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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
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25 ウィザード

 ラフロイグのギルドへと戻って来たディーノとソーニャ。

 出発前とは打って変わり、ソーニャは笑顔で受付嬢へと声を掛ける。


「クエスト終わったよ!」


「オレのクエストな」


 そうなのだ。

 これはディーノのクエストであって、ソーニャはそれに着いて行くだけという事になっている。

 それどころかソーニャは一時休暇中という事となっており、クエストに同行するのもおかしな話でもある。

 すごく微妙な表情でディーノを見つめ、一歩下がってクエスト報告を譲る。


「えーと、依頼達成お疲れ様です。ソーニャさん元気になりましたね。はっ!まさかとは思いますが……」


 顔を押さえてディーノに冷たい視線を送るエルヴェーラ。


「それはない。オレがそんな節操なしに見えるか」


「なんかはっきり否定されるとそれはそれでおもしろくないかも。私はこう見えて料理も得意だし家事全般も子供の頃からやってたからなんでもできるんだよ?それにほら!見て!可愛いでしょ!?超高物件なんですけど!?」


 何故かソーニャは自分を推し始めるが、このやり取りから(まぁないだろうな)とエルヴェーラもディーノの言葉を信じる。


「んん、確かにソーニャは可愛いしスタイルもいい。性格だって悪くない。これで気にならない男はそうはいないだろ」


「え?え?なんか急に褒められると恥ずかしいんだけど!」


 ディーノの言葉に両頬を押さえて照れるソーニャは、ここ最近罵られ続けてきた事もあって、褒められると嬉しいようだ。


「ただちょっとバカだけど」


「かしこいよ!」


 セリフは賢くなさそうだ。


「ふむ、ソーニャさんは恋愛対象とかではないんですか?今までパーティーを組んでこなかったディーノさんが、王都から来たソーニャさんを連れてクエストに行くからですね、多少なりとも噂になってるんですよ。好みだったんじゃないかとか、泣いてる弱みにつけ込んだんじゃないかとか、欲情したんじゃないかとかいろいろと」


 エルヴェーラが言うようにギルド内ではディーノが他の冒険者の同行を認めた事が噂になっている。

 そしてやはり見た目の可愛いソーニャを連れてクエストに向かったと聞けば、誰もが勘繰りたくなるのだろう。

 エルヴェーラはこの会話を他の冒険者も聞いているだろうと、噂を否定する為にもディーノに問いかける。


「恋愛対象とかまぁ別として……オレは仲間をそういう目で見ない事にしてる。パーティーとして自分の背中を預ける相手とは対等な立場でありたいだろ?」


 オリオンでもレナータに対してそんな目を向けた事は一度もない。

 兄であるザックからの教えもあり、冒険者に恋愛感情を向ける事なくこれまで過ごしてきている。

 色恋沙汰で問題を起こす冒険者は多いのだという話は、当時のディーノも納得のいくものだったのだ。


「他の冒険者さんにはよ〜く聞いてほしい話ですね。恋愛トラブルを起こす冒険者さんは多いですから」


 チラリとエルヴェーラが冒険者達へと目を向ければ、視線を別の方向へと向ける者達が大半だった。


 そしてこの話を聞いてかどうかは知らないが、奥の席に座り、一人で酒を飲んでいた女性が近付いて来る。

 身長はソーニャよりも高く、ブロンドのロングヘアに青い瞳、目鼻立ちの整った美しい女性だ。

 装備からウィザードである事がわかるのだが、機嫌が悪そうに声をかけてきた。


「ねぇ、ディーノ=エイシス!あなたの所属していたオリオン!どうなってるの!?パーティーに参加したら……もう、最っ低!なんなのよあのパーティーは!お試しにって向かったCC級クエストでさえ死にかけたわよ!」


 酒も入ってその勢いでディーノに文句を言ってきたのだろう。

 どうやらブレイブに臨時メンバーとして入ったウィザードのようだ。


「ああ、それは災難だったな。元仲間として謝罪するよ」


 素直を頭を下げるディーノに勢いを削がれたウィザードだが。


「うっ、あなたもあのパーティーにいたんだから大変だったのかもしれないわね……で、でも!オリオンのせいで私が命がけの戦いして来たんだから責任取ってよ!」


 ディーノが責任を取る理由も必要もないのだが、酔っ払いとはなかなかに面倒なものである。


「責任?何をすればいいんだ?」


「その子。その子を連れて行ったんだから私もクエストに同行させて」


 どうやらディーノとクエストに行きたいらしい。

 以前の勧誘地獄の時にも何度かディーノに同行を申し出た事があるのだが、パーティー組む気はないとあっさりと断られている。

 しかし今回元オリオンパーティーに参加し、命がけの戦いをさせられたのだ。

 ディーノにとってはただの難癖でしかないのだが、ウィザードもダメ元で言ってみる。


「んー……ああ、よし。迷惑掛けて悪かったな。まだ決めてないけど次のクエスト一緒に行くか」


 あっさりと許可がもらえた事に少し呆けるウィザードだが、ディーノとしてはギフトをまた試してみたいだけだ。


「え、いいの?え……嘘!?本当にいいの!?やった!私はB級ウィザードのアリス=フレイリア!よろしくね!」


「S級ウィザードシーフセイバーのディーノ=エイシスだ。よろしく」


「え、なんて?ウィザード、シーフ?セイバー?なんでそんなジョブ?」


 さすがにここまでジョブを盛った冒険者はまずいない。

 シーフセイバーやウィザードセイバーもいない事もないのだが、さらにもう一つのジョブもとなればまた別だ。


「属性剣を使うシーフだからウィザードシーフセイバー。風属性だからひたすら速度に特化してるけどな」


「そうなんだ。私は火属性だから被らなくていいかも……って、何?」


 ディーノとアリスの間に割って入るソーニャ。

 訝しげな表情でアリスを覗き込む。


「C級シーフのソーニャ=セルゲイだよ。美人だからってディーノを変な目で見ないでね。そういうの本当に困るから」


 誰がどう困るかは不明だ。


「安心して。私は男には興味ないもの」


「ふえぇ!?私が目当てなの!?」


「それも違うわよ!」


 臨時とはいえ賑やかなパーティーになりそうだ。

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