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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
132/257

132 同行者

 ギルド受付での用事が済み、防具を受け取りにバーヴォへと向かおうとしたところ、二人の冒険者から声をかけられた。


「アリス!久しぶり!お〜、フィオレは今日も可愛いな!お菓子でも買ってやろうか?」


「ブレイブのみんなも久しぶり。ジェラルドも……その、げ、元気してた?」


 声をかけてきたのはラフロイグギルドに所属しているソロの冒険者であるロザリアとルチアだ。

 以前王都に来ると言っていたが、思ったより再会するまでに時間がかかった。

 レナータはフィオレへの絡み方に警戒して背後から抱き着いていたが、実のところロザリアはフィオレを女の子だと勘違いしている。

 アリスはラフロイグでよく一緒に活動していた為仲がよく、久しぶりのロザリアとの会話が弾んでいた。

 そしてブレイブに声をかけただけでなく、ジェラルド個人にも話しかけたルチアの態度を察したマリオとソーニャは、少し後ろに下がってコソコソと話し始めた。


「久しぶりだなルチア。俺はいつだって元気だぞ。ルチアこそ危ない目にあったりしてないか?スキルの特性上モンスターに狙われやすいからな」


「うん……大丈夫。最近はいっぱい走ってるから逃げ足が速くなったし。あははっ」


 頬を赤らめて嬉しそうに会話を始めたルチアは恋する乙女そのものだ。

 そんな二人の姿を嬉しそうに見つめるマリオは自分の恋愛はどうしたのだろう。

 ソーニャもルチアのペインスキルがどうだのジェラルドが喜ぶだのと楽しそうに話しているが、自分の恋愛はどうなのだろう。

 最近ではまったくそんな意識が見えなくなってきているがまだまだ若い二人であり、いつかどこかでいい相手が見つかるといいのだが。


「私達今は黒夜叉とブレイブとで合同パーティー組んでてね、竜種討伐の旅をしてるとこなのよ。今日は訳あって王都に戻って来たけど、またすぐラウンローヤに移動になるのよね」


「竜種討伐……なんでそんな危険な旅を?」


「国王様も優秀な人材を育てよって言ってたし、あなた達ならもう話してもいいわよね。実は……」


 と、今後起こり得る世界規模の竜害について話す事にした。

 二人の実力を考えればまだ竜種に挑むには早すぎるのだが、やがて来る竜害では冒険者の誰もが竜種に挑む必要が出てくる。

 その時がきてから初めての戦いとなるよりも、今のうちに経験できるのであれば見学でもなんでもしておくべきだ。

 魔鏡で出現するモンスターとの戦闘で経験を積みつつ、ステータスの底上げと竜種への知識を身に付けさせようと、ブレイブに相談する事なくこの旅に同行させようと決める。

 とはいえルチアのジェラルドに対する好意も知っている為、この二人は絶対に着いてくるだろうと判断。

 また、ブレイブに相談しなくとも、アリスの考えを察したマリオが親指を立てて了承の合図を送る。


「そんなわけでね、あなた達もこの旅に同行しない?ギルドからの報酬はないけど道中のモンスター討伐に応じた金額を黒夜叉から払わせてもらうわ」


「あー、それは折半って事で頼む。こっちも世話になるわけだしな」


「いや、世話になるのはあたし達の方だろ。同行させてもらえるだけでもありがたいよ」


「じゃあとりあえず形だけは臨時のパーティーメンバーって事にしておかないとね。ロザリアは黒夜叉、ルチアはブレイブにね。ラウンローヤで絡まれると思うから念のため」


 こうしてロザリアとルチアの人材育成という名目の、裏ではルチア恋愛応援の旅が決定した。




 ギルドでの用事が済めば、今度は注文していた防具の受け取りにバーヴォへとやって来た。

 注文通りに防具は完成しており、代金を支払って新装備を装着。


 アリスは見た目はそのままではあるものの、よく見れば色のわずかな違いさえも統一された事で、光の反射具合も整い完璧な装いとなった。

 黄竜の魔核を溶かし込んだ防具に魔力を流し込み、自身の体が軽く感じる事で身体能力の上昇を確認する。


 レナータとフィオレは同じようなデザインの胸当てを購入しているが、男女という事で膨らみ方に違いはあるものの、お揃いの装備にお互い満足そうに微笑み合う。

 アリス同様に身体能力上昇を確認し、驚く程の体の軽さにきゃっきゃと二人で騒ぎ始めた。


 ジェラルドはまだ魔力操作はできないが、この新装備の完成度に自分自身を抱き締めるようにして喜びを表現。

 かなり高額な買い物となってしまったが、ガイアドラゴンの盾に続く宝物の購入にとても嬉しそうな表情を浮かべる。


 ソーニャが注文していたのは軽さと強度を両立させた籠手だ。

 普段から着けているアームウォーマーの上に装着するのだが、付け慣れないこの装備にマリオに手伝ってもらって取り付けた。

 重さとしてはそれ程でもなく、関節の可動部も複雑に作り込まれている為手首の動きも悪くはない。

 強度は確認しないとわからないが、これまで武器以外で持つ事のなかった金属の装備に傷を付けたくないと思うソーニャ。

 購入を決めるまでは少し渋ったものの、実際に防具が手に入ればその緻密な作りに思わず頬が緩んでしまう。


 そしてロザリアとルチアの同行を決めた為、二人の分の黄竜の魔核装備を注文した。

 魔核は金銭欲のないフィオレが提供し、二人は共にダガーを選択。

 ロザリアは今のより強力なメインのダガーがほしいと望み、ルチアはペインスキルを近接でも使えるようにと考えたそうだ。

 加工費も二人には到底払える金額ではなかったのだが、「この魔核で足りる?」と小竜四体分の魔核で支払った。

 価値としては下位竜の魔核にも劣らないらしく、魔核などの物で支払うのであれば余った金額分は他の商品を購入してほしいとの事で、ロザリアとルチアの装備を一新する事にもなった。

 それだけの余剰金額となれば魔核を一つ二つ返せばいいのにとも思ったが、他に用途がない為処分ができるならフィオレとしてはそれでいい。

 本当に欲のないフィオレだった。


 バーヴォではダガーを作るだけであれば二日もあれば完成するとの事で、久しぶりの休みを取ろうと少し高級な宿に宿泊を決め、王都に三日間滞在する事とした。

 そしてソーニャとジェラルド、ロザリアとルチアは属性魔法を使えない為、魔力の引き出し訓練を行った。




 ◇◇◇




 それから五日後の夕方にはラウンローヤに到着したブレイブと黒夜叉、そしてソロのロザリアとルチアは、合同パーティー名を【オリオン】として依頼を受注する。

 アウジリオから「いちいち呼ぶのがめんどくせぇ」と言われて合同パーティー名を付ける事となり、多くの案があがったのだが、「パーティー名をもう一つ名乗るんならオリオンがいい」とのマリオからの提案でこの名に決定した。

 アリスの冷たい視線から目を逸らしたマリオは耳まで赤くし、マリオの気持ちを汲んだレナータから「元々オリオンはディーノが集めたパーティーなんだよ」と聞かされるとアリスもその表情を柔らかくする。


 アウジリオから竜種の所在を聞いたあと、サガのメンバーには絡まれそうになったものの、臨時で入ったメンバーだとしてこの問題を回避。

 その振る舞いから実力的に魔鏡では危ういと見たチェザリオだが、ブレイブと黒夜叉が一緒であれば大丈夫だろうと見逃す事にした。

 もし足手まといになると判断すれば自らパーティーを抜けるだろうと思ったのだが……


「上位竜の討伐に素人を連れて行くだと!?ふざけんじゃねーよこの野郎!!」


「あー、やっぱキレるよな。わかるわかる。わかるけどちょっと落ち着けって。アリス、お前らの話を聞かせてやってくれ」


 何気に優しいチェザリオであれば素人の竜種討伐同行など許してはくれないだろうと思ったが、怒られるのを覚悟して今回の討伐対象を話してみた。

 予想通りブチギレられたものの、アリスの話を聞けば少しは考えも変わる……かもしれない。


「私達黒夜叉は色相竜を討伐の際には伯爵様を含めた冒険者団、だいたい五十人くらいの見学ツアーを決行したわよ。まあ受付嬢が勝手に集めただけなんだけどね。竜種の、それも最上位の色相竜討伐を見学できるなら知識だけでもいい経験になるだろうって事で伯爵様も許したみたいよ?もしかしたら伯爵様が観たかっただけかもしれないけど」


「うん。頭の痛え話だ……確かにいい経験にゃなるかもしれねーけどよ。だが相手はモンスターの頂点、竜種だ。俺達でさえ勝てる保証はねーし、勝っても仲間が死ぬかもしれねぇ。そんなもん相手に素人を連れてくってのぁ許せる事じゃねーだろ」


 チェザリオ達サガはラウンローヤでも実力の知られる冒険者ではあるのだが、それでも竜種は別格でありこれまで発見したとしても挑む事はなかった。

 そもそもサガは討伐よりも、探索と省したモンスターの間引きに重点を置いたパーティーであり、強敵との戦いにはそれ相応の準備を整えてから討伐に向かっている。


「そんならおっさんも一緒に行くか?見学なら竜種分の報酬はわけてやれねーけど、道中のモンスター討伐分は俺らから払わせてもらうぜ」


「……え、いいのか?行く。行きてぇ!なあお前ら!」


 あっさりとマリオの誘いにのるチェザリオは、自分達が誘われないのに未熟な冒険者仲間を連れて行く事に腹を立てていただけではなかろうか。

(いや、このおっさん優しいしそんなはずはねぇ)とマリオは首を横に振っていたが。

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