エピローグ「第二次魔大戦」
悪魔王サタンの覚醒と共に、スメラギの遣わす四大天使、ミカエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエルはこれを取り囲んだ。
風が荒れ狂い、大地は唸った。炎は燃え上がり、都市は悲鳴を上げた。
悪魔と天使の戦いは苛烈を極めた。
だが結局は、悪魔王の前に四大天使は敗れ去り、羽根をもがれ露と消えた。
最早止められる者は誰もいない、と思いきや意外な軍勢がキョートの都上空に現れた。
それはトーキョーの飛行機の大群に見えた。だが違った。
後で知ったことだがトーキョーなんて国はとうになく、機械の軍勢とされてきたのは虚像に過ぎなかった。戦争は国民の意思を統一し支配しやすくするための装置だったのだ。
ではその正体は何か。これらもまたメタトロンという名の天使だった。
メタトロンは悪魔ごと都を爆撃する。これに対し悪魔王率いる悪魔軍団は戦いを挑んだ。またも熾烈な争いとなったが、やはり悪魔王が勝利を収めた。
悪魔王はキョートを離れ、どこへともなく消えた。
スメラギは死んだ。
その後のキョートは混迷を極めた。人間の方が悪魔より悪魔的ではないかというような恐ろしい事件は枚挙にいとまがない。何度も体制はひっくり返り、ファースタンもセカンドオンもサーディアンもない、共和制の確立までには長い長い時間を要した。
その最中私が祀り上げられたこともあったが、捨てられるのも早かった。
けれどそれも自分の役目だったのだろう。いや、運命とでも言うべきか。
もしかすると、あの悪魔王となる少年との出会いもそうかもしれなかった。
私は瀕死の重傷を負ったあの時、彼を引き留めることが出来なかったのをひどく後悔した。
あれほど手を離さないようにしていたのに。
彼はそう、私の家族であった。
最初は家族ごっこでしかなかったのかもしれない。妹を失ったことの埋め合わせをしようとして。でもいつしか本当に大切な存在になっていた。
ヤオリ・ルーベンブルグ。
その一人の人間を忘れないためにも、ここに記す。
カイナ・ルーベンブルグ著「第二次魔大戦」より
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