2,狂い
「ほら、言ったとうりじゃん。」
男はパフェを食べながらそう言った。周りには誰もいない。独り言だ。
「あいつ、今頃びっくりしてるだろーな。」
そう言ってスプーンをTVに向って投げた。「ガシャン」スプーンは画面に映るQUEENの顔に命中した。画面の破片が、男の座ってるソファーの近くまで飛んでくる。そして一言。
「気に入らない、死ね。」
「偽物の偽物?」
俊介らの頭の中は混乱状態だった。
「あー、そうだよ。俺が本物のK、村瀬って男は偽物のK、こいつは村瀬の指示で動いてた偽物の偽物。」
そう言うと久微視は、撃たれた男に寄り添った。そして、男の首元をいじりだした。
「確かに今までの村瀬からは何か…ほんの少しクレイジアンの気が感じられたけど、こいつからは…」
アモンがそう言ったとき、男の首の皮がめくれ始めた。それは顔までつながるものだった。その皮を全てはがし切りしばらくしたとき、JOKERは全てを察した。
「松本さん…」
村瀬の面をとったその顔は、兄貴より少し若いくらいの青年だった。そしてその青年の顔は、どこかで見たことのある顔だった。そしてJOKERはその、ある顔の人物を覚えていた。メガネをかけ、モジャモジャのヒゲをした老人、松本のことを。
「正解。こいつ、ヒゲ生やして、メガネかけて老人に化けてたんだろ。しかも本物のJOKERはこいつに騙されて金渡してたんだろ、大量に。知ったらショックだろうな。随分信用してたらしいし。」
久微視は、松本を見ながら言った。そして続けた。
「じゃあな、偽物さん。」
「グシャ」久微視は松本の顔を踏みつぶした。俊介らは言葉が出なかった。
「おまえは本当にKか?騙してるんじゃないだろうな。」
唯一冷静なJOKERは、Kと名乗る久微視を疑っていた。
「本物だよ。5年前、俺は村瀬に殺された。いや、殺されかけた。でもあっちは殺したと思ったらしい。で、村瀬はKを名乗るようになった。その証拠に、5年前を境にKの行動や事件の解決方法が明らかに変わってる。5年前までは人の命最優先、クレイジアンまでも助けようとした。さすがに世界政府に止められたが。でも村瀬の偽Kはどうだ。人の命より事件解決、世界政府にまで手を貸してクレイジアン対策本部に加わった。5年前まで世界政府と対立してたやつがとる行動か?」
久微視はそう言ったが、JOKERはまだ納得していない様子だった。
「それはおまえがKだという証拠になっていない。Kが変わった?どうでもいいんだよ。おまえ、偽物だろ。」
「まあ、落ち着いて。悪い人じゃないかもしれないじゃん。」
アモンは熱くなるJOKERを止めた。
「落ち着いてられるかよ。こいつは何か企んでる顔だ。だいたいおまえら、甘いんだよ。俺が来たときもすんなり受け入れて…おい久微視、俺らに近づいて何する気だ!」
久微視はJOKERの言葉を無視した。
「でも5年前とそんなに人が変わったら、普通気づくだろ。」
俊介は、突然何かを思い出したかのように言った。
「普通は…な。村瀬と世界政府は手を組んでるよ。だって村瀬は世界政府のトップ、近藤修三のボディーガードだからな。もちろん、加観は村瀬が元クレイジアンだったとは知らない。」
久微視の言葉を聞いて、JOKERの血の気が一気に引いた。
「へぇ、よく知ってるじゃん。」
JOKERはそう言って笑った。そして、コントローラーを拾い、そこから出て行った。アモンもそれに続く。しかし、俊介だけはその場に固まっていた。
「昨日、満月でしたね。いやー、甥っ子が喜んで本当にかわいかったんすよ。」
杉山は嬉しそうに近藤に話しかけた。
「は?満月って一昨日だろ?」
杉山は近藤がボケているのだと思い突っ込んだ。
「何ボケてんすか、昨日っすよ。」
「あーそう、どっちでもいいわ。」
近藤は適当に答え、たばこを吸いに屋上へ向かった。
「ガチャ」扉を開けると、そこには大きな月があった。
「満…月…」




