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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
199/257

199 復讐

 マーカーズ領のギルド長室でこれまでのやり取りを説明し、アルヘナパーティーに囚われていたと言うべきか、助けを求める事すらできず良いように使われ続けていたザイラとトスカの話を聞きつつ、苛立ちのあまり何度も男達を殴りに席を立つロザリア。

 そしてスキルの待機時間が終わる度にペインを与えに立ち上がるルチア。

 アルヘナの地獄はザイラとトスカの話が終わるまで続き、ルチアの気が済まずに最後までペインを与え続けた。


 ザイラとトスカはロザリア達とは違い、ルビーグラスへの加入をするつもりでマーカーズ領へと来たのではなく、渡りの冒険者としてこの街に来ていたとの事。

 街で観光をしつつ何度かギルドで依頼を受け、飲食店で顔見知りの冒険者からたまたま噂を聞いていたところでアルヘナパーティーに絡まれたらしい。

 強引にパーティーに誘われた為断ったものの、力ずくで部屋に連れ込まれて四人から暴行を受けたとの事。

 そのまま一人は人質として囚われたまま三人でギルドへと足を運び、アルヘナを解散して今の【アル】と【ヘナ】の二パーティーに分けられたそうだ。

 パーティーを分断したとしても高い実力を持つアルヘナのメンバーは問題なく依頼をこなし、ザイラとトスカは役に立てなければ食事を抜かれたり、時には一人を徹底的に辱めるなどの罰も与えられる場合もあったという。

 また、回復薬で傷を癒してはもらえるものの、抵抗すればありとあらゆる苦痛を与えられた為、逆らう勇気を持つ事すらできなかったと語る。


「こいつら物は奪わないだけでやってる事は盗賊と変わらなくないか?報酬ももらえないんなら金は奪ってるのと同じだよな?」


「それでも命を奪ったわけじゃないからね」


「殺しちゃダメか?こいつらは許せるもんじゃない」


「ダメだな。殺せばお前らを殺人罪で捕らえる事になる」


 さすがに女性二人を脅して自分達の道具として使っていたとしても、冒険者としての実績がありマーカーズ領の為、領民の為に働いていたと考えれば死罪までには問われない。

 犯罪者として捕われる事になるとしても一年内には出てくる事もできるだろう。


「そっか。ダメか。んじゃイチモツを潰しておこう」


「それもダメだ。殴る分には目を瞑ってやれるが欠損は傷害罪で懲役か罰金になる」


「じゃあ私の全力のペインは?」


「死ななければまあ……そいつらまだ生きてるか?」


 全員五回以上はルチアのペインを浴びている為、痛みに耐える為に力んだのか全身が真っ赤になって腫れあがっている。

 加減はしてあるものの神経系が壊れてもおかしくないだけの痛みは浴びているのだ。

 拷問の究極と言ってもいいかもしれない。


「さすがに死ぬかもしれないね。じゃあせめて回復してザイラとトスカの気が済むまで殴らせてからおまけのペインで占めにしよう」


「あたしの分は?」


「充分殴ったでしょ?」


「最後にエアレイドパンチを一発ずつ」


「おっけー」


 何がおっけーなのかはわからないがこれでアルヘナを解放する事になるようだ。

 下級回復薬を浴びる程飲ませて転がしておき、後日また殴りに来る事にしてギルドに預けておく事にした。

 もちろんパーティー加入規定があろうとザイラとトスカの脱退を約束させ、ギルド長がアルヘナを逃がさないようしっかりと釘を刺してからギルドを後にする。




 マーカーズ領に着いてからまだ何も食事を摂っていなかった為、ザイラとトスカを連れて人気があるという料理店で食事をする事にした。

 二人がこの店に来るのは二度目という事だが、アルヘナ加入前のまだマーカーズ領が楽しかった頃に一度来ただけだという。

 デザートの氷菓子が美味しいというので料理が並ぶ前から楽しみで仕方がない。


「しかし災難だったな。あんなカス共に捕まっちまってさ」


「うん、死にたくなるほど辛かった……毎日朝も夜も暇がある度弄ばれて……」


「でも取り返しがつかなくなる前にロザリアさんやルチアさんに会えたから……ね。助けてくれて本当にありがとう」


「おう。明日は気が済むまでしっかり殴ってやりな。あたしらが絶対に抵抗させないから」


「回復薬も買い込んでいかないとね。請求先はアルヘナで」


 どれだけ痛めつけるつもりかはわからないが、この日すでに死んだ方がマシと思える程の絶望は与えられたのではないだろうか。

 それでも明日また殴りに行くのはアルヘナとの決別のため、そしていつまで続くかもわからなかった凌辱の日々を清算するためだ。

 この日済ませる事もできたのかもしれないが、ルチアのペインで痛みを与え続けた事で感覚が麻痺していた可能性がある為、ザイラとトスカの復讐としては生温い。

 神経系が正常な状態で殴ってこそ意味があると、明日まで回復を待ってからの復讐するつもりなのだ。


「は〜、やっと解放された。ジャダルラック出た時はこんな事になるとは全然思ってなかったのにな〜」


「あはは。ジャダルラックも大変だったけどね」


 どうやらザイラとトスカはジャダルラック方面からマーカーズに流れてきたようだ。

 少し前までは討伐依頼の多かったジャダルラックも今は落ち着きを取り戻し、破壊された街や荒れ果てた農地などの復興の日々が続いているはずだ。


「お、渡りの冒険者って言ってたか。そんなら他領の話も聞かせて欲しいな」


「ジャダルラックって言ったら少し前にディーノ達が指名依頼で行ってたんじゃない?」


「えっ!?ディーノって黒夜叉のディーノ=エイシスさん!?知り合いなんですか!?」


 さすがに全ての依頼を完遂し続けたディーノはジャダルラックにいた冒険者で知らない者はいない。

 ジャダルラック唯一のSS級パーティーであるアークトゥルスでさえも、最強の冒険者と語るディーノは英雄と囁かれていたりもするのだが。

 実際に聖王国からも英雄として活動するよう指示も受けている。


「まあ知り合いではあるかな。ディーノの恋人のアリスとあたしらは昔からの友人だし」


「それにパーティーメンバーのフィオレ君は私の師匠でもあるよ」


「黒夜叉の……弟子……強いわけだね」


「黄竜討伐戦は本当凄かったもんね……」


 ザイラとトスカも黄竜討伐観戦ツアーに参加していたらしく、遠い目をして過去を思い返す。


「そこを詳しく」


「私達は見学しただけですけど民家数軒は包み込める程の翼を持つ黄竜を相手にですね……」と語り出したザイラとトスカ。

 アリス達からも黄竜戦の話を聞いてはいたが、見学者からの視点となればやはり捉え方は違うもの。

 オリオンの肉色竜戦は見た事があるものの、色相竜ともなれば話は全くの別物である事から話だけでも聞いておいて損はない。

 テーブルに料理が並んでいくのと同時に、ロザリアもルチアも知らないディーノの本当の強さが語られる事となった。

 この日は依頼を受ける事もないため酒をのみつつ料理を楽しみ、黄竜との激戦を質問を交えながら盛り上がる。




 ◇◆◇




 翌日にはギルド長であるナータンが見守る中、ザイラとトスカの復讐という体でアルヘナに気が済むまで拳を振るい、全員外に出してからロザリアのエアレイドパンチを一発ずつと、ルチアの高出力ペインを浴びせてこの件を締める事にした。

 アルヘナの財産は没収され、慰謝料としてザイラとトスカに支払われる事になり、アルヘナは解散して同じメンバーでのパーティー結成は今後一切認められない事となった。

 ただし彼らの非道な行いに対して暴力という形で復讐を果たした為、アルヘナのメンバーが罪に問われる事はないようだ。

 もしまた似たような行いが発覚した場合にはギルドから賊として認定し、討伐対象とする事で罪人ではなくモンスターとして処理する事になるらしい。


 ザイラとトスカはあと数日のうちに準備を済ませ、辛い思い出となるマーカーズ領を後にするとの事。

 今後は王都へと向かい、ラフロイグ、モミュールへと渡って行くつもりと語っていた。

 せっかく関わりを持った二人であるだけに、ルビーグラスが領都に帰って来た際にも話し掛ける事はなく、二人が旅立つまでは共にマーカーズで過ごすロザリアとルチアだった。

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