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今日は昔の記憶を思い出したり王子との婚約を阻止したり色々あったせいかなかなか寝付けない。気分転換に外の空気にでも当たろうと思い窓を開ける。
「〜♪〜♪」
外の方から男性の心地よい歌声が聞こえてくる。その優しいけど少し影があるような声を聴きながら私は眠りについた。
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昨日はぐっすり寝られたなぁ。昨日歌ってた人のおかげかな?
「姫さま、起こしに来たヨ」
「あ、今日はロイが当番の日なのね。あ、着替えるからまってて」
ロイは家の執事をしてくれている10代後半の青年。
「うん。」
ロイはそう言って動く気配がない。
あれ?ロイが部屋から出て行ってくれないぞ?
「あ、あの…?ロイ?着替えるから出てってほしいんだけど…?」
「手伝うヨ?もしかして…恥ずかしいの?」
ニヤニヤしながらロイが言う。
「心配しなくても子供には興味ないヨ?」
身体は幼くても心は年頃の娘なんだぞ!と言いたかったけれどややこしくなるのでやめる。
そのかわり出て行けアピールでロイをぽかぽかと殴る。
「はいはい、出て行きますヨ。れでぃ?」
ロイは最後まで私を馬鹿にしながら出て行ったのだった。
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今日もなかなか寝付けなくて夜風に当たろうと窓を開ける。
「〜♪〜♪」
今日も誰かが歌っている。昨日と同じ人。やっぱり優しい声をしてるなぁ。
昨日はそんなに気にならなかったが、なぜこんな悲しい失恋ソングばっかり歌ってるんだろうか?誰が歌ってるんだろうか?気になって私はバルコニーに出た。
「〜♪〜♪」
声の聴こえる中庭の方へ顔を向ける。
「ロ、イ…?」
歌っていたのはロイだった。私の声に気付いたのかロイがこちらを向く。
「…っ?あ、姫様?」
「あ、どうもー…」
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「はい、紅茶だヨ。」
「うん、ありがとう。」
私は今ロイがいる中庭に来ていた。
「…。」
「…。」
き、気まずい…。お互いに沈黙。この静けさから抜け出すために私は気になっていた事を質問した。
「あ、そういえばロイは歌がうまいんだね!でもなんでロイはあんな悲しい歌ばかり歌ってるの?」
「ん?ありがとネ。なんで僕が悲しい曲ばかり歌ってるかって?僕が出来損ないだからかナ?」
そう言ってロイは笑う。だけどその目は笑っていなくて泣きそうな目をしていた