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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
31/257

31 買い物

 翌日の昼過ぎ。


「遅ーい!今日はクエスト行かないつもり?」


 ギルドの待合席、または酒盛りをする為だけにあるような席で一人待っていたアリス。

 ディーノが昼過ぎになってようやく姿を現した事に少しご機嫌斜めのようだ。


「あー、悪い。昨夜ちょっとな。今日はなにかクエスト受注してから買い物とかするか。あと、昨日の埋め合わせに店の予約とって来たけど、晩飯一緒に行けるか?」


「もしかして高級なお店?」


 ピクンと反応したアリスの表情は固い。


「そう、だけど嫌だったか?それなら他の誰か誘って……」


「行く!私が行く!」


 右手を挙げて元気よく立ち上がり、嬉しそうに笑顔でディーノに駆け寄って来た。


「じゃあエル。今日も何かクエスト頼む」


「え、今日も私を食事に誘ってくれないんですか!?この流れならエルもどうだ?って最初に聞くのが自然だと思いますけどっ!」


 ムッとした顔でそう返すエルヴェーラだが、やはりディーノは他の冒険者達に恨まれたくはない。


「何か良さそうなクエスト紹介してくれ」


「少しは考えて下さいよー!っもう……仕方ない……仕事だしな……じゃあこちら【ソルジャーマンティス】の殲滅をお願いしましょうか。数は百体以上との事ですので大変かとは思いますが」


 虫系のモンスターは基本的に数が多い為、討伐依頼ではなく殲滅依頼として発注される事が多い。

 数が数だけに殲滅達成は難しいクエストではあるものの、倒した数に応じた報酬は発生する。

 しかしある一定数の個体を残してしまうとまた新たなモンスターが増殖してしまう為、殲滅依頼が達成された場合と未達の場合とでは、報酬に雲泥の差がある。


「じゃあそれで」と答えるディーノはいつもの事であり、エルヴェーラもディーノであれば殲滅できるものとしてこのクエストを紹介している。

 受注処理が終わるとディーノとアリスはギルドを出て買い物へと向かう。




 買い物は回復薬の買い足しや日用品の購入。

 そして非常食は念の為買い替えをしておく。

 この非常食は多少期間をおいても食べる事はできるが、日数を重ねるごとに固くなっていく。

 買い替えには持っていた非常食と新しい非常食とを交換し、その差額分を支払うだけなので安く済む。

 買い替えられた非常食は、低級の冒険者や貧乏な者達が安価に買える為需要もある。


「これでまたしばらくは大丈夫だな。他に買うとすれば……あ、アリスの武器でも見に行くか」


「武器、ねぇ……まだどんなのを使えばいいのかわからないのよね」


 そう返すアリスの手には身長と同じくらいのロッドが握られている。

 武器として使う事はないが、持ち歩くと何かと便利なのだとか。

 新人冒険者の頃に棒術を多少習った事はあるそうだが、戦いに使えるような技術はないと胸を張って言うアリス。


「聖銀のエンベルトを参考にしようにも、あの人素手だしなぁ……」


「素手で最強のウィザードっていうのはわからなくもないけど。でも近接なのよね……」


 遠距離で魔法を放つウィザードは風のリングこそ使っているものの、手から魔法スキルを放出する為素手という扱いだ。

 アリスのようにロッドを持つのは咄嗟に受ける、払い除けるなどの緊急用武器となる。


「ん?素手で近接が強いなら武器に刃は要らないんじゃないか?」


 アリスのフレイムは制御をせずに放出した場合には、手が弾け飛ぶ程の爆発を起こす。

 しかし制御をしないフレイムは投げる事も風のリングを使って飛ばす事もできず、すぐそばで爆発を起こしてしまう。

 その為アリスは自分から距離が離れても爆発しない程度の威力に抑え、風に乗せて放つ事で炎の魔法スキルとして使用している。


「うーん、確かに全力でスキルを放てるなら要らないかも」


「ま、とりあえず見て気に入ったの買ったらいいんじゃないか?どれ買っても使えないんだし訓練するだけだろ」


「雑!属性武器は高いんだから本当に欲しいのじゃなきゃ買わない!」


「まずは見るだけ見ようぜ」と、以前ギルドで紹介してもらった属性武器を扱う店へと足を運ぶ。




 陽が傾いて空が赤く染まる頃。


「五件回っても気に入ったの無いとかマジか……」


「ディーノがそのユニオンを買った店にあった槍は好みだったけどね。属性が私のと合わないし」


 武器屋アルタイルにはディーノが購入したユニオンの一つ手前に槍が置いてあり、白金貨六枚という高額な物だったのだが、属性が氷という事でアリスの属性と合わなかったのだ。

「他に売ってるとこなんて知らないし、アルタイルでちょっと情報もらってくるか」と、またアルタイルへとやって来て店主に相談するが、他に属性武器を扱う店はこのラフロイグには無いとの事。


「うーん、これ綺麗で好きなんだけどな〜。属性がな〜」


「もうこれいっそ穂の部分外しちゃえばいいんじゃないか?そしたら属性関係ないし」


「いやいやいやいや、何を仰いますディーノ様。こちらはこれで完成形でございます。穂を外されてしまっては売り手のわたくしも職人に顔向けができません。しかし……本日二度も来て頂いてこのままお帰しするわけにもいきませんからね。その槍を作った職人をご紹介させて頂きますのでご相談なさっては如何でしょう」


 槍から穂を外せば石突きに小さな刃がある以外はただのロッドだ。

 しかし穂を外した事により、先端には不自然な穴が空く事になるのだが。

 属性武器職人に相談してとなればオーダーメイドとなるのだが、どうせ持つならアリスも気に入った物を購入したいだろう。


「じゃあ紹介してもらおうかな。儲け出なくて悪いけど」


「いえ、紹介料をあちらから頂きますので問題はありません。では、紹介状をご用意しますので少々お待ちください」


 店主は店のカウンターへと向かい、筆を取って紹介状を書き始めた。

 この後ディーノとアリスは夕食の予定がある為、明日以降に向かう事になるだろう。

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