7,手ぬぐい
「ここは?」
Jonyは目を開けると辺りを見回した。
「俺んちです。」
そう口にしたのは俊介だった。ここは怪盗JOKERのアジトから10キロ以上離れた場所にあるアパートの一室だった。
「それより、陽菜子と美来、アモンは?」
俊介はまだ横になっているJonyの肩をゆすって訊いた。
「は?誰だよ。それより伝説の書もなかったんだよ。」
そう言い放ったJonyの頭には一人の男の顔がよぎっていた。男の名はAce、世界最強の殺し屋。金を積めばどんな汚れ仕事も引き受ける仕事人。
「陽菜子はあんときの俺の彼女で、美来は俺と陽菜子の娘で…」
俊介がそこまで言ったところでJonyは飛び起きた。
「おいおいおいおい、何さらっと言っちゃてんの?童顔のくせして。もう子作りか?え?」
Jonyは俊介に顔を近づけて言った。
「まだ産まれたばっかっすよ。それよりいないんすよ、その三人が。陽菜子と美来はあそこにいたんすよ!どうするんすか!」
そのときだった。「ヴヴヴ」という音がJonyの携帯から鳴った。Jonyは携帯を手に取り、その電話に出た。
「誰だ…チッ、またあんたか…わかりましたよ…その二人に絶対手出さないでくださいよ…はい、はい、わかりました。」
Jonyは電話を切ると、いつもの真っ黒の服に着替え、ひょっとこの手ぬぐいを頭に括り付けた。
「何してんすか?」
そう言った俊介も準備は出来ているようだった。
「何って、助けに行くんだろ。」
そう言うとJonyは玄関のドアを開けた。
「じゃなくて、顔ですよ。何で手ぬぐい?」
「あー、これか?」
Jonyが顔に巻きつけている手ぬぐいを指差したので、俊介は「うんうん」という風にうなずいた。
「静から貰ったんだよ。手ぬぐいお面って言うんだってさ。穴も開いてるし、こっちの方が動きやすいからなぁ。」
Jonyはそれだけ言うと出て行ってしまった。俊介も急いでそれを追いかけた。
「遅かったなあ。もう少しで殺してるとこだったよ。」
その声の主はAceだった。
「人に毒ガス吸わせといて言う台詞すか?」
JOKERの声は手ぬぐいの下からなのか少し濁っていた。
「誰が人だって?バケモンが。」
そう言ってAceは、陽菜子に向けていた銃口をJOKERの方へ向けた。
「バキュン、バキュン」
二発の銃弾はJOKERめがけて飛んで行った。が、JOKERは二発ともいとも簡単に避けて見せた。
「てか、あんただってバケモノっすよね。」
JOKERは、地面を転がる二つの銃弾を拾いながらそう言った。
「勘違いすんな。人間じゃない生物がバケモンなんじゃねえ。それだったら地球上バケモンだらけだ。クレイジアンという種族がバケモンなんだよ。」
Aceはそう言うと、もう一度陽菜子に銃口を向けた。
「あんたこそ勘違いしてるんじゃないっすか?俺は種族がどーだとかの話をしてるんじゃないっすよ。そう簡単に命を奪えるあんたの腐った心のことを言ってんすよ。」
そう言って手に持っていた銃弾を投げた。しかしその銃弾はAceを外した。
「どこ狙ってんだよ、ノーコンが。」
Aceがそう言ったときだった。
「ガシャン」
大きな音とともに後ろの鉄パイプが倒れてきた。ほんの一瞬、Aceが後ろを振り返った。その瞬間、JOKERと俊介は一気に走り出した。そしてJOKERは美来を、俊介は陽菜子をAceの元から引き離した。
「クッ、下らん。」
Aceは鉄パイプを避けていた。
「所詮、おまえらはただのクズ。こうなったら力ずくで奪うだけだ。」
そう言うとAceはじわじわとJOKERらの方へ近寄っていく。
「おまえの狙いは何だ!」
俊介はビビりながらも声を上げた。
「伝説の書だよ。」
Aceは笑いながらそう言った。




