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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
218/257

218 巨鳥を

 王宮内に入ると以前とは随分と様変わりしており、竜種や巨獣が待機するスペースが作り変えられて獣人の席が設けられている。

 王族のフュージョンスキル持ちが全員獣人になったことで、国の重鎮達と同じく発言できるようにしたのだろう。

 玉座も以前の階段は取り払われて二段ほどの高台となった位置に配置され、奥側の壁も大きなガラス窓になって多くの光が降り注ぐ。

 知性ある竜種の城という王宮だったものから、現在は小国の王宮といったものに作り変えられたようだ。


「聖王国の使者グレゴリオよ。本日は他国の使者を連れて戻ったようだな。俺はルーヴェべデル王国八代国王【ミロスラーヴォビチ……」


 いつもの長い挨拶から始まってアークアビット拳王国、センテナーリオ精霊国の使者を歓迎しようと発言したところで使者団も挨拶。

 獣王国国王も拳王国の使者として来たのが第三王子だったことには驚いていたが、近々繋がりを持ちたいと考えていたということでシリル王子も話しやすくなっただろう。

 そして精霊国についてはグレゴリオからもまだ交易が始まったとは聞いてなかったため、つい先日までウルと共にディーノが使者団として精霊国に交渉に行っていたことを伝えつつ能力についても軽く説明した。

 サモンスキルの有用性はこの使者派遣の手間を大きく減らすことができるのだ。

 人材派遣を是非とも望むところだろう。


「ふうむ。元々拳王国の武闘には興味があったがそれとはまた別に精霊国のスキルの便利さよ。どちらも興味深い国である」


「獣王様、我々とて獣王国のテイムスキルには多大な期待を持って貴国に足を運んでおります。我が国とも聖王国、精霊国共々親しき関係を望む所存にございます」


「我が国も拳王国シリル王子の言と同じくして獣王国との友誼を結びたく、貴国のウル殿より招待いただきましたこと感謝に絶えません。今後良き関係を築けるようよろしくお願い申し上げます」


 簡単に交易しましょうではダメなのかなと一般人のディーノは思ってしまうが、国の重鎮ともなればそれなりの言葉遣いや何やらが必要となるのだろう。

 堅苦しい話はやはり苦手である。


「国が違えばスキルも何もかもが違うものよ。互いが手を取り合い、足りぬものを補い合えればより良い国になるのだなと今は皆と話しておる」


 戦争を始めようかと考えていた国だ。

 考え方が正反対になるほど聖王国との関係性は良好なようで、ディーノとしても安心であり嬉しくも思う。

 食料問題で困窮していた状況も改善されたと思っていいだろう。


「して、使者が来たということはやはりテイマーを望むか。まだ出稼ぎに向かわせたい者もおる故構わぬが……我が国にも其方らの国民の力を貸してほしい」


「我ら精霊国からはサモナーを派遣したく思います。まずは我々二人が、必要とあらばまた呼び寄せることも可能かと」


 精霊国はもともとサモナーを派遣して連絡を取り合うのを容易にしようと考えているため問題はない。

 聖王国ではディーノの連れて来たグロウパピィだけでも充分な成果となっているうえ、ジャダルラック領からは農民の派遣もしているはずだ。

 それらによって聖王国には少なくない数のテイマーが派遣されている。


「では我が国からもまずは二人派遣しようか。遠い国故長旅にも耐えられる者でなくてはな」


「ありがとうございます獣王閣下」


 精霊国への派遣は予想できたこと。

 書簡のやり取りが毎日できるのは便利すぎる。

 しかし国民の力をとなれば拳王国では何を出せるのか。


「我ら拳王国は拳士の国。しかし獣王国に拳士はそう必要ではないかと。ですので拳士としては向かないスキルの者を派遣したく考えております」


 なるほど。

 実際のところ聖王国も獣王国に必要なスキルの者を派遣しているわけではないので問題はないのかもしれない。

 いろいろと不足する国であるが故、技術的な面で獣王国を支えられる者であればスキルよりも有用とも言える。


「ふむ。貴国もテイマーに期待していると言うのだ。我が国にもその期待に応えられる者を派遣してくれると信じてみよう。まずは精霊国と同じく拳王国にも二人派遣しようか」


「ありがとうございます」


 食料問題が解決していようと仕事が無ければ稼ぐことはできないため、人材を派遣するのは最初から決めていたのかもしれない。

 精霊国とは違い曖昧な答えを提示した拳王国に対しても同じ人数派遣するあたりは、まだ何人かずつ派遣してもいいと考えているのだろう。


「ではこちらも人選しなくてはならんのでな、どのようなモンスターを望むか聞かせてもらおう」


「「是非とも巨鳥を!」」


 え、巨狼じゃないのか?

 エンペラーホークがそんなに良かったということだろうか。


「巨鳥?はて?ふーむ、宰相よ、巨鳥をテイムする者はおるのか?」


「鳥のテイマーはいるにはいるのですが巨鳥とまでは言えませんな。新たに捕える必要があるかと」


 あー、このパターンだと予想できるな。

 これ絶対にオレに話がくるやつだ。

 などとディーノが思っていたところ……


「ゲルマニュートよ。巨鳥の調査と捕獲を任せるが良いか」


「仰セノママニ」


 そうだった。

 ゲルマノヴナ改めゲルマニュートが獣王国にいた。

 空を飛べる竜人であれば巨鳥の捕獲も難しくはない。


「しかし巨鳥ばかり四体もそう見つかるものでもあるまい。他に望むものがあれば言ってくれ」


「ウル殿のマルドゥクを見て移動の早いものを、と考えて獣王国に参ったのですが何か良さそうなモンスターは居られるのでしょうか」


 んー、別に空を飛べれば鳥じゃなくてもいいのではないだろうか。

 戦うことを目的にしなければ強い個体じゃなくてもいい。

 そう考えてディーノが手を挙げると。


「ディーノよ、何かあるのか?」


「はい。巨鳥でなくとも人を運んで空を飛べるモンスターならいいんですよね?」


 これに「ええ、構いませんが」とシリル王子が答える。


「では下位竜か中位竜をテイムしてはどうですか?」


「残念ながら無理だな。これまで竜種のテイムに成功した者はいない」


 まあそうか。

 これまでに試した者がいないはずはない。


「そうなんですか。だとすれば普通に巨鳥狙いで聖王国のジャダルラック領危険領域ですかね。アローファルコンなら結構いましたから。乗れてもせいぜい三、四人のモンスターだとは思いますけど鳥の中でも最速の種です」


 ついでに挙げるとすればエンペラーホークより強い個体のはず。

 巨獣とも戦える数少ない鳥類ともモンスター図鑑には書かれてあった。


「なるほど情報提供感謝する。最速となれば問題は捕獲できるかどうかだが両国はどう思う?」


「テイマーを含めて四人乗れるのであれば充分です」


「そうですね。最速とまで言われるのであれば竜種に襲われても逃げ切れるかもしれませんし、王族専用としてもいいかもしれません」


 四羽ともアローファルコンにするわけでもないだろうし、多目に乗れる巨鳥ともう一体をファルコンでいいだろう。

 獣王は捕獲できるかとも言うが、攻撃的なモンスターであるためこちらは迎え討つだけである。

 捕まって空に持ち上げられない限りは難しいこともない。


「では聖王国にアローファルコンの捕獲許可をもらうとして……そうだな、聖王国である故ディーノよ、任せてもよいか?できることなら聖王国に一体、我が国にも二体ほど捕獲してもらえると助かる」


「え?あ、はい、お任せを。黒夜叉とブレイブで捕獲しましょう」


 二体なら様子を見ながら任せようかと思っていたのだが。

 アローファルコンを五体であれば黒夜叉で四体、ブレイブには一体を捕獲してもらうことにしようか。

 ディーノは正面からでも対処する自信があり、アリスには殺してしまう確率の高い炎槍ではなく、風魔法で対処してもらえば捕獲も難しくはないだろう。

 フィオレはインパクトで簡単に撃ち落とせそうだし、ライナーの氷魔法は羽を凍りつかせることができれば捕獲も容易なはず。

 ブレイブではレナータの闇魔法が効果的だが、マリオは捕獲には向かずジェラルドは逆に捕獲されやすく、ソーニャは回避はできても捕獲はできない。

 これが討伐であれば問題ないのだが、やはり捕獲となれば条件的に厳しい。

 また、空へと連れ去られたとすれば地面に落とされる前に助ける必要があり、そこをウルとシストに対処してもらうつもりだ。


「では獣王様の書が出来あがり次第、聖王国へと書簡を送らせていただきます」


 とりあえずは聖王国からの許可が降りてからのクエストだ。

 今日は獣王国で宿をとって酒盛りでもしようか。


「うむ。すぐに書に(したた)めよう。あとはそうだな、其方ら黒夜叉とブレイブからも話を聞きたいところではあるが、使者の皆とは話さねばならぬことがまだ多くある故、また後日聞かせてほしい。明後日にでも宴を催すこととしようか」


 もしかしたら明日はアローファルコン狩りかもしれない。

 ゲルマニュートは巨鳥を探すところからになるとすればある程度期間は掛かりそうだ。


「ゲルマよ。今宵はザハールと共に黒夜叉、ブレイブをもてなしてやってくれ。ん?ああすまん、エレオノーラはディーノに心酔しておったな。其方も共に交友を深めるとよい」


 これにアリスが反応したが、ディーノは何も悪いことはしていない。

 ただ上位竜と融合していたエレオノーラを解除し、グロウパピィを与えて獣人にしただけだ。

 まったくもって何も悪くない。

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