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忘れられない味
俺は目黒怨。
種族は悪魔で職業は殺し屋。
怨みのある奴俺が代わりに晴らして殺ろう。
金は一銭もいらんが、代わりに怨みをいただくぜ。
怨み。それは、俺が最も好きとする人間の感情。
体内から放出される紫色の禍々しいパワー。
怨みには大量の旨み成分が含まれており、非常に美味だ。
幸いなことに怨みの心を持つ人間というのはどこにでも存在しているため、それほど飢えることはない。だが、ここ最近、怨みが美味いと感じられなくなってしまった。原因は、怨みの心を持つ人間が周辺から激減し、飢えていた時のことだ。
あの日飢えを満たすために、生まれて初めて食べた握り飯。
「……あの味が忘れられん……」
人間を絶望させ怨みをいただくのが生きがいだったが、あの握り飯が俺の心に僅かな変化を生み出していた。
「悪魔の俺が、人間の作りだした食い物の味に感動するなんて皮肉だな……」
そんなことを思うようになった俺は、悪魔としてどうかしているのかもしれない。