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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
233/257

233 闘技場

 聖銀とオリオンの戦いが決まった日から早十日。


 ただラフロイグに来てパウルと戦うだけのつもりが、随分と予定が狂ってしまったことから、ディーノはすでに調査済みという巨鳥の捕獲を二体済ませている。

 それと同じくパウルも国王から巨鳥の捕獲依頼を受けていたらしく、ディーノに合わせて二体捕獲済み。

 聖銀vsオリオンに向けてわざわざ捕獲数を合わせてくるあたりは対等だと思わせるためか。

 はたまた賭けのオッズを調整するためかはわからない。


 また、ギルド主催で大々的に行われることになったため、ラフロイグ領の領都から出た草原に簡易的な闘技場を作ってそこで開催することとなった。

 わずか十日で闘技場を作るのはそう簡単なことではなく、地属性魔法スキル持ちを集めて地均しと見物台を作った程度ではあるが、ひとまず形にはなっているので闘技場と言ってもいいだろう。

 ラフロイグ領都だけでなく近隣の領地や王都までの告知を済ませ、多くの露店も設置して準備は万端。

 見物台は全てが埋まり、ラフロイグでもこれまでにないほど多くの人々が集まった。


 金持ちや権力者用として天幕が張られた席が用意されており、一般民とは区画分けがされているのだが、その中でも一際豪奢な作りをした一角に座った人物から一言。


「其方らの戦い、楽しみにしておるぞ」


「なんで国王様がいるんですかね」


 何故かバランタイン聖王国国王がいた。

 余程のことがない限り国王が王都から出ることはないはずなのだが、ただの冒険者の戦いを観に来るのはおかしい。


「パウルが我の望むメガロスジェードスワローを捕獲してくれたのでな。美しい見た目だけでなく我々を乗せてどこまでも運んでくれる愛いやつよ」


 答えになっていないが。

 美しい見た目の鳥……周囲を見渡せば鮮やかな青緑色の羽毛を持った巨鳥が鎮座しているのが見える。

 あれに乗って国王他、国のお偉いさんがやって来たということか。

 他にもディーノが捕獲した巨鳥もいることから、他領のお偉いさん方も集めたのではないだろうか。

 と、いうことは……


「国王陛下、この度はお招きいただきありがとうございます。息子の戦いが観れると楽しみに参りました」


「うむ。其方には領地の復興もあるというのに、獣王国との交易にも苦労を掛けておるのでな。此度は存分に楽しんで行くがよい」


 セヴェリン伯爵も呼ばれたようだ。

 山吹色の天幕に目を向ければソフィアとエンリコも来ているのがわかる。

 ヴィタは……留守番なのか見当たらない。

 毎日各街へと足を運んで忙しく働いているセヴェリンなのだ。

 被害地の復興に加えて獣王国との交易も手掛けているとなれば、その忙しさはディーノには想像もつかない。


「義父様まで来てたんですね……」


「息子の晴の舞台に参らぬわけにはいかぬだろう」


 セヴェリンの言葉にうんうんと頷く国王を見るに、先日渡した書簡にはディーノを息子に迎えたことも書かれてあったのではなかろうか。

 忙しいなら観戦しに来なければいいのにとも思うのだが、たまには息抜きも必要なのかもしれない。


「晴の舞台って……こんな大事にするつもりなかったんですけど」


「いや、これは其方の力を世界に知らしめる絶好の機会。私は其方の勝利を信じておる。頑張るのだぞ。絶対に勝ってくれ」


 念を押されたな。

 普段の優しいセヴェリンなら無理をしないようにとか怪我には気をつけるようにとか言いそうなものだが……

 ん?

 あっ、もしかして賭けか!?

 復興資金を稼ぐ気か!?

 なんて義父なんだ!

 息子の戦いに金を賭ける気か!?とはさすがに言えないが一応聞いておこう。


「いくら賭ける気ですか?」


「……な、何のことだ。私は純粋に其方の応援をだな、しに来たのだぞ?」


 まあ誤魔化すだろうなぁ。

 でも意味ないな〜。

 天幕のところにギルド職員いるし。

 義母様がなにやら楽しそうに書いてるし。

 エンリコが重そうな袋渡したし。

 職員が袋から白金貨取り出したし。

 何枚だろう見えない、けど多そうだな。

 でもまあ折角だしその賭けに勝ってもらおうか!


「絶対とは言い切れませんが勝ちに行きますね」


「おお!期待してるぞディーノよ!」


 いい笑顔で応えるセヴェリン伯爵。

 もしかすると復興資金が足りていないのかもしれない。

 これは本気で勝ちにいかなければ。




 さて、ディーノの他に聖銀に挑むメンバーはというと。

 ギルドが用意した控え所にアリスとフィオレが一緒にいる。


「ディーノ!?どうしよう!人が多過ぎて緊張してきたわ!」


「そのわりに楽しんでそうだけど」


 両手に串焼きを持って何を言っているのか。

 すでに何本か食べたのか口元に茶色のタレが付いている。

 どうやら串焼きの一本はディーノの分だったらしく受け取って齧り付く。


「お、これ美味いな。王都にもラフロイグにもない味だ」


「ライナーの味付けなんだって。クラリスにレシピを売り込んだらしくてギルドの屋台で売ってるのよ」


「すっごい行列できてたよ。一番繁盛してるんじゃないかな?」


 何をやっているんだあいつは……

 自由過ぎやしないか?

 だがクレート直伝の味付けならこの美味さも納得できる。

 何の変哲もない串焼きが高級料理にも匹敵する。

 実際は炭火とタレがこの味を作り出している、ただの炭火焼き鳥なのだが。


「アリスは緊張してるって言うけどフィオレは平気か?あの二人も相当強いと思うけど」


「んー、緊張しても意味ないしへーき」


 サジタリウスが壊滅した後も一人で仇を討とうと機を伺い続けていたフィオレなのだ、可愛らしい見た目をしていてもメンタルは強い。

 アリスも緊張しているとは口では言うものの、フィオレの落ち着いた雰囲気もあってか串焼きを頬張る余裕もあるくらいだ。

 いい意味での緊張と言っていいだろう。

 ディーノの見立てではまだまだ聖銀のメンバーの実力には届かない二人ではあるが、勝ちに拘らず、内容のある戦いにするだけでも挑む価値は充分にある。

 これまでの努力の成果を是非とも見せて欲しいところだ。




 あともう一人は今何をしているのだろう。

 マリオが見当たらないがブレイブで行動しているのだろうか。

 今日戦う戦士としてこの会場内にはいるはずだが……

 一般席を見渡してみるそこにマリオがいた。

 なにやらラフロイグギルドの冒険者達に囲まれて活を入れてもらっているらしい。

 ラフロイグギルドではマリオの方が後から活動を始めたのに、ディーノよりも冒険者仲間に恵まれているとはこれ如何に。

 ザックと戦うことが決まって落ち込んでいたのだが、一応は覚悟を決めてあの場にいるようだ。

 冒険者としての実力も以前とは見違えるように成長したマリオといえども、相手がザック=ノアールともなれば恥をかくのではないかと不安にもなるだろう。

 だがこれは冒険者としての高みへの挑戦であり、無様に負けようと、地べたを這いつくばろうと、挑むことにこそ意味がある。

 精霊国ではディーノもクレートに敗北を喫し、その経験を糧にまた一歩前へ、高みへと近付くことができたのだ。

 ここでマリオもザックとの戦いを糧に更なる成長を期待しよう。


 ところでブレイブのメンバーはどうしたことか。

 もしかするとマリオを放置してこのお祭り騒ぎを楽しんでいるのかもしれない。

明日の分を間違って投稿してしまいました。

明後日に次話投稿となります。

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