エピソード2「初めての悪魔召喚」
「やっぱお前、悪魔と契約もしてないな。それなら早く済ませた方がいいぜ」
「ごめん、ウシヤが何言ってるかさっぱりわからない。悪魔なんているわけ……」
と言いかけてボクはクラマ山で出会ったテングのことを思い出していた。あれはお伽噺の悪魔に似ていた。しかし悪魔召喚ってのはなんだ? ああいう奴を呼び出す? ボクが? 何のために?
しかしウシヤはさも重要なことのように言う。
「あちゃー。俺、先生呼んでくるわ」
「おい、ウシヤ。こんなところで油を売っていていいのか? 授業が始まっている時間だぞ」
ちょうど通りがかった壮年の男性が声を掛けてきた。あれは先程ボクを連れてきて出欠を取っていたホープマン先生じゃないか。
「おっホープマン先生、ちょうどいいところに。こいつ、悪魔召喚まだなんすよ」
「それは……では付き合おうか。ヤオリ、来なさい。ウシヤも」
「ほら、ぼさっとしてないで行くぜ」
ボクはウシヤに連れられてわけもわからず先生と共に空き教室に来た。広い部屋に三人だけだと不気味なくらい静かで不安になる。その静寂をウシヤが破る。
「じゃあ、早速だが悪魔を召喚してみろ」
「悪魔を召喚しろったって、どうすりゃいいのさ。何か必要なの?」
「学生証があるだろ」
そう言ってウシヤはボクの胸ポケットを軽く叩く。ボクは元が男だからいいが、女の子に対してその振る舞いはどうかと少し思った。というのはさておき学生証を取り出す。
「中に石の板が挟み込まれてるだろ」
「ああこれ? そういえば……何これ」
「魔石オベリスクだよ。そこに書かれた呪文を唱えて強く念じれば悪魔は呼び出せる」
ホープマン先生が口を挟んで説明する。
「なんて書いてあるか読めないんだけど」
「契約をしてみないことには読めんよ。契約内容によって書き換わるからな」
「じゃあ最初は呼び出せないってことになるんじゃ」
「ああ、最初に悪魔を呼び出すには決まった呪文があるんだぜ。確かええと……何だっけ先生?」
「来たれ夜明け前より暗き魔よ、我魔に魅入られし影の者」
「そう、それ」
「呪文を唱えるだけでいいの?」
「おうよ。後は出たとこ勝負だな」
どうにも気乗りはしない。思ったよりも簡単そうだが、そんなほいほい悪魔を呼び出したら食い殺されるんじゃないか? ボクは中々試せない。
「後で……とかは」
「今やった方がいい。先生も俺もついているから。本当はもっと多人数での立ち合いが必要なんだけどな」
「それはどうして」
「もし悪魔召喚に失敗して手に負えなくなった時は俺の悪魔が処理をする」
「処理……そんなことってある?」
「ああ、たとえばカイナの妹が」
「その話はやめておくといい」
先生はウシヤを制する。しかしボクはその先が気になった。カイナに妹が? まさかボクが使ってる部屋って……
だがそれ以上言及されることはなく、代わりにウシヤは急かす。
「まぁいいから召喚してみろ。じゃないと落第だぜ」
「落第?」
「この学園にはいられないってことだ」
「なんで」
「悪魔を使役して国を守るサキモリを育成する。それがキョート皇立学園、ということになっている」
先生が答えて、ボクは眩暈がした。何か話が出来過ぎていると思った。いきなり貴族のお屋敷に住まわせてもらって、何の見返りもないなんてことはないよな。カイナはボクをサキモリにするために学園に入れたのか。というかサキモリが悪魔を召喚するなんて話、初めて聞いたんだけど。
だが同時に理解する。この悪魔召喚という行為に生活がかかっているのだと。ハムエッグトーストを食べるためならなんてことはない、悪魔くらい使ってみせようじゃないか。アハハ。それにもしかしたらもしかすると、呼び出した悪魔が魔法でボクを男に戻してくれたりして。オーケー。ポジティブに考えよう。
「わかった……やってみるよ」
ボクは深呼吸をしてから、悪魔召喚に臨む。学生手帳を開き、オベリスクを指でなぞる。いくぞ。
「来たれ夜明け前より暗き魔よ、我魔に魅入られし影の者」
これで悪魔とやらが現れるはずだった。しかし実際には何も起こらない。静寂が辺りを包む。ウシヤはぽかんとした表情で、先生は興味深い風にボクを見つめている。
「あの、何も出ないけど……」
「そんなはずないんだが……」
「面白い、私も教師をして長いが初めてだ。悪魔を召喚出来ないなんて」
えっ、普通は出てくるものなのか悪魔。ボクは再び呪文を繰り返す。しかしやはり何の変化もなかった。
「イレギュラー、だな」
「おいおいヤオリお前、マジで落第かもな……」
「いやちょっと待って、二人ともボクが新入りだからってからかってるだけじゃないのか? 悪魔なんて本当はいなくてさ」
答えは帰ってこない。ウシヤは呆れた風にボクを見ていた。本当にボクがおかしいみたいだ。落第? どうしよう。
「まっ、まぁ調子悪いだけかもしれないぜ。カイナに悪魔召喚のコツとか教えてもらったらどうだ?」
明らかなフォローだった。気遣ってくれるのはありがたいがボクのショックを和らげるようなものではなかった。
「二人とも、授業に行くといい。また日を改めて行おう。それでは私も忙しいのでな」
そう言ってホープマン先生は先に出て行った。
「じゃ、俺達も行くか」
ウシヤは項垂れるボクの頭に手を置いた。どう反応すればいいのか、頭が真っ白でわからなかった。
「我らがキョート皇国とトーキョーとで100年もの戦争が今なお続いているが、何故トーキョーは長きに渡って対抗し続けているか。シェンフー、わかるな」
「はい。トーキョーは銃・大砲・爆弾それらを有する飛行機・戦艦などの禁じられた機械を平然と用いる野蛮人どもであるからです」
「模範的な回答ありがとう優等生。それに対しサキモリは悪魔を使役し幾度となく打ち破ってきた。ではオウサカの関での初戦で勝利に導いた英雄だが……」
授業の内容はあまり頭に入ってこない。こうして学園に通えるのも今日で最後かもしれないと思うと、勉強する意欲も湧いてこないのであった。
ただ気付いたことにはこうした授業の中でも悪魔という単語が平然と出てくる。悪魔悪魔悪魔……ここにいる自分と同年代の少年少女は皆悪魔を呼び出せるのだろうか。少なくともウシヤは出来るみたいだ。きっと、カイナも。そう思うと劣等感に苛まれる。
ボクみたいな田舎の木こりの孫がサキモリなんてエリートになれるわけがない。場違いなんだろうか。あのルーベンブルグのお屋敷も。
「何ボーっとしてるんだよヤオリ。授業、これで今日は終わっちまったぜ」
ウシヤが声を掛けてきた。彼くらいだ、ボクに話しかけてくれるのは。昏い気持ちでいたが、一人は友達を作れたことを喜ぶべきだろう。
「じゃあ俺は寮に帰るから。また明日な」
「うん……その、ありがとうウシヤ」
「何がだよ」
「ボクわからないことだらけでさ、色々教えてくれたり」
「気にすんな。お前がどうか知らないが、俺はお前のことを同志だと思っているから」
ウシヤは元気そうに手を振って教室から去っていった。ボクもとりあえずその場を出て、学園の入り口に向かって歩く。
そうしてどうやってお屋敷に帰ればいいのだろうと思ってうろうろしていたら、妙に人だかりができているのを見つけた。スカートを履いた女子ばかりだ。少し聞き耳を立てると「カイナ様」という単語が聞こえた。
ボクは意を決して人だかりに割り込む。すると中心にカイナがいるのがちらっと見えた。
「キャーカイナ様!」
「また明日ねカイナ様」
「おーいカイナ!」
ボクは女子達に負けじと声を張る。するとカイナの方がボクに気付いて向かってきた。
「ヤオリ、来い」
「カイナ様待って~」
カイナは強引にボクの腕を掴み、人だかりから抜け出す。全く、たいした人気者なんだな。
校門まで来ると見覚えある馬車が停まっていて、カイナはボクをそれに押し込んだ。馬車が走り出す。いの一番に彼は言う。
「ホープマン先生から話は聞いた。気にするな」
「知ってたの……」
悪魔召喚を試みて、全くできなかったことを。ボクは俯く。
「その、落第になったら、どうすればいいのボク」
「ヤオリを落第にはしない。仮定の話をするのは無駄だな」
「なぁカイナ、それってどういう」
「貴様は俺様のものだ。誰がとやかく言おうがそれだけは変わらないことを覚えておけ」
相変わらずカイナは唯我独尊なことを言う。ボクはあのことを思い出して問いかけてみる。
「それってさ、カイナの妹と何か関係ある?」
「聞いたのか?」
「いや、よくわからないけどボクはその代わりなんじゃないかなって思うんだけど……」
「ハスナの代わりなんていない。間違えるな」
カイナの語気がいつも以上に強くて、ボクはこれ以上聞き出すことはできないと判断した。結果としてこの会話は終わる。気まずくてボクは話を変える。
「そういえばカイナは悪魔を使えるんだよね? どんなのを呼び出すんだ? いやちょっと、参考までに」
「見たいか?」
カイナは不敵に笑う。これはどうも自信があるパターンだな。
「いつか見せてやる。その時を楽しみにするがいい」
その機会が割と間もなく訪れたのは、言うまでもないことだ。
ふぅ、とボクは今日も学園の教室に着くなり溜息をついた。
結局昨日は屋敷に帰ってからもメアリィさんからテーブルマナーや読み書きを教わって休まることがなかった。疲れる。しかしルーベンブルグ家の令嬢としては習得しなければいけないことだろう。幸いそれらは努力すれば身に着く。
問題は悪魔だった。実は屋敷でもこっそり呼び出そうとしたのだが、全くうんともすんとも言わなくて困った。本当に才能がないのかもしれない。カイナはああ言うが悪魔召喚ってやつができないと学園内でのボクの立場がないだろう。なので一刻も早く習得したいのだが……
「やぁヤオリ・ルーベンブルグ。ちょっといいかな」
誰も座りたがらないボクの隣に一人の男子が座ってきた。ウシヤかと思ったが違った。眼鏡を掛けていて知的な印象を与えるこの美男子は確か優等生とか呼ばれていた……
「僕はシェンフー。以後お見知りおきを」
「どうも」
「ウシヤから君のことは聞いているよ。悩んでいることがあるそうだね。僕でよかったら聞くよ。代わりにと言ったらなんだけど、昼休みにちょっと付き合ってくれないか」
「いいけど、何?」
「たいした用事じゃないさ。また後で声を掛けるよ」
シェンフーは用件だけ伝えると席を立ってしまった。代わりにウシヤが入ってくる。
「よおヤオリ、元気そうじゃないか。おはよ」
「おはようウシヤ」
ボクは見慣れた顔と声に少し安心する。ウシヤも変わりなさそうで良かった。しかしまたボクと授業に付き合ってくれるのかと思ったら、彼はすぐに出て行く。
「待って、どこ行くんだよ。もしかして違う授業受ける?」
「いや、乗り気じゃないから午前は授業受けない。また昼にでも会おうや」
そう言うなり鼻歌を歌いながらウシヤはどこかに行ってしまった。ボクは唖然とする。
流石にボクはサボタージュする気にはなれなくて、ウシヤのいない授業を受けることにした。
「魔大戦とは、かつてキョートもトーキョーも一つの国だった頃に起きた神と悪魔の限りなき戦いであり、一度神は悪魔に敗れたがスメラギが新たな現人神となって悪魔を征服し、今日に至るまでのキョートを……」
ボクは先程の授業の内容を口に出して反芻していた。何しろ試験というものがあるらしく、きっちり勉強しておかなくてはいけないようだった。ボクは貴族の令嬢っぽくないというウシヤの評を少しばかり気にしていて、ルーベンブルグ家の一員として恥ずかしい失態は犯したくないと思っていた。
だからこそ悪魔召喚ができないというのは困りものだ。何かいい方法があればいいのだけど……
そういえば、シェンフーという優等生がボクの相談に乗ってくれると言っていたな。彼からコツでも聞き出せないだろうか。ボクはキョロキョロと辺りを見回して眼鏡をかけた品のある男子を探す。ほどなくして見つけ、傍に寄ると向こうも気づいた。
「やぁヤオリ。約束通り来てくれたんだね」
「あっ昼にちょっと用事があるんだっけ?」
「ああ、ちょっと付いてきてくれないか」
ボクは深く考えずに了承し、シェンフーの後を歩き始める。そういえば彼、ネクタイの色は赤だからサーディアンなんだな。ウシヤとも親交があるみたいだし。けれどウシヤみたいな不良と並んでいるのはちょっと想像しづらかった。まぁサーディアンにもいろんな人がいるのだろう。何しろ数は一番多いのだから。
歩くにつれ、なんだかガヤガヤして騒々しくなってきた。人気のある所に向かっているのだろうか。シェンフーは何も言わない。だんだん早足になるのでボクもせっせこ足を動かす。
すると中庭に出て、ようやく騒いでいる声がハッキリ聴きとれるようになった。
「身分の格差を是正しろー! ファースタンとセカンドオンはサーディアンだけから税を取るのをやめろー!」
「ファースタンとセカンドオンだけで決めるなー! 三部会を招集しろー!」
ざっと一クラス分くらい学生達が集まって叫んでいた。一体これは何の騒ぎなんだろう。シェンフーはボクの手を取り、どんどん赤いネクタイの集団に近づいていく。まさかこれに加わるつもりなのか?
「ねぇシェンフー、これは何なんだ?」
「運動だよ。ファースタンとセカンドオンが優位に立っている状況を変えようと、同志が集まって改革を求めるんだ。この学園の中でなら自由な言論が認められているからね」
ああ、ウシヤが言ってた「同志」ってこういうことをする集まりだったのか。
「おお同志シェンフー、やっと来たか」
シェンフーとボクは屈強そうな男子に囲まれる。
「手筈通り連れて来たよ」
「流石だな!」
「メガホンを貸してくれるかい」
何か嫌な予感がする。まさかボクにもこの騒音団体に付き合えっていうんじゃないだろうな。
目線をシェンフーから外して周りを見渡す。するとウシヤの姿を見つけた。ボクは声を掛けようとしたが、シェンフーの大きな声に遮られた。
「えーカイナ・ルーベンブルグ! カイナ・ルーベンブルグに告げる! 現在我々はヤオリ・ルーベンブルグを預かっている。彼女を返してほしくば我々の要求を飲め!」
「なっ」
今なんて言った? それじゃあボク、人質ってことになるんじゃないか? シェンフーの誘いは罠だったんだ。カイナを陥れるための。ああなんてこった。
ボクは付き合ってられないとその場から逃げようとするが、屈強そうな男子が道を塞ぐ。通してもらえそうにない。シェンフーの方を見れば彼の眼鏡が光る。クソッ、その眼鏡かち割ってやろうか。だが今は女の体。かないっこない。
だからボクはウシヤに助けを求める。
「おーいウシヤ、ボクをここから出してくれないか!」
「すまねぇヤオリ、後でな」
ウシヤもグルだったのか。そうか、最初から利用するために近づいたんだ。そうでもなきゃあんなに優しくしてくれないよな。ボクは力なく項垂れる。人間不信に陥りそうだった。だんだん腹が立ってくる。
「カイナ、こんな奴らの言うことなんか聞くな! ボクは大丈夫だから!」
強がってボクは叫ぶ。しかしカイナは中庭に現れた。
「ヤオリを解放してもらおうか。下種共。話なら聞いてやる」
凛とした声、その立ち振る舞いはいつも通り優雅だ。しかし語気には怒りが含まれていた。
「ウシヤ、代表として頼む」
「おう」
シェンフーがウシヤに耳打ちすると、ウシヤは集団から前に出て、カイナと対峙した。彼は相手を指差し、宣言する。
「待ってたぜカイナよ。俺らの要求はこうだ。お前に決闘を申し込む! そして勝った方の言うことを聞く。どうだい、シンプルでいいだろ」
「何言ってるんだウシヤ、話が違うぞ!」
ずっと澄まし顔だったシェンフーは初めて狼狽して叫ぶ。だがウシヤは気にも留めていない風だった。
「赤だろうが青だろうが関係ない、力ある者が上に立つべきだ。そう思わないか。カイナさんよぅ」
「フッ」
カイナはそれを聞いて嘲笑する。前髪を手で掻き上げ、彼は言い返す。
「力ある者は正しく力を行使せねばならない。それを高貴な家は積み重ねてきた。貴様達にそれが出来るのか? いいだろう、特別に手本を見せてやる」
明らかに辺りの空気が変わった。カイナが発するプレッシャーをボクも感じ取れる。彼は胸ポケットから学生証を取り出し、開く。
「来たれ地に堕ちたる赤き気高き神の毒よ」
カイナの持つオベリスクが天に向かって光放ち、そして空が割れた。一陣の風が巻き起こる。ボクは思わず顔を手で覆う。そして再び目を開けた時には、空が割れてそいつが降りてきた。
全身が赤い蛇、しかも人一人丸呑みできそうなくらいの大蛇だ。そして蛇なのに立派な羽根が生えていた。目が合ったなら恐ろしく身動きできなくなる。だが纏わりつかれるカイナは平然としていた。
「サマエル……あれがルーベンブルグの悪魔……」
誰かがそんなことを言ったのを聞いた。あれはまさしく悪魔としか言いようがない。悪魔召喚。それをカイナは為した。正直恐ろしい。悪魔だけでなくカイナも。恐怖のあまりひれ伏したくなる気持ちだった。周りの威勢が良かった連中も静まり返っている。
だがこの状況でウシヤだけは不敵な笑みを浮かべクククと喉を鳴らしていた。彼はボクらに向かって言う。
「お前ら、もっと離れてろ。巻き込まれても知らねぇぜ」
サーディアンの学生達は蜘蛛の子散らすように中庭の端の方へ駆けていく。けれどボクはあまりに現実離れした状況にボーっとして突っ立っていた。そうしているとシェンフーがボクの腕を掴んだ。
「ヤオリ、こんなところにいると君も危ないぞ。ウシヤの悪魔は狂暴だ」
「来たれ百鬼夜行の王たる猛き修羅の鬼よ」
ウシヤも学生証を取り出し呪文を唱えた。すれば轟音を立てて地が割れて、中から巨人が湧きだした。身長の高いウシヤの二倍はある巨人、否、赤い肌に頭から生えた二本の角、そして鋭い牙は人ならざる者。鬼だ。あのお伽噺に出てくる鬼のようだった。突起の多い金棒をその手に握っている。
「ウシヤのシュテンドウジ……悪魔同士の戦いが始まる」
シェンフーはボクを引き連れながら口にする。赤い蛇と赤い鬼、二体の悪魔が睨み合う。ただならぬ雰囲気にボクは眩暈がした。
改めて思う。とんでもないところに来てしまったと。何もかもがボクの想像を超えていた。