4,Jackの来日
「JOKERは、正義か?悪か?」
一面に、デカデカとそう書いてあった。その新聞が、飛ぶように売れる。そして、この男も、その新聞を読んでいた。それを、睨みつけながら。
「近藤さん。また新聞と、にらめっこしてるんですか?」
警官らしき男に名を呼ばれ、「ビクッ」とする。
「なんだ、菅野か。前にも言っただろ。俺は、こいつが世界で一番嫌いなんだよ。」
近藤と呼ばれた男は、顔を真っ赤に染めて言い放った。
「だからって、そんな怖い顔で読んでたら、通報されますよ。」
菅野という男は、ケラケラ笑いながら、からかうように言った。
「すまん、すまん。だがな、こいつはただの偽善者だ。わかるだろ。こいつがしてることは、ただの盗みだ。なのになぜ、正義と騒がれる!」
「はいはい。わかりました。」
菅野という男は、この話を何回も聞かされ、飽き飽きしていた。
「本当にわかってんのか!」
少し、声のボリュームを上げてきた。
「もう行きましょ、近藤さん。ここで怒っても、どうにもならないですから。死んだ母が言ってたんですよ。怒ったり、やり返してもなににもならないって。」
今は亡き母がくれた、手紙に書いてあった言葉をそのまま近藤に伝えた。
「わかってるよ!おまえのオカンの話なんて、どうだったっていいんだよ。ほら、早く行くぞ!」
近藤は、持っていた新聞紙をゴミ箱に突っ込み、速足で歩き始めた。
「なんで怒ってんすか。」
少し笑いながら、近藤についていく。
「怒ってねえよ。」
「爺がいないっ?」
Jonyは、声を上げた。家のどこを探しても、爺は、見つからなかった。
「まぁ、どっかいってるだろ。」
心配してないふりをして、Jonyは言った。でも、静はわかっていた。Jonyがどんなに不安かが。
突然、Jonyの体に「ビビッ」と何かが、走った。
「誰か来る。」
「誰かって、誰よ。」
静は、少し怒った口調で言った。
「クレイジアン。わかるんだ、なんか。勘と似た、でも違うなんかで。」
Jonyの体に、冷や汗が流れている。
「えっ、クレイジアン?」
この男の声はいつも震えていたが、今回は格別に震えた声だった。
「言ってる意味わかんない。」
静も焦っていた。
この中で、一番気の弱い男は声だけでなく、身体もガタガタ震えていた。
「ク、ク、クレイジィア、アンが、きゅるん、来るんですか?」
最後まで言い終わらないうちに、扉が開く音がした。そして、大柄な白人男性が二人入ってきた。
「hello,everyone.My name is…」
二人のうちの背の高い方の男は、突然英語で話し始めた。
「なに言ってんの? 全然わかんないんだけど」
静がそう言うと、Jonyは通訳し始めた。
「こんにちは、みなさん。私の名前は、Alex Jacksonです。初めまして、怪盗JOKER。あなたの噂は、アメリカまで届いています。じゃあ、本題に入りましょう。クレイジアンの秘密の情報というものがあるらしいですね。それと、この男を私たちに速やかに渡して下さい?村瀬を?」
長身の白人から指を指された男の目からは、涙が溢れいた。白人は、続けた。Jonyも和訳を続ける。
「さもなければ、あなた方の命はありません?はーっ?なんでだよ!」
Jonyは、その白人に英語で何かを言い返してる。
「ぼ、僕、行きます。だから殺さないで」
男は泣きながら、大声で叫んだ。男の顔はもう涙と鼻水でグチョクチョだった。そして、Jonyが何かを言い終えた瞬間、そこにあった椅子が「バキッ」と音を立てて吹っ飛んでいった。続けてJonyが飛んでいく。
「テメェ!怒羅亜ぁぁ」
Jonyが襲いかかるが、白人の男は、ビクともしない。そして、もう一人の方の男に吹き飛ばされた。家の中は、グチャグチャになった。一瞬で。白人の男たちは、部屋の奥へと進んでいった。
「どこへ行く?」
Jonyが叫ぼうとするが、声が出ない。他の二人は、唖然としていた。しかし、男たちは戻ってきた。一冊の本を持って。その本は、ボロボロに剥げていて、ホコリまみれだった。その本の表紙には「CRAZIAN」と、いう文字が示されていた。
気づけば、グチャグチャの部屋に二人だった。人間の十倍もの能力を持つクレイジアンの中でも、ずば抜けて強かったJonyがたった二発でKO。静にとって、そのショックは計り知れないものだった。
「計画は、中止にしよう。」
耳を澄まさなければ、聞こえないくらいの声でJonyは言った。静はなにも言わず、目を閉じた。
11月18日午前8時。日本中のTVの電源がついた。画面には、村瀬のような男が映っていた。
「犯行声明。明日、渋谷の町は大混乱となる。神の裁きを受けるのだ。覚悟しておけ。」
画面に映る男は、そう言った。TVの画面が消えると同時にPCの画面がついた。画面には「K」の文字が。
「爺と呼ばれていた男は殺しました。彼は私の正体を暴いていました。そしてJonyさん、貴方に伝えようとしていました。なので、殺しました。ありがとう。爺さんの遺言です。愛されていたんですね。貴方の為に死ねて本望なんじゃないですか?では、御機嫌よう。」




