3,必然
「松本さんと村瀬が繋がってたってことは、全て村瀬の計画だったってことか…」
ポツリと呟かれたその言葉は、美来の泣き声にかき消されそうなくらい小さかった。
「えっ?それ、どういうことだよ。」
俊介はそれを呟いた男に問いた。
「松本さんから伝説の書の場所聞いたらしいんだ、兄貴。でも、なんで…わかんねえよ。村瀬が何考えてたのか。死んでるから訊きようないし。なんでJOKERに…」
「えっ、村瀬って死んでるの?」
男の話をさえぎるアモンの声がした。その声は俊介らの度肝を抜いた。
「もし、生きてたら…兄さんだって生きてるんだから、可能性はゼロじゃないよね。」
男は考えもしてなかった。もし、村瀬が生きてたら…
「松本さんをJOKERとして使い、俺らと久微視を会わせる。狙いは伝説の書か…いや、あいつにとって伝説の書はもう要らないはず。じゃなきゃ、伝説の書を兄貴と出会うための道具として使うわけがない。じゃあ…狙いは…」
久微視は、暗闇の中AIと話していた
「松本、殺しましたよ。」
「有難うございます。では、松本さんの所にあるAIも回収してきてください。松本さんにはJacksonに誘拐されたときに死んでもらうつもりでしたが、彼のお蔭で貴方がJOKERと出会えたのなら、彼にも少しは存在価値があったのでしょう。」
AIは続ける。
「もうじき、彼らは貴方に会いに来るでしょう。そしてそこで、伝説の書を奪うのです。後はこの汚らわしいクズ達を生贄に、スペードの効果を使うだけ。宜しくお願いしますよ、使用人さん。」
「お任せください、Liam様。」
久微視は頭を下げ一言言うと、その場から立ち去った。それと同時に人工知能もシャットダウンする。シャットダウンが完了すると、そこはとても静かになった。牢獄の中に閉じ込められ、クズと呼ばれたクレイジアン達の声を除いては。
「ブラックホール⁈」
杉山の叫ぶ声に、周りの人たちがビックリした。
「声がデカイ!」
近藤は、杉山にしか聞こえないくらいの声で言った。
「あっ、すみません。」
近藤は、周りが再び仕事を始めたのを確認すると小声で話し始めた。
「ブラックホールっていうか、なんていうかわからないけど。とりあえず、宇宙が歪み始めてる。昨日も夜中に金星が見えたそうだ。」
杉山は「えー」という口の形を作っているが音が出ていない。
「絶対誰にも言うなよ。絶対だからな。」
近藤は念入りに忠告する。
「みんな分かってるでしょ、ニュースにもなってるし。」
杉山は軽い感じで答えている。
「月とか金星のことはな。宇宙が歪んでることは、世界政府と俺とおまえしか知らねえんだよ。」
近藤の声が少しずつ大きくなっていく。
「えっ、てことは?てことは?俺を信用してくれてるって事っすよね。ですよね、近藤さん。」
近藤はそれを無視し、屋上へ向かった。屋上に着くとタバコを取り出し、火をつける。そして近藤の目には、また満月が映る。
「今、何が起こってるんだ。」
「ヘローヘロー。会いたかったよ、QUEENさん。」
QUEENが部屋に戻るとその男はいた。
「誰よ、どこから入ってきたの。」
「おー、JAPAN語ペラペラじゃん。別にすごいとか思わないけど。今日はね、宣戦布告しに来た。」
そう言いながらその男は部屋の中をうろうろしていた。
「は?あなたは誰なの?どうしてここに入れたの?」
そう言うとQUEENは男の腕をつかんだ。
「力強いなー。」
「ガシャン」男の声と同時にQUEENは振り払われ、弾き飛ばされた。
「あなたは一体…」
「世界政府の人ならわかるよね、加観雪鬼だよ。バイバイ、また会おうね。」
男はそう言って窓から飛び降りた。




