5,Kの正体
「おまえ、Kじゃない?Kの気じゃない?」
長身の白人の男は言った。
「だからそういってるだろ。こいつはKじゃない。Kの気が感じられない。似てるのは顔だけだ。おまえは、あの本に夢中になりすぎて気づいてなかったんだよ。」
もう一人の白人の男は言った。
「チッ、帰れ。もうお前に用はない。」
そう言って白人の男たちは、泣いている男の手錠を外した。泣いている男はその場から逃げるように走って行った。
「泣きまね、すごくお上手でしたよ。あと、Jacksonから逃げ出すところも。演技派ですね。もう一人の私は。」
そういって男は笑った。もう一人の男はまだ息が切れていた。
「あんたもだろ、Kさん。このメイク、もう落としていいか?これじゃ、おまえじゃねえかよ。」
もう一人の男も「ハァハァ」言いながら笑っていた。
「でも、メイクしなくても似てますよね、私たち。」
男は言った。
「ところで、ジジイはどうなった?」
もう一人の男が訊ねた。
「殺しましたよ。爺さんが残した遺書も捨てましたよ。私の正体が書かれてあったんで。」
男が答えている間にもう一人の男は真っ白の面をつけた。
「さぁ、はじめましょうか。」
暗闇の中、二人の男の不気味な笑い声が響いた。
「ガチャ」という音とともに、村瀬は帰ってきた。
「ただいま、帰りました。」
最後まで言い切らないうちに、Jonyは村瀬を殴った。
「えっ」
村瀬と静、二人の口から同時に声が漏れた。
「村瀬、おまえがKなんだろ。爺を、爺を返せ!」
Jonyは叫んだ。
「何言ってんの、J!そんなわけないじゃない。」
静も叫んだ。
「静、ちょっと黙っててくれ。おまえがKだってことは、初めから知ってんだよ!おまえとサン・マルコで会ったときから。」
村瀬は黙っていた。Jonyは続ける。
「おまえがクレイジアンの秘密のこと知ってたのは、俺と松本さんの会話を盗聴してたからだろ。盗聴してたから、松本さんがKの情報を持っていることがわかった。だから殺した。あんときから気づいてたよ。おまえがKだって。でもな、俺は知らないふりをした。爺や静まで殺されないように。でも、もうやめるわ。てか、もう無理。耐えられねえよ。K、おまえを殺す。」
「JOKERさん、なんですか?いきなり。僕はKじゃありませんよ。信じてくださいよ。お願いします。」
村瀬は泣きそうになりながらも、強く言葉を発した。しかし、Jonyは聞く耳を持たなかった。
「爺さんが死んだ?そんなこと知りませんよ。僕は今まで外国人にとらわれてたんです。JOKERさんも見てたでしょ。そんな状態で人を殺せるわけがない。なんで信じてくれないんですか?」
村瀬は一生懸命に訴えた。それを見ていた静は耐えられない様子だった。
「なんで村瀬のこと信じてやらないのよ。それに、村瀬はそんなことできる状況じゃなかった。J、信じてやって。」
静はJonyの胸ぐらを掴み、叫んだ。そして、その場に崩れ落ちた。そのときだった。「ガチャ」扉が開く音がした。三人いっせいに扉の方を見た。そこには、真っ白な面をつけた男が立っていた。その男は話し始めた。
「実際にお会いするのは、初めてですね。怪盗JOKERさん。Kです。今日は、貴方たちを殺しに来ました。」
その瞬間、空気が凍りついた。
「と、いうのは嘘で、今日は誤りに来ただけです。爺さんと松本さんを殺してしまい、申し訳ございません。しかし、殺さなければ私の正体がばれていた。なので、仕方ありませんでした。まぁお詫びと言ってはなんですが、爺さんの首を持ってきました。」
そう言って男は、手に持っていた正方形の箱をその場に落とした。Jonyたちは声が出なかった。
「では、失礼しました。」
男は部屋から出て行った。
「おい、待て!」
Jonyがそう叫び外に出たときには、もう男はいなかった。
8月19日午前0時
黒いフードをかぶった男は、コーラと包丁を持ってレジへと向かった。男は言った。
「お願いします。」
店員の女性はコーラと包丁を受け取り、会計を始めた。
「ありがとうございます。こちらの商品もいかが…」
男と目があった瞬間、店員の女性は男が買った包丁で自らを刺した。男はつぶやいた。
「本物か。」




