3,母の想い
「結局、Kも外したな。」
若い警官が言った。少し笑いながら。
「いやでもさ、時間だけじゃん。それより、なんでJOKERがサン・マルコを狙ったかだろ。JOKERは、違法に手に入れた金しか盗まないんじゃなかったのかよ。」
Kという人物をかばうようにもう一人の男が言った。その瞬間、空気が凍った。
「いや、金盗まれてないじゃん。もしかして、偽物のJOKERだったとか。」
若い警官が冗談半分で言うと、場の空気が少し良くなった。
「それ以前に、なんでJOKERのことをここで話し合うんだよ。俺は納得してないからな。」少し年配の警官が納得いかない様子で言った。
「いや、それは…」
それ以上、声にならなかった。
ここは、「クレイジアン対策秘密本部」。なぜJOKERのことを話し合ってるかというと、数日前に送られてきた手紙にあることが書いてあったからだ。
「彼はクレイジアンです。」
さすがに皆、驚いた。が、世界的名探偵の言うことを信じれないことはなかった。確かに、並外れた身体能力の持ち主だ。クレイジアンなのかもしれない、彼らは、それを信じ、ここでJOKER対策をするようになった。
「ブチッ」この部屋にあった、全てのPCが立ちあがった。そして、「K」の文字が。
「こんにちは、明日から捜査に参加するKです。前も言ったでしょ。JOKERは、クレイジアンだと。ここで話し合う理由は、それだけでいいはずです。では、本題に入ります。松岡さん、先ほど「なんで、サン・マルコを狙ったのか」とか言ってましたね。なぜか知りたいですか?」
「何処にいる、K!姿をみせろ!」
警官の中の一人が叫んだ。
「23区内にいますよ。姿を見せることは出来ません。無駄話はこのへんにして、本題に入ります。サン・マルコ大聖堂には、クレイジアンの秘密が、隠されていました。JOKERは、それを盗んだのでしょう。これでJOKERがクレイジアンだとわかっていただけましたか?しかし、JOKERは、しばらく現れないでしょう。その理由はまた今度。ここからは、クレイジアンのことです。私は誰がクレイジアンか見分けがつきます。」
「どうやって、見分けをつける。」
今度は、別の警官がKに話しかけた。
「勘です。問題点は、そこです。死んでいないと、人間か、クレイジアンかの見分けがつかない。しかし、私ならわかります。ただの勘ですが、98パーセントの確率で当たります。ニューヨークでは、153匹のクレイジアンを処分しました。しかし、このことに対してクレイジアンたちは、反撃してきました。クレイジアンは、普段はおとなしい性格なのですが、仲間に何かがあると人格が変わったように暴れ出します。そして、多くの犠牲が出ました。なので、多少の犠牲は覚悟しておいてください。近いうちに、反乱があるでしょう。では、さようなら。」
「おい、K!まて!」
若い警官がそう叫んだときには、もう画面から「K」の文字は消えていた。
「おい、村瀬どこ行ってたんだ」
男は少し怒っていた。
「あ、ちょっと仕事に」
村瀬は、少し申し訳なさそうに言った
「そうか。出かけるぞ、ついてこい。」
男は、いつもより強い口調でそう言った。
「あ、はい。どこにですか」
少し、間が空いた。そして、男の口が開いた。
「Kをつぶしに行く。」
「殺すんですか」
悲しそうに、村瀬は言った。
「人を殺さないのがJOKERなんじゃないんですか!」
今まで、聞いたことのないような、声だった。発した本人が、一番驚いている。
「どーすんの、J。村瀬も、こう言ってるんだし。ここで殺したら、あいつらといっしょだよ。」
その瞬間、男の頭の中には、一人の女性の姿が浮かんだ。
「Jony、よく聞いて。明日から、あなたは一人で生きていくの。なので、今から大切な話をします。」
「なんで?母さんは?」
幼いころのJonyが訊ねる。
「お母さんは、いなくなるの。あなたなら、大丈夫。」
Jonyの母は、優しく言った。
「どこに行くの?」
「ずっと遠いところ。ねえ、聞いてJony。これからあなたにはたくさん、つらいことや悲しいことが起こります。でもね、それに対して怒ったり、やり返したりしてはいけません。」
「なんで?」
「怒ったって何も変わりません。やり返したら、彼らと同じになってしまいます。だから、耐えてください。耐えて、耐えて、耐え抜いた先に、必ず光が待っています。だから、その光を信じてください。」
男は気持ちを切り替え、こう言った。
「わかったよ。じゃあ、盗みに行こう。」
「えっ!」
村瀬は、ポカーンとしている。男は、続けた。
「Kが松本さんを殺した理由は、二つある。ひとつは、自分の情報が漏れるのを防ぐため。もうひとつは、クレイジアンの捜査に集中したいから。」
「なんで、松本さんを殺すことで、集中できるようになるの?」
静は、さっぱりわからないという顔をしていた。
「俺が盗みに出るのをやめると思ったからだよ。やつは、俺と松本さんの仲がいいのを知っていた。だからわざわざ、調査に参加する前日に殺したんだろう。俺が立ち直れなくなるとでも思ったか、K。日時だが、今回は未定だ。いま日本ではクレイジアンが大量に殺されている。クレイジアンは、仲間の死にすごく敏感だ。だから、今日か明日にはクレイジアンが反乱を起こす。そこが狙い目だ。」
「天才ですね。Kも頭いいですけど。」
村瀬は、茶化すように男をほめた。
「爺に伝えてくる。」
静は、奥の部屋へ行った。
「おう。じゃあ、行くか。」
「Kが、JAPANに逃げたってよ。」
長身の男が、もう一人の男に話しかける。
「ああ、しかもそこでまた殺ったらしい。JAPANへ行くか、Alex・Jackson?」
Alex・Jacksonと呼ばれた男は答えた。
「JAPANには怪盗JOKERという、Japanese Ninjaがいるらしい。それも、人間じゃない、クレイジアンだ。おもしろそうだし、行ってみるか。もう一度、Kをつぶしに。」




