表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルゴールと銀の弾丸  作者: 緑野くま
第一章  目覚めの先で
5/37

第三話 転校生とオルゴールの文字

次の日の朝。部活があるため、私は朝早くから家を出た。今私は公園の入り口の近くにいる。

数分後、学校の制服を着た女子が来た。ユリだ。

「おはよー。サキ、いきなり部活出て大丈夫なの?」

「多分…大丈夫だろう。感覚はゆっくりと取り戻すさ。」

だが実際は、少し不安に駆られていた。あの事故があり、同級生が私が記憶喪失になっていると知ったら、どんな反応を示すのだろうか。

そんな事を思っていたとき、ユリが顔を近づけてきた。

「な、何だ?ユリ。どうかしたのか?」

「どうしたも何も…さっき、すごく険しい顔してたよ?何かあったの?」

「いや、何でもない。少し…な。」

「何よ、やっぱりあるじゃん。そういう事は独りで抱え込まないでさ、私に話してよ。」

私は思っていたことをユリに話すことにした。するとユリは何度も頷きながら、

「そうだよね、最初はいろいろと不安になるからねぇ。」

と言っていた。何故か私にはその動作が滑稽に見えたので、思わず吹き出した。

ユリはその時微笑んでいた。

数分後、私達は足を止める。どうやら学校に着いたようだ。


学校に着いた後、私達が向かった場所は音楽室だった。ユリの話では、私は吹奏楽部に所属しているという。

「もう先輩達は引退していて、今は2年生がまとめているんだよ。」

そうユリが説明してくれたとき、1人の女性が私達の元に来た。黒のスーツを堅苦しい程に着こなしており、フレームレスの眼鏡をかけていた。

「あら、美由里さん。咲子さんと一緒に来てくれたの?」

「はい。でも、サキは…」

「大丈夫よ。話は咲子さんのお母さんから聴いたわ。」

「あっ、そうなんですか?良かったぁ。」

「美由里さん、咲子さんと来てくれてありがとね。それじゃあ…」

女性は私の方へと向き直り、

「改めて、この部の顧問をしている赤羽(あかばね)夕奈(ゆうな)よ。よろしくね。」

「ああ、よろしくお願いします。」

自己紹介を終えた後、赤羽先生はピアノの方へと向かった。

「ちなみに赤羽先生は、私達のクラスの担任なんだよ。」

ユリがこっそりと教えてくれた事だった。しっかりと覚えておかなければ。

そう思っている間に、赤羽先生が号令をかけた。始まるらしい。私は楽器を手に取った。


部活終了後、私達は教室へと向かっていた。

「大丈夫だったか?その…私の演奏は。」

「心配ないよ。音のズレも無かったし、気にしない気にしない。」

しばらくして教室に着くと、やけに騒がしいのに気付いた。そこに、たまたま通りかかったサクに話を訊くと、

「机が1個多いらしいぜ。教卓のそばにあるやつとは全く違うみたいだけどな。」

「どういう事?サキの机はそのまんまだったよね?」

「ああ、訳が分からん。」

休日の間何かがあったのだろうが、恐らくこのパターンは…。

考えていると、赤羽先生が入ってきた。状況を察した後に、「席に着いてー。」と声をかけた。

だいぶ落ち着いた時、赤羽先生は口を開いた。

「今日いきなりだけど、転校生が来るわ。今、別の部屋にいるから、呼んで来るね。」

簡潔に述べてまた教室から出ていった。その直後、さっきのものとは比べ物にならない程の騒ぎと化した。

「本当に知らせていなかったようだな。」

「みたいだね。てゆうか、私達も知らなかったんだけど。ねえ、サク。」

「まあ…確かにそうだけどな。にしてもここまで騒ぐ必要あるか?」

「…勝手にやらせておけ。」

ちなみにこの騒ぎは、他の先生の注意があっても治まることは無かった。

数分後、赤羽先生が1人の男子を連れて、教室に入ってきた。銀髪で緑色の瞳、あたかもファンタジー小説の主人公にいそうな外見だった。そして、その男子は先生と何かを話してから、自己紹介をし始めた。

「えっと…黒崎(くろさき)翔太(しょうた)です。海外の学校から来ました。よろしくお願いします。」

一礼した後、翔太と名乗ったその男子は、ユリの隣の席に座った。2人して相当な戸惑いを見せていた。

そうして教室の中は、さっきまでの騒ぎが無かったかのように、静まり返った。


時は過ぎ、昼休みになった。私は授業の間、自分で自分のことを散々気にかけていた。何せ記憶を失っているのだ。周りのことも分からず、どうすることも出来ない。いや、これは…私の過剰すぎる考えなのか?私は普通通りにいればいいのか?

そう思っていたときに、突然声をかけられた。振り向くと、そこには翔太と名乗った転校生がいた。

「何の用だ?」

「咲子さんですよね?噂で聴いたのですが…記憶喪失なのだと。」

「確かにそうだが…それがどうした。」

「美由里さんという人に、詳細を訊いた時、オルゴールに英語が刻まれていたと言っていました。そのことなんですが…」

翔太は一呼吸置いてから話を続けた。

「初対面で言うのもなんですが、僕に何か手伝えることは無いでしょうか?」

「手伝えること?…そうだな。」

考えているとき、あの文字を思い出した。『Elf』と書かれたあの文字。他にも似たようなものがあった。だが…あの時私達はまともに読めなかった。もしかしたら、翔太ならば…。

「別に構わんが。」

「…!ありがとうございます。えっと、いつ…」

翔太が何かを言いかけた時、乱入してきた者がいた。サクだった。

「姉ちゃん、何してんの?いきなり転校生と話してよぉ。」

「…っ 別にいいだろう。それに、話しかけてきたのは…」

「ああ、転校生の方からか?お前勇気あるなー。」

「ゆ、勇気っ!?そ、それに、あなたは?」

「こいつの双子の弟の、咲夜だ。よろしくな、ショウ。」

翔太はかなり戸惑っていた。サク…自由すぎるな。やれやれ、後で一発お見舞いしてやらないと。そう思っていた時、翔太が再び話してきた。

「あの…僕は構いませんよ。慣れないといけないところもあるので…。咲子さんも僕のことはショウと呼んで下さい。」

「分かった、ショウ。今日の放課後…来れるか?」

「分かりました。よろしくお願いします。」


時は放課後、場所は私の家になる。

今までの成り行きゆえのものなのか、私とショウの他、ユリとサクもこの場にいることとなった。

私は早速、例のオルゴールを出した。ショウは蓋を開けた直後、懐から虫眼鏡を取り出し、調べ始めた。私達は凝視していた。この間は何の音も聴こえない、静寂に包みこまれた。

――数分後、ショウが何かをブツブツと呟いていたのが聴こえた。その後ショウは私達の方へと向き直る。

「1つは確かに『色』でした。もう1つは…多分、『幻獣』の名前ですね。」

「ゲンジュウ…?何それ。」

ユリが顔をしかめながらそう言った。その時サクが簡素に説明する。

「RPGとかに出てくる怪物(モンスター)とか、召喚獣とかだな。人間じゃない何か。」

「ああ、そういう奴なの?でも…何でこんなものに刻まれているんだろ。」

ユリの言う通りだ。これは悪戯(いたずら)なのか?いや、可能性としては低いだろうな。あの博物館で眠っていたのだから。

「あの…咲子さん。ペンと紙はありませんか?一応書き出そうと思ったので。」

「分かった。少し待っていろ。」

私はショウにそれらを渡した。何分かした後、ショウは私達に内容を見せてくれた。ざっとこんな感じである。


『Green  Elf』

『Purple  Ghost』

『Yellow  Unicorn』

『Pink  Succubus』

『Blue  Werewolf』

『Red  Vampire』

『White  Angel』

『Black  Devil』


見ている途中でサクが紙を取り上げた。そうして、サクは紙に書いてある、『幻獣』の名前を読み上げる。

「エルフ、ゴースト、ユニコーン、サキュバス、ワーウルフ、ヴァンパイア、エンジェル、そしてデビル…か。全部聴いたことあるぜ。」

「ワーウルフって?」

「狼男だよ。」

不可解だ。意味はあるのだろうか。明日また調べなければならないだろう。今日はもう遅い。

ユリ達もそのことに気付き、帰る支度を始めた。

「そうだ、せっかくだし、ショウ君の家の場所知りたいから、帰るとき皆で一緒に行かない?」

ユリが提案したことだった。ショウは「いいですよ。」と言い、私とサクもOKサインを出す。

母に事情を説明した後、家を出た。


空を見たとき、曇り空だった故、私は一応傘を持って行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ