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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
213/257

213 ラフロイグに帰還

 他国の行き来に比べれば国内は楽だなと思えるほど王都からラフロイグまではあっという間に着いた。

 一応ギルドには顔を出してみたのだが、ケイトは受付嬢としてはここしばらく務めておらず、ラフロイグ伯爵から国の仕事を紹介してもらって別の場所で働いているのだとか。

 会えないのは残念だが仕方がない。


 ラフロイグでは遠くから向かって来るマルドゥクの姿に湧いており、歓迎ムードの中を大通りを進んで行く。

 こんなに歓迎されると思っていなかったライナーも嬉しそうに手を振っている。


 いつもの広場でマルドゥクから降りると、近付いて来た区画長からまた洗ってくれるとのことだったので頼んでおく。

 前回大丈夫だったのでウルが寄生していなくても問題なく洗うことができるだろう。

 しかし残念なことにエンペラーホークの姿が見えないことから、どこかにクエストに出ているのかもしれない。

 ウルがエルヴェーラに会いたいだろうしとりあえずギルドに向かう。




 ギルドに着くと受付嬢のクラリスが迎えてくれ、今は裏方の仕事をしているエルヴェーラを呼んでくれた。

 ウルとエルヴェーラの再会を羨ましく思いつつ、クラリスにアリス達の動向を聞いてみる。


「久しぶり。ブレイブとうちの奴らどこに行ってるか教えてくれるか?」


「お帰りなさいディーノさん。皆さん今はオリオンとして活動してますよ。それで〜今は……これです。このクエストに向かってますよ」


 依頼書の写しを見るとモミュール領でのSS級討伐依頼に行っているようだ。

 今回は竜種狩りじゃなく通常依頼のようだが、サイレントウォーカーという人型をした存在自体が虚ろな非常に厄介なモンスターだ。

 魔法こそ使わないものの、身体能力が高く脅威度としてはクランプスに近いものがあるらしい。

 ディーノも戦ったことはないが、モンスター図鑑から得た情報からするとかなりの高難易度モンスターとなる。

 アリスとフィオレであればクランプス戦の経験があるものの、ブレイブからすれば相当苦戦することが予想される。

 ただこのクエストを紹介したクラリスを見る限りでは今のブレイブに必要なモンスターということだろう。


「へー。こんなモンスターもいるんだ。精霊国では聞いたことないや」


「聖王国は広いからな。とんでもない種類のモンスターいるから図鑑見てるだけでもおもしろいし勉強なるぞ」


 図鑑といえば精霊国にあるというセンテナーリオ精霊図録というものを国王様から特別に頂戴している。

 緑竜を倒した褒美にと何か考えていたらしいが、マルドゥクに譲ったこともあって報酬を受け取ることができなくなったディーノに用意してくれたらしい。

 パーティーで精霊図鑑に興味がありそうだったディーノを覚えていた者がいるらしく、国王に提言したそうだ。

 一般に知られている精霊図鑑よりも多くのことが書いてあり、モンスターについても精霊国にいる三百種以上を網羅しているらしい。

 改めて自分が持っている図鑑と見比べてみても、聖王国と精霊国とで同じモンスターでも進化の過程が違うのか微妙な違いがおもしろい。

 このおもしろさを誰かと共有できたらいいなと思ってライナーも誘ってみるが、あまりいい反応は見せない。

 人の好き好きだし強要するつもりはないが。


「実物が見たいかな。あまり勉強とか好きじゃなくてさ」


 仕方ない、今回も諦めよう。


「で?このクエストだといつ頃帰って来れそう?」


「出発から三日目ですから早ければ今日、明日か明後日くらいですかね」


 適当だな。

 でも明後日までに戻って来ればアリスに会えるんだし良しとしようか。

 できれば今日帰って来てほしいけど。

 とりあえず今いないならライナーはラフロイグの観光させてやるとして、ウルはエルヴェーラとデートでもしたいだろうな。

 今日は仕事だし今夜からか。

 久しぶりにカルヴァス行きたいから部屋とウル用に席を取ってやろう。


「そうだ。クラリスもカルヴァス行くか?ここ最近のラフロイグの話も聞きたいし」


「えっと……」


 あー、アリスを気にしてんのか。


「オレとライナーとクラリスで。何ならギルド長呼んでもいい」


「ギルド長もお願いします。エルヴェーラさんに嫌味の一つも言われそうですから」


 エルヴェーラに?

 んん……

 ああ!

 なんで食事に誘わないんだって散々言われてたからか!

 クラリスファンも多いなら考えるけど、ギルド見回した限りだとまだ女っぽさがないクラリスに熱い視線を向ける奴はいない。

 まだまだ発展途上だろうし。

 あと一、二年したらなかなかの美人になるんじゃないかなとは思うんだけど。


「何か失礼なこと考えてませんか?」


 あれ、なんでわかるんだ?

 受付嬢ってみんなそんなに鋭いの?


「ディーノさんさ、不思議そうにしてるけど結構顔に出てるよ」


 顔に出てたかー。

 じゃあある程度はわかるよなー。


「ソロで活動していた弊害じゃないですか?コミュニケーションとる相手がいなくて頭の中で話す癖があるとか」


「なるほど。寂しい弊害だな。誰にも言わないでくれると嬉しい」


 そういえばウルとライナーがいるから忘れがちだけど黒夜叉のメンバー誰もいないや。

 パーティーって何だったかな……


「今度はしょんぼりし始めた」


 本当に顔に出てるらしい。

 気を付けよう。


「じゃあギルド長にも言っといてくれ。部屋は取っておくから」


「はい。よろしくお願いします」


 エルヴェーラの仕事の邪魔しても悪いためウルも連れて行く。


「エルも今夜カルヴァスな。ウルとの席用意してもらうから」


 ウルからは「気が利くな」なんて言われるが、最初から別の席を用意してもらうつもりでいるのは知っている。

 ディーノとてデートであれば他の者に邪魔はされたくないのだ。

 ギルドから出ようとしたところで周囲の視線に気が付いた。

 ウルの方に殺意のこもった視線が投げかけられているあたり、やはりまだエルヴェーラ人気は健在のようである。




 ギルドを出て観光もいいが、先にライナーの武器を作ってもらうために鍛冶屋ファイスを訪れる。


「ファブ爺さん久しぶり。今度はライナーの剣作ってほしくて連れて来た。属性剣頼めるか?」


「なんでぇディーノか。新しい客たぁお前さんも随分とうちを贔屓にしてくれんじゃねぇかよ」


「当然だろ。超一流の職人知ってて紹介しないわけないからな。ライトニングも最高にいい出来だし」


 これまでのファブ爺さんの武器見て他に行くような奴なら店売りの武器を買っておいた方がいい。

 正直出来が良過ぎて攻撃の七割くらいはライトニングになってるくらいだ。

 ユニオンも充分凄い剣ではあるんだけど。


「うぇっへっへっ。気に入ってるようならそぉりゃ良かった。そんでそっちの兄ちゃんぁどんなもんが欲しいってんだぁ?」


「クレートさんのと似た剣が欲しいんだけど作ってもらえますかね。写真もあるんですけど」


 ディーノもクレートに会って初めて見たが、風景だろうが人物だろうがまるで空間を切り取ったみたいにそっくりな写し絵が家に飾ってあった。

 国王夫妻とブラーガ家が一緒に写った写真で、いい絵だな〜と見てたら説明してもらえたのだ。


「しゃしん?なんでぇそりゃあ」


「視界に映る範囲をそっくりそのまま写し絵にしたもの、かな?これなんですけど寸法は裏にメモしてます」


 写真を受け取ってその精巧な絵に目を見開くファブリツィオ。

 まあ初めて見たら驚くだろう。

 対象の物だけじゃなく背景も全部しっかり描かれてるんだからな。


「とぉんでもねぇ絵じゃあねぇか。これならそっくりなもんも作ってやれるが……」


 写真に顔を近付けたり遠ざけたりしながらマジマジと見つめている。

 この写真が相当気に入ったらしい。


「まあ見た目だけだがなぁ。それで良けりゃあ作るぜぃ。あとは属性ぁどーするか」


「じゃあ少し色味だけ変えてお願いします。紫のところを濃いめの青とかで。属性はこの氷の魔核でもいいですか?」


 クレートが以前倒したという青竜の魔核だろう、結構大きい魔核を持って来ていたようだ。


「なかなか難しい属性選ぶじゃぁねぇか。今流行りの噴出系ぁ向かねぇからよぉ」


 その流行りを作ったのはファブリツィオなんだが本人はあまり気にしてないのか。

 しかし噴出系が無理なら威力が拡散するだろうしどうなんだろう。


「問題ないです。俺異世界から来たんで魔法自体がこの世界の人と違うんです。どちらかと言うと竜種寄りの魔法になると思います」


 魔法自体が違う?

 わかりやすくクレートで考えてみると……

 剣から炎出したり火球をどこからでも出したり複数の火球出したり化け物に変身したり。

 わかりにくいな。

 いや、わかりやすいか。

 アリスと比べれば全然違うし。

 手をかざしたり武器を通して魔法を発動するこの世界の人魔法と、自分の周囲の空間から魔法を発動できる異世界人魔法。

 竜種も周囲に魔法を展開してくるから異世界人魔法に近いと言える。

 ディーノも魔法は基本的に剣から発動させてるけど……あれ?風の防壁なんかは周囲に展開してるな。

 風竜は……残念なことにマルドゥクから一方的に嬲られたからよくわからなかった。

 もっといろいろと魔法を見せてもらいたかったなと思わなくもない。


「ほぉん。じゃあ昔からある放出系にするかぁ?氷にぁ放出も何もあったもんじゃあねぇだろうけどよぉ」


「それなんですけど拳王国の武器を参考にしたいんですよね。魔法を反射するコーティングがされているって聞きました」


 それは拳王国を出国する前に聞いた。

 攻撃には利用できないが竜種の魔法を弾くのに役に立つのだとか。


「そいつぁ竜飲鉄だろうな。他で竜飲鉄処理するとこぁなかなかねぇぞぉ」


 たしかアリスの魔鉄槍にも使ってるとか言ってたはずだ。

 その部分から魔法が出ないとかなんとか。

 魔法が出ないとすれば属性武器には向かない処理だが、異世界人魔法なら剣を通さなくても問題ないということか。

 でも剣から魔法を使えないのも不便な気がする。


「んん、だがまぁ、よぉし。ちょいとおもしれぇもん思いついたぜぃ。この写真たあ多少違いが出るかぁしんねぇが俺に任せてくんねぇかい。魔鋼たあ違えからよ、三日四日でやれねぇことはねぇ」


「じゃあ頼むよファブ爺さん。ライナーも期待していいと思うからさ」


「よろしくお願いします」


 とりあえずライナーの剣は今ある物でも下位竜倒せるくらいだし、ファブリツィオが作る属性剣なら中位、もしくは上位竜くらいまで戦えるようになるかもしれない。

 そこから更に腕を上げて色相竜にも挑めるようになってもらいたい。

 伸び代が大きいぶん成長が楽しみである。

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