2,JOKERとKing
怪盗JOKER @kaito_joker
今日は、イタリアにやってきました。サン・マルコ大聖堂へいってきま~す。
時計は、午後10時を指していた。月は、三日月といったところだろう。全身真っ黒の男が、大きな建物を見上げていた。「ウー」というサイレンとともに、パトカーが到着した。その瞬間、男は全速力で走りだした。建物とは、逆の方向へ。そして、仲間が用意したであろう車に乗り込んだ。車といっても、ただの車ではない。金色のワゴン車だ。
「前の車、止まりなさい!」
パトカーから、日本語で声がした。
「どうするんですか?」
気の弱そうな男がしゃべる。と、同時に残りの二人が口をそろえて「だまれ」と発する。三人を乗せた輝くワゴン車まるで、レースをしているかのようなスピードでパトカーをつきはなして走って行った。
一時間前
「誰だお前?日本人か?」
全身真っ黒の男から声がする。
「あ、はい。あなたは?」
とても気の弱そうな男が返事をする。
「怪盗JOKERだけど。知ってる?てか、今日のツイート見た?」
「見ましたけど。ほ、ほんものですか?」
気の弱そうな男は、驚きを隠せない様子だった。
「てか、何してんの?」
「えーっと、私ジャーナリストでして。あ、村瀬勝彦といいます。あのーそれでですね、ここにクレイジアンの秘密があると聞きましてそれを、そのー盗むというか、あのー、まーそんな感じです。」
「おまえもか。てかなんでそれ知ってんだ?でも、俺の物だ。ワリィな。」
全身真っ黒の男は、右手に持った本を見せてそう言った。
「あのー、ついて行ってもいいでしょうか?」
「べつにいいけど」
あの本を盗んでから、丸三日経っていたが、Jonyは、本の内容を誰にも話さなかった。
「おまえみたいなやつ、つれてこなきゃよかった。」
村瀬という男が来てから、沈黙がなくなった。というより、場が明るくなった。Jonyは、冗談交じりに嫌味を言いながら、そう思っていた。村瀬が来るまでは、この薄暗い地下室にJonyと静と爺の三人で住んでいた。それまでは、用がないときは、自分の部屋にこもっていた。でも、一人増えた途端みんなが集まるようになった。
「てか、なんでJOKERなんですか?」
村瀬は少しニヤニヤしながら聞いた?
「トランプが好きだから。それだけだけど。」
Jonyから面倒くさいオーラがプンプン出ていた。
「なんで?キングとか、かっこいいじゃないですか?」
村瀬は食いついた。
「なんで、なんでうるさいな。」
もう寝たい、Jonyはそう思っていた。しかし、村瀬の次の質問でJonyの目が一気に覚めた。
「すいません。じゃあ、なんでクレイジアンの秘密が必要なんですか?まさかあなたが、あの伝説の生き物だったりして。いや、クレイジアンのことですよ〜。」
その瞬間、その場が凍りついた。村瀬は、少し驚いた顔をしていたが、その場の空気に気づき、少し反省した様子で俯いた。爺は部屋に戻り、静はその場で横になり、目を閉じた。それから数分後、Jonyと村瀬が同時に口を開いた。しかし、村瀬の声は、声になっていなかった。
「そうだよ。俺、クレイジアンなんだ。」
静の目が開いた。村瀬はまだ、口を開けている。
「なんだよ〜。なんでそんな暗いんだよ。」
明らかな作り笑いでJonyが場を和ませようとするが、三人とも黙ったままそれぞれの部屋へと戻っていった。
「速報です。東京都新宿区内で、遺体が発見されました。死亡推定時刻は、午前3時から5時。被害者は、松本 清志さん、30歳。…」
開いた口がふさがらない、とはこのことか、というぐらいポカーンとしていた。
「どうしたのJ?ずっと口開いてるけど。」
静に言われ、やっと気づいたようすのJonyは、一口水を飲みこう言った。
「俺、この人に一昨日あったんだよ。多分、犯人はKだと思う。」
一昨日
「ガチャ」扉の開く音とともに、Jonyが入ってきた。
「金、持ってきましたよ。」
Jonyは言った。
「お!サンキュ。で、サン・マルコ大聖堂には、行くのか?」
まだ若いメガネヒゲの男がそう答えた。
「明日、行きますわ。てか、行かなかったらこの金、なんのために渡すんすか?」
Jonyは笑っている。
「まぁ、そうだな。じゃ、頑張れよ。」
メガネヒゲの男は金を数えながら、返事をした。
「ありがとうございます。」
Jonyはこの男の前ではいつも笑顔だった。
「あ、そうだ!おまえにKの情報教えてやるよ。情報って言うか、サイトのURLなんだけどな。おまえハッキングの天才だろ。おれじゃ無理だけど、おまえなら余裕だろ。えーっと、ちょっと待てよ。」
メガネヒゲ男は、PCをいじり始めた。しかし、打つのがかなり遅い。あまり、慣れていないようだった。
「あ、大丈夫っすよ。次、来たときでいいですわ。」
Jonyはやれやれという感じで、店長らしき男の後ろ姿を見ていた。
「本当か?悪いな。じゃあ探しとくわ。」
メガネヒゲの男はJonyに手を振った。
「ありがとうございます。では。」
Jonyにいつも優しく接してくれていた男だった。
「松本さん…」机の上には、水たまりができていた。気づけばこぶしをにぎっていた。
「ブヂッ。」TVの画面がいきなり黒くなった。
「なにこれ!」
しばらくすると、画面にKの文字が。
「おはようございます。JOKERさん。いや、Jony・Trumpさん。Kです。私は、ずっと貴方を見ています。貴方の全てを知っています。そういえば、最近「クレイジアン対策秘密本部」というのができたらしいですよ。私も明日から参加することになりました。そこには、確かAlfred・Trumpという方もいました。偽名を使っているみたいですけど。いや、これは貴方の弟だと言っているのではありません。こんな人もいますよ、と伝えたかっただけです。人という表現は、適していなかったかもしれません。人であればいいんですが。お時間とらせてしまい、すいません。では、また。」
TVの声が消えると、時計の秒針の音がとても大きく聞こえた。




