魔力次第のはずであり、クレリックのレナータであればそれ程高くはない。

 それならば問題はないだろうと判断したエンベルトは魔力の引き出し方について説明する。

 とはいえエンベルトがレナータの体内から引き出した魔力を認識して、属性魔法として発動する訓練をするだけなのだが。


「そんなわけでちょっと体に触る事になるけどいい?君が認識しやすい位置まで引っ張り出す事にもなるんだけどね」


「エンベルトさんならまあ変な事はしないでしょ。お願いします」


「俺もしないが」と呟くランドは無視してさっそく魔力を引き出す事にする。

 レナータの腹部に指を触れたエンベルトはそのままみぞおちのあたりまで指を移動させた。


「どうだろ。魔力を今お腹から少し引き出してるんだけどわかる?」


「いいえ。でもお腹がムズムズするような?」


 認識できないならとエンベルトは指の位置を移動し、胸の間、首、頭、右肩、右手、左肩、左手と移動するも認識できず、右足へと移動するとようやく認識する事ができた。


「普通は集中しやすい部分で認識できるんだけどね。なんで足なの?」


「たぶん足で回復する事多いからですかね。ジェラルドは普段から踏みつけながら回復しますからね、さっきみたいに」


 すでに回復を終えたジェラルドは、エンベルトがレナータに指先を触れているのを羨ましそうに見ていた。


「ジェラルドをこんな理解不能な生物に育てたのは君か!」


「いや、エンベルトさんは理解できてますよね?俺とは逆の生物ですよね?間違いなく甚振るのが大好きな変態ですよね?」


 この問いに殺意を返すエンベルト。


「変態ではないけど甚振るのは好きだよ」


 完全に否定はできなかったようだ。




 しばらくレナータの足に魔力を集中させてしっかりと魔力を認識させると、また魔力を移動して放出する事になる左手へと移動。

 やはりレナータの体を這う指先に視線を集中させるジェラルドは羨ましそうな表情をしていたが。


 その後エンベルトが指を離しても左手に魔力を維持できるようになったレナータは、左手から右手へと移動する練習を始める。

 それを何度も繰り返し、腹部に戻すと再び引き出す練習をする。

 最初にエンベルトが引き出した事で多少の苦戦はしたものの、魔力を認識できるようになったレナータはそう時間をかける事なく操作できるようになった。


「じゃあ次は属性弓を持って呪属性を発動してみようか」


「ついにルナの出番!あ、ランドさんも長弓教えてくださいね!」


 左手に持った属性弓で魔力を集中させて呪属性を発動。

 呪闇をイメージすると言われても難しいのだが、目眩しの黒いモヤ、黒い湯気みたいなものかと考えれば何となくではあるがイメージできる。

 左手にある魔力が呪属性に変換され、イメージ通りの黒いモヤが手元に集中すると同時に、全身から嫌な汗が噴き出るほどの虚脱感に襲われる。


「反動がきたみたいだね。その状態で回復スキルは使える?」


「む、り、みたい……です」


「じゃあ解除。回復して」


 呪属性魔法を解除すると膝から崩れ落ちるようにして座り込むレナータ。

 すぐさま回復スキルを発動して体力を回復させる。

 ほんのわずかな時間で回復を済ませた事からレナータの法力値が相当なものだと判断したエンベルト。


「訓練すれば呪属性の反動も回復スキルで相殺できるだろうから大丈夫そうかな。今後は手元で呪いを発動するんじゃなくて、魔力を乗せた矢が当たったところで発動ね。それと呪いは解除するまで続くみたいだからちょっと特殊な魔法みたい。うん、おもしろい。今度はジェラルドに呪いを……」


「やめてくださいよ!さすがに呪いは怖い!」


「ジェラルド……だめ?」


「え……レナータがそう望むなら呪いにも耐えてみせる」


「ジェラルドを矢で射るのか。盾で受ければ弾かれるだろうから丸太でも用意するか」


 恐怖の実験がまた始まるようだ。




 その後はレナータは長弓の練習や呪い発動の練習をしながら、ジェラルドの雷撃耐久訓練とランドの槍術の耐久訓練の回復を行い、なかなかに充実した一日を過ごす事となった。


 ランドの教え方が上手いのかレナータは長弓を使用してかなりの距離を正確に的を射る事ができるようになり、この日一日だけでも器用値が上昇したのではないかと思われる。

 また、呪いを乗せた矢を遠距離でも発動する事ができるようになり、離れた位置にある木に呪いを発動すると、矢を覆い隠すように黒いモヤがかかり、葉が枯れ落ちるという現象を確認できた。

 呪いは体力というよりも生命力のようなものを消失させる能力なのかもしれない。


 そしてエンベルトの実験に付き合わされたジェラルドだが、完全に雷撃を防ぐ事はできないものの、プロテクションが魔法スキルへの耐性をもつように成長を遂げ、エンベルトの加減した雷撃にも耐える事ができるようになっていた。

 これにはエンベルトも驚き、「本当に耐えれるようになるとは思わなかった」と本音をこぼす。

 耐えれなければただの拷問でしかないのだが、エンベルトは自分の言葉の意味を理解していないようだ。

 ランドの槍術に対しても物理的な攻撃に驚く程の耐久力をみせ、ピアーススキルによる貫通の能力は盾をも突き抜けて衝撃が加えられるはずなのだが、プロテクションが強化された為かガイアドラゴンの盾がピアーススキルを相殺。

 正面からの攻撃にしっかりと耐えられるようになっていた。

 さすがにエンベルトとランドもこの変態の成長には驚きを隠せない。

 元々それなりのガーディアンであったはずのジェラルドが、王都最強パーティーの二人から見ても充分な耐久力を持つガーディアンだと認識する程に成長したのだ。

 そんなジェラルドに「俺の教え方が上手いから」とエンベルトとランドは二人揃って自分に称賛の声をあげた。


 そして最後にジェラルドへの呪いの実験が行われ、切り出した丸太を抱えたジェラルド目掛けて矢を射るレナータ。

 この日初の全力で呪いを発動し、二人同時にその場に倒れたが死ぬ事はなかった。

 反動も含めて思った以上に呪いの威力は高いようだ。

 しかし人間相手でその威力だとしても、体の大きなモンスターであればそこまでの威力は発揮できないだろうというのが聖銀二人の見解である。

 それでも充分な能力であり、レナータの回復速度があればパーティーの重要なサポート役になれる事は確実だ。


 ブレイブの二人はこの日一日で大きく成長を遂げる事ができたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ