125 発見
「マリオ、やるじゃない。正直なところ勝てないかとも思ったわよ」
アリスは息を整えて空を見上げるマリオへと声を掛ける。
「あー、負けちまった。炎槍なしってハンデもらっても負けたんじゃ俺はまだまだだな。英雄騙るにはもっと強くなんねーと」
「早々に脱落した俺はどうすればいいんだ……」
アリスのバーンを真正面から受けてしまった時点でジェラルドは負けを認めている。
慣れや癖というものはなかなか抜けるものではない為、咄嗟の判断にも対応できるよう今後多くの訓練をする必要があるだろう。
「マリオすごいね。アリスを追い込めるだけでも他のS級ファイターより強いと思うけど」
多くの街を見てきたフィオレでさえマリオ程のファイターを見た事がない。
アリスと初めて連携を取った時と同じくらいの驚きをフィオレは覚えていた。
これにソーニャは嬉しそうに頷き「マリオは今後もっと強くなるから」と、自分の事のように喜ぶ。
今のマリオにはソーニャ自身勝てる気がせず、ブレイブのリーダーとして覚醒した姿に感動すら覚えてしまう。
レナータはフィオレがマリオを褒めた事に少し不満そうな表情をしているが、実際にこれ程までに成長しているとは今まで気付く事はなかった。
仲間の成長を喜びたい反面、この戦いに活躍できなかったレナータとしてはフィオレから褒めてもらえないのが悔しいのだろう。
「ところでその新しい剣はどうなの?相当重くなったんじゃないの?」
「ん?あー、これがよぉ、なんか思ったより手にしっくりくるって言うか、重くはなっても使い易いんだよな。鍛冶屋のおっさんが言うには溶かし込んだ魔核が何かしらの作用してるって話だけど……なんだっけ、忘れた。レナ覚えてねーか?」
マリオは忘れたというよりも新しい剣が装飾剣であり、嬉しさのあまり話を半分も聞いていなかったのだが。
「えーっとね、ティアマトとイスレロ?の魔核の相乗効果で強度と硬度がものすごく高いって言ってたかな。鍛えるの大変だったらしくて長々と語ってたし。あとはもったいないって言われたのにマリオが溶かさせた黄竜の魔核、装具に使ったからって魔力を引き出したじゃない。属性剣じゃないけど効果はあるんじゃないかって話で」
「体にビリってくるやつな。おかげで肩こりも全然ねーし助かってるぜ。コルラードさんから借りてた大剣の時は肩こり酷かったからな〜」
マリオはこのように効果を話しているが、実際は肩こりや体の痛みがとれるわけではなく雷属性による身体能力の上昇である。
気付く事ができないのはマリオの使用できる魔力量が小さく微増でしかない為だ。
そしてコルラードから借りていた大剣はマリオの剣よりも一回り大きく、この剣は結構軽いんだな〜と能力を勘違いしている。
実際の重さはコルラードの大剣よりも重く、ティアマトとイスレロの魔石により素材の圧縮率が非常に高い。
「へ〜、肩こり取れるの?槍も何気に背中痛むんだけど私も試していい?」
と、アリスが使用する事で本来の能力が明らかになる。
マリオの剣を受け取って魔力を流し込むとアリスの体からわずかではあるが放電現象が起こり、体の痛みが取れるのではなく全身が羽根のように軽くなったと錯覚する。
「え?え?なにこれ!?」
そして体だけでなく両手で抱える程の重さだったマリオの剣が片手でも持ち上げられる程に軽い。
「これ本当に肩こりが取れる剣なの!?違うんじゃない!?」
「いや、俺は取れたけど」
「え、だって!」とアリスは扱えない剣を右袈裟に振り下ろし、返す刃で左薙ぎに一閃して見せた。
その速度は剣の素人のそれではなく、達人とまではいかないもののかなり鋭いものだった事は誰の目にも疑いようがない。
「あれ〜?アリスも剣扱えるんだな。槍だけだと思ってたぜ」
ボケた事を言うマリオは額から汗が流れ落ちている。
能力を間違っていた事に気付いてしまったようだ。
「そんなわけないでしょ!?そもそも肩こりが取れる剣って何よ!黄竜の魔核の効果がそんなショボいはずないでしょ!?」
「え、なに?マリオの剣って何かあるの?」
マリオの驚くべき強さに感動していたソーニャだが、この不穏な空気に真実を知るべきだと思い問いかける。
「たぶん、だけど魔力による身体能力の強化が可能なんだと思うわ。黄竜は雷竜でもあるし雷属性の特性なのかも」
以前アリスが黄竜の魔核を単体で発動させた際にはあらゆる方向に放電する危険な物であったのだが、装備に溶かす事で発動する能力が変化したという事だろう。
ただこれまで色相竜の魔核を溶かして使うというもったいない使い方をする者がいなかった事から知られる事がなかったようだ。
アリスの言葉にそうかもしれないと思ったマリオは目を逸らし、この事実に驚愕の表情を見せたブレイブのメンバーは非難の視線をマリオに向ける。
「私の感動を今すぐ返せ!」
「俺だけ弱いままかと焦ったじゃないか!」
「ねぇわかる?これがマリオだよ?フィオレも見損なったでしょ?」
「見損なうとか酷い事言うなよ!」
「んー、ブレイブはおもしろいという事はわかった」
「一緒にしないで!」
ぎゃいぎゃいと騒ぎ始めたブレイブをよそにアリスは顎に手を当てて考え込み、宿に戻れば荷物に黄竜の魔核がいくつかある事を思い出す。
「ちょっと静かに!今はマリオを見損なってる場合じゃないわ!そんなの後にして!むしろこの大きな発見を喜ぶべきよ!」
「見損なうなよ。見直せよ」
「大きな発見?」
マリオのガッカリ感がブレイブにこの大きな発見に気付かせてくれないのだが、黄竜の魔核を持っているアリスとしてはこの期待は大きい。
「私、黄竜の魔核をいくつか持ってるの!これをみんなの装備に使えたら!?」
「あ、僕も持ってる」
「使えたら?」
まだピンとこないレナータが首を傾げ、ソーニャとジェラルドも同じよう首を傾げたところで答えに行き着いているフィオレが説明する。
「みんなの装備に黄竜の魔核を溶かし込めば身体能力を強化できるって事だね」
「「「え!?」」」
「魔核はあげるから装備作りましょ!」
ここでようやく身体能力強化の装備が手に入る事を理解し、「やったー!!」とソーニャが喜べばレナータとジェラルドもわっと盛り上がる。
「これに関してはマリオのお手柄よ!お店紹介して!」
「おお、行く、か?」
装備に溶かし込んで攻撃に使う能力でないなら武器に使用する必要もないだろう。
各々どんな装備を作るか相談しながら街へと帰る事にした。




