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明王の流した涙

俺の名は不動仁王ふどうにおう

その名の通り不動明王だ。ちなみに星野天使の実兄でもある。

明王の仕事は怒りを以ってガキ(人間)共を正しき道へ導くこと。

今日も俺は私欲にまみれたガキ共を往生させてる。


「あり得ぬ。ガキ共の煩悩を断ち切り、正しい道へ導くはずのこの俺が……」

自分の怒りのあまり、全身からオーラが放たれ、地面を抉る。

「この俺が、男の娘の愛らしさに心を奪われてしまったのだあああああああああああっ」

咆哮により巨大な岩石は破壊され、草木一本も残らない廃墟と化した荒野に、俺はひとり仁王立ちになり、涙を流す。頬を伝い地面に落ちるその水滴を流したのは、実に数億年ぶりの出来事であった。

「やるではないかガキ共……! この俺に涙を流させるとは……」

溢れ出る涙が止まらない。

あの日、男の娘という種族に出会って以来、俺の心の中に常に違和感を感じていた。なぜ、俺はここまで怒りが止まらないのか。

どうして、ガキ共に容赦せず非情に振る舞うのか。

長年疑問に思いながらも目を背けてきたが、ここに来て、その謎が解けた。

「俺は、恋人が欲しかったのだ」

誕生して数億年という月日を生きてきた俺は、生まれてから一度もモテたことがなかった。

幼稚園、小学校、中学……女子はこの顔立ちのせいで俺を怖がり、敬遠してきた。

そして俺自身も奴らを嫌い己の精神が未熟だと決めつけ、山籠もりを開始し、明王となった。ガキ共を地獄に往生させながらも、心のどこかにはこのままでいいのかという感情はあった。だが、向き合うことを避けた。それは過去に解決した問題とばかり思っていたからだ。だが、男の娘に出会って、心の中に溜まっていた怒りが解き放たれ、素に戻ることができた。

美しい夜空に浮かぶ月を眺め、普段は絶対に口にしないであろう言葉を呟いた。

「名を知らぬ男の娘、お前に感謝する」

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