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オルゴールと銀の弾丸  作者: 緑野くま
第二章  始まりの歯車
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第七話  深緑の森

「どうなってんだよこれ!!こんな場所あったなんて聴いた事ねーよ!!」

「喚いている暇があったらこいつらの相手しろ!!」

私達は突如できた謎の森の中で、混沌とした状況に置かれていた。森に入った途端、またモンスターの軍団に奇襲されたのである。やれやれ、弾切れしなければいいんだけどな…。

「ふう…やっと終わったね。咲子ちゃん、大丈夫?」

戦い終わった後、夏美さんが話しかけてきた。

「私は何ともないです。ただ…皆が言っていた通り、何故こんな場所が?」

私がそう言うと、夏美さんがイアフォンをいじりだした。誰かと連絡をとるつもりなのだろうか。すると数分後、夏美さんのイアフォンから声がした。その声の主が叔父だと聴いて分かった。

「そうです…。だいぶ訳分かんない状況で…えっ?あの時にも?…成程、お話ありがとうございます。それでは。」

叔父と夏美さんの通信が終わった。その直後、夏美さんは私にこう話してくれた。

「数10年前にも、場所は全く違うけど、こんな感じの森が突然できたってさ。この森は…『歯車の幻獣』の1人、『Elf』の力によって出来るみたい。」

『Elf』?翠の歯車…か。だが、森をつくる理由があるというのだろうか?夏美さんにその疑問をぶつけると、思いもよらない答えが返ってきた。

「話で聴いた事があるんだけど、『歯車の幻獣』の『Elf』は、自然王って呼ばれているみたい。」

「自然王…!?」

「うん。詳細までは分からないけど、そこまで呼ばれているぐらいだったら、小規模でも森を出現させることは可能かもね。…相当強いよ、たぶん。」

『Elf』がそう呼ばれているとは初めて知った。それと同時に、あの時叔父の言った言葉の意味が分かった。戦いは何としてでも阻止しなければならない。雑魚は片づけるにしても、だ。

月船ホテルからかなりの距離を走って来た故、全員の体力がそろそろ心配になってきた、というわけでこの森の道端で休憩することとなった。


見渡す限り緑色のこの森には、モンスターがかなりいるため、気付かれないように休んでいた。モンスターの数が16番街道手前よりも明らかに増えていたのだが、さっきの夏美さんの話を聴いて納得した。恐らく、親衛隊のような立場であるのだろう。

それに、出現するモンスターにも、少しずつ変化があった。3ヶ月前に傘をぶん回して戦った時は、悪魔のような容姿をしていたが、この森に入ってからは、どちらかといえば妖精と言ったほうがしっくりするようなものへと変わっていった。妖精とエルフ…響きこそ若干似ているが、サクにそう言った時「全然違う。」と跳ね除けられたのを思い出す。

「しっかしどうするんだ?景色が同じようなんじゃ、救出する奴らが見つかるとは到底思えんがな。」

そんな言葉が聴こえてきた。確かに言うことは合っている。このままでは2、3日位かけて捜索するしか手はないが、かといってのんびりと探していたら、死んでしまう可能性だってある。

やはり…叔父から何か命令が出るか、増援を寄こすかしないと相当まずいことになる。

周りの他の隊員も、同じことを考えていたのか、準備を始めていた。


私達はまた、走り続けていた。何の当てもないまま走り続けていた。「グループに分かれて行動しないのか。」と近くにいた隊員に訊くと、「そうして死んだ奴が何十人といた。」という返答があった。どうやら、雑魚でもナメてかかれば、骨にされてしまうらしい。

そうされない為にも、何とかして探し出さなければ…。そう思った時、異変が起きた。1人の隊員が突然倒れたのである。

「お、おいっ?!どうしたんだ!!」

場は騒然とし、全員が足を止めて倒れた隊員の周りを囲んだ。

「外傷は特にありませんね…。しかし…何故?」

医療専門の隊員がそう言っていた。確かこの倒れた隊員は相当の実力を持っていると聴いた事がある。外傷がないという事は、きっと無傷で勝利をおさめていたのだろう。

「こうなっちゃ先に進めないね。一応司令に報告しておくよ。その方がいいと思うし。」

夏美さんは再びイアフォンをいじり始めた。叔父はこの事態を知ったらどんな事を思うのだろうか…。

その時だった。夏美さんの手の動きが突然止まったのだ。

「うっ…息がっ…?!がはっ」

「!?夏美さん!!」

倒れた夏美さんの元へと行き、様子を見る。相当苦しんでいるのが見て取れた。

「咲子…ちゃん。ここから…はな…れて…。どこか…とお…く…に…。」

「なっ…何を言って…!?」

そう言いかけた時、夏美さんは気を失った。いや、夏美さんだけじゃない。周りにいた他の人達も、次々と倒れていく。

「ね…姉ちゃん。ここ…どんどん霧が濃くなってないか…?」

サクが話しかけてきた。だがその声は、もう力を無くしていたかのようだった。

確かに、霧が濃くなっている。走っている時はそんなに気にする程でも無かったのに。それにこの霧の色は、紫色を帯びていた。何かがおかしい…と思っていた時、私の脳裏に浮かぶものがあった。

「まさか…毒霧!?」

そう気付いた時には遅かった。私もだんだん呼吸が上手く出来なくなっていたのだ。

(まずい…このままじゃ全滅だ…!!夏美さんのあの言葉はこういう意味だったのか!!)

そう思った瞬間、私が最も恐れていた事が起きる。

「う…うあああっ!!」

「姉ちゃん…!?ま…さか…!!」

そのまさかだった。今になってあの頭痛が始まったのである。しかも酷い痛みだった。全く…タイミングが悪すぎる。

だが逆に言えば、何らかのヒントは得られるのかもしれない。私が生きていればの話だが。だが無理だろうな。こうしている今でも、意識が消えていく。

「く…そぉ…。」

もう目の前がかすんでしか見えなくなっていた。もう終わりだな、これで。



私含め、ここに所属した者達は、全滅した。

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