無駄な力
「パワーはある。まだ使ってないだけで技も沢山あるかもしれないし、その辺の戦士なんかよりは格段に強い。
だけど…この強大すぎるパワー…私にはちょっと扱いきれない…」
無理もない。
元々このパワーは魔王のモノ。
つい最近魔王になっただけの女子高生にそんなものが使いこなせるはずがない。
魔王の座に君臨しているだけでも奇跡なのに、それ以上のことは有り得ない。
先代魔王も穂積もミスを犯した。
先代魔王は素質のない女子高生を後継ぎに選び───
穂積はそれを癖で承諾し───
それで今に至るのだから。
「…ああ、あの時に戻りたい…」
運命は残酷だ。
何故こんなことになるのか。
そもそも何故異世界なんかに飛ばされてしまったのか。
戻りたい。
地位も名声も権力もいらない。ただ隣にいてくれるだけの───それだけの友が一人いてくれればそれで良いのだ。
「───」
ただ元住んでいた世界に戻りたいだけなのに。
それすら叶わない。
それはどんな多きな力にも代えられない、唯一の大切な願いなのに。
「───戻れないなら、いっそこの世界を…」
壊してしまおうか。
穂積は片手を天に掲げた。
途端、その手にあらゆる悪の力が集い始めた───。