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追放シーフの成り上がり  作者: 白銀 六花
127/257

127 下位竜討伐

 チェザリオ率いるサガの馴染みの酒場へとやって来た臨時パーティー。

 酒と料理を注文し、まずは軽くメンバーを紹介しつつ再会に乾杯。

 マリオ達からサガが黒夜叉に絡んだ理由について説明されると、アリスは納得と感心をしつつもっといい方法があるのではないかと問いかける。

 しかし実力者の多いこの街では問題を起こす者も多く、サガがこうして新参者に絡み始める以前は悲惨な目に遭う冒険者が後を立たなかったという。

 当時は新参者に揉め事を起こさないよう声を掛けてはみたものの、ある程度実力を身に付けた上でラウンローヤへとやって来ている為プライドが高く、サガの言う事を聞いてくれる者はそう多くはなかったとの事。

 それならばラウンローヤでは下位とはいえ、最初からある程度実力の知られている自分達と揉める事で新参者を格付けさせる方法を思いついたそうだ。

 圧倒的に格上であればラウンローヤの冒険者が絡む事もなくなり、対等、または格下であれば説得もできるし実力が見合わなければ追い返す事もできる。

 不器用な冒険者流の若者の守り方だと、照れながら語るチェザリオにマリオは「さすがおっさん!中身だけはいい男!」と称賛する。

 そしてチェザリオの言葉にアリスはマリオを見つめて手鎚を打ち、以前のマリオはプライドが高く元SS級だからと調子に乗っていたなと、うんうんと頷きながら納得する。

 フィオレはサガの在り方に驚きつつ、間違えば大怪我するし死んじゃうよと忠告すると、マリオには腕を斬り落とされたなと笑いながら以前の話で盛り上がり始めた。


 その後料理や酒を楽しみながら時間を過ごしていると他の冒険者パーティーからも声を掛けられるようになり、サガはラウンローヤ冒険者の受け入れ審査員みたいなものだからと、歓迎のボトルも入れてもらったりもした。

 ラウンローヤにある最高級の酒という事でアリスが喜んで呑み始めたのだが、フィオレはディーノの言いつけを守ってアリスの飲酒を制限。

 文句を言いつつも、フィオレが言う自分の立場を少し考えるべきだろうと、酒と果実水を交互に飲んで酔い過ぎないように気をつける。

 マリオとジェラルドは他のパーティーとも呑み交わし始め、いつもと違う馬鹿騒ぎのような酒の席を黒夜叉も楽しんだ。




 翌朝、ギルドに国王からの書簡を渡し、目的地を告げて出発する黒夜叉とブレイブ。

 魔境は他の地域とは異なり、常に危険と隣り合わせである為警戒を怠らずに進んでいく。

 また、今回は六人という事で二頭引きのいつもより一回り大きな幌付き馬車を用意してもらっており、一台での旅となる。

 御者席には防御に特化したジェラルドが座り、幌の側面を開け放った荷台には木箱を適当に配して布を張り、後方にアリスと左にフィオレとソーニャ、右にレナータとマリオとで周囲を警戒しながら、そう広くはない道を進んで行く。

 途中飛び出して来たモンスターをフィオレのインパクトで弾き飛ばし、駆け寄ったソーニャが一撃で首を掻き切る。

 前方から向かって来たモンスターをレナータの呪闇で昏倒させ、マリオがストリームスラッシュで瞬殺。

 後方から向かって来たモンスターはギリギリまで引き付け、アリスの炎槍で一撃の下に葬り去る。

 黒夜叉との合同パーティーであるだけでなく、実力をさらに高めたブレイブであれば馬車から降りたままでなくとも移動が可能なようだ。




 順調に旅路を辿り、昼を少し過ぎた頃には草木が少なく岩場の多い場所までやって来る。

 ここからはモンスターの出現は少ないが、馬車で進むのが難しい為途中からは歩きで目的地まで向かう必要がある。

 馬車を停めて飼葉を与え、少し遅めの昼食を摂りながら戦闘の最終打ち合わせを済ませる。

 戦闘が終わり次第ここで野営する予定となる為、昼食後は焚き火の準備をしてテントなども張っておく。

 女性用にはアリスがいつも野営でしているように馬車内に布を張って簡易ベッドとしているが。

 野営の準備が整い必要な回復薬類だけ持って出発だ。




 岩場の道を歩き進む事一時程。

 洞窟とまではいかないが、岩の裂け目を利用した雨除けになりそうな場所を寝床とした竜種が、縄張りへの侵入者に気付いて体を起こす。

 以前ブレイブが戦った竜種よりも一回り程小さく、個体が持つ存在感もやや劣る。


「ここなら下手に飛ばれたりはしねーだろうけど上からの落石が危ねぇな。ジェラルド一人じゃそっちにまで気が回んねーだろうしフィオレのインパクトが重要になるかもな」


「んー、あれならアリス一人でも勝てるんじゃない?もしかしたらマリオでも」


「いや、さすがに怖えわ」


「私だって嫌よ」


 フィオレの見立てではアリス程の戦闘能力があれば下位竜相手にソロで倒せるレベルであると感じているが、防御するにも力は足りず、全て回避する必要があるにも関わらず素早さが劣る時点で命懸け。

 間合いの長い槍を持つアリスといえども竜種と比べればリーチは足りず、攻撃するにもその懐へと飛び込む必要がある。

 しかしながらアリスの攻撃力は竜種の手足さえも貫き、動きを抑えてしまえば懐に潜り込むのも容易である為、フィオレとしてはアリスはソロでも勝てると踏んでいる。

 そしてフィオレ自身も目の前にいるこの下位竜であればソロでも勝てるかなと予想する。

 ディーノと出会ってから強敵との多くの経験を積み重ね、以前よりもインパクトの威力が大幅に上がった事で戦いの幅も広がっている。

 遠距離からのインパクトで敵を仰け反らせ、属性剣であるダガーの能力により姿を隠して接近、スキル待機時間が過ぎたところで近距離からのインパクトでトドメを刺す。

 おそらくはアリスよりも短い時間で竜種討伐も可能だろう。


 とはいえ二人共ソロで挑むつもりはなさそうなのでパーティーでこの竜種に挑む事にする。

「じゃあ予定通りに」と口にしたところで咆哮をあげた下位竜がパーティーへと四つ足で駆け、先頭に立つジェラルドへと右爪による横薙ぎを食らわせる。

 それをジェラルドはプロテクションを発動して受け止め、動きが止まったところにフィオレのインパクトが左下顎へと射ち込まれた。

 絶叫と共に上体を仰け反らせた下位竜の喉元にソーニャのエアレイドによる加速の乗ったダガーが突き立てられ、体を捻るようにして首筋を斬り裂く。

 そこへ駆け込んだアリスとマリオだったが、下位竜は後方に倒れ込みながら左爪を横に薙ぎ、それを伏せる事によって回避する。

 さらに倒れると同時に腹這いに回転し、尾を使って払い退けるも、振り返ったジェラルドがその巨体を受け止めて動きを抑え込む。

 目の前で受け止められた尾の付け根にアリスは炎槍を突き刺し、マリオは尾から背中へと駆け上がって跳躍すると、翼の付け根への突きからスラッシュの三連撃。

 一撃目が突き立てるところから始まった為三連に止まったものの、右翼を斬り落とす事に成功。

 悲鳴をあげた下位竜が地面に転がり込んだ為マリオもその勢いに背中から振り落とされてしまう。

 下位竜が転がった事で距離が離れたジェラルドに駆け寄ったレナータは回復スキルを発動し、アリスとソーニャもジェラルドの側に退避。

 この最初のターンでジェラルド以外はほぼ無傷、下位竜は満身創痍といっていいだろう。


「なんか余裕で勝てそうじゃないか?以前よりも一回りは小さいとはいえ竜種を相手にこんな……」


「私なんて何もしてないけど」


 ジェラルドとレナータも拍子抜けする程に手応えがない。

 それもその筈、以前戦った竜種はただ一回り大きいだけでなく、対等なモンスターと戦った事で成長していた為、下位竜の中でも強力な個体だったのだ。

 以前よりも高いステータスを持つブレイブであれば、通常の下位竜はそれ程苦戦する事なく討伐できる。

 そこにブレイブよりも評価値の高い黒夜叉の二人が加わったとすれば、圧倒するのも難しくはないだろう。


 転げ悶えた下位竜が起き上がり、後ろ足で立ち上がろうとするも尾の付け根が貫かれた事でバランスを保つ事ができない。

 四つん這いになりブレスを吐き出そうとするも、喉を斬り裂かれた事で血が込み上げてきてブレスを吐き出す事ができない。

 それでも戦意を失わない下位竜は血を吐き出しながらも咆哮をあげ、ジェラルドに向かって突進。

 再びプロテクションを発動したジェラルドは数歩分を引き摺られながらも受け止め、体をわずかに起こした下位竜ののし掛かりをも受け止める。

 下位竜が動きを止めた事を隙と見たソーニャとアリスが左右に別れて距離を詰め、ソーニャはエアレイドを発動して突き立てたダガーを振り抜き喉をバッサリと斬り開く。

 アリスは左の喉元へと炎槍を突き立て、最後の悪足掻きと振るった右爪がフィオレとレナータへと振り下ろされるもインパクトにより弾かれる。

 トドメは背中に再び駆け上がったマリオの振り下ろしからの五連撃。

 背骨が砕かれ後足が崩れ落ちると、抵抗する力を失い、地面に大量の血を広げながら命を尽きさせた。

 余裕を持って勝つ事はできたのだが、最後にのし掛かられたジェラルドが「助けてくれー!」と叫んでいたあたりは締まりがない。

 フィオレのインパクトで払い退けてジェラルドは解放された。

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